本作は、『キャッツ』『オペラ座の怪人』などを生み出した作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーと、『エビータ』『ライオン・キング』などの作詞を手掛けたティム・ライスが、まだ学生だった頃に初めてタッグを組んで生み出した、両巨匠の原点ともいえる作品。
旧約聖書「創世記」の「ジョセフの物語」をベースに、波乱に満ちたジョセフの人生を全編楽曲で描いた作品で、その楽曲はロック、バラード、シャンソン、カントリー、ロカビリー…と、数奇な運命を辿るジョセフの人生に相応しく、実に多彩。
1982年のトニー賞で7部門にノミネートされ、世界中で長きにわたり愛され続ける名作ミュージカルが、2020年の上演中止を経て、2年越しに待望の日本版初めての上演となる。

主人公・ジョセフ役は、Hey!Say!JUMPの薮宏太。
共演に、物語の進行を歌で導くナレーター役に平野綾/シルビア・グラブのWキャスト、小西遼生、小浦一優(芋洗坂係長)、日野真一郎(LE VELVETS)、元木湧(少年忍者/ジャニーズJr.)、そして、ジョセフの父・ジェイコブ役に、名優・村井國夫。日本版初演を豪華に彩る実力派キャストが集結した。
演出を手がけるのは、『ミス・サイゴン』(14)演出補、『ゴースト』(18・21)演出などを務めてきた演出家ダレン・ヤップ。翻訳・訳詞は、数多の翻訳ミュージカルの訳詞、脚本で珠玉の言葉を紡ぎ出し、昨年には第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞にも輝いた高橋亜子。

公開ゲネプロ後に行われた取材会には、薮、平野、シルビア、小西、小浦、村井が出席。

「本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」と挨拶をした薮は、「この作品は2年前に直前で中止となってしまって、今回やっと2年越しに幕が上がるということで、スタッフ、そして出演者の夢が詰まっています。ジョセフは再生、そして再起の物語です。今はなかなか明るい光が見えない世の中ですけど、この作品を見て少しでも明日からまた一緒に頑張って行こうという気持ちになっていただけたら嬉しいです」とコメント。

今回、Wキャストとなるナレーター役。
ゲネプロのナレーター役を担当した平野は今年が初参加。「皆さんにたくさん引っ張っていただきながら、ナレーターとして逆に皆さんを引っ張れるように、作品のパワーがものすごいので、それに後押ししてもらいながら頑張りたいと思います」と意気込んだ。

もう一方のナレーター役を務めるシルビアは「ここに今立っていることが夢のようです。一昨年は最終稽古をやって、次は劇場で会おうね!って言って別れたきり会えなかった薮宏太さんや小西遼生さん、小浦さん、村井さんにまた再びちゃんと今回は衣装を着た上でこの舞台上にいることが本当に嬉しいです」と喜びを語った。

エジプトに辿り着いたジョセフが仕えるファラオ役の小西は、「2年前の話をしますと、稽古を全部終えて、この劇場に入る一日前にこの作品が中止になると告げられました。で、来れる人だけこっそりとセットがもう組まれていたので見に行ったんですよ。その時に見たセットを今日ようやく皆さんにお見せできるし、その上に立ってこの役を生きることが出来るので、この2年、この仕事を続けていて良かったなと感慨深い気持ちです」と感じ入った様子。

エジプトの富豪・ポティファー・パン屋・ファラオの家臣と様々な役柄を演じる小浦は、「こういう状況の中で開催できることは夢のようなんですけれども」と話し、「このジョセフという物語は、日本の方にはそんなに馴染みがあるものじゃないかもしれないんですけど、ものすごくわかりやすく、楽しく、皆で歌って聞かせる絵本の物語のような、そんなところがありますので、お客さんは皆さん一緒になって、声は出せなくても手拍子で一緒に楽しめるようなところもあるかと思います。ぜひその辺を楽しんでいただけたらと思います」と続ける。
そして自身の見どころとして、「意外とジョセフが窮地に立たされた時に出てくる役が結構多いので、ジョセフ可哀想だな、と思った時に私の名前を心で叫んでいただければと思います」と会場の笑いを誘いながら、「演出のダレンさんから、「大変な辛いシーンの中であなたが出てきたらポッと癒しの空間になるような、そんなシーンに仕上げてほしい」と言われておりますので、頑張ってポッとさせたいと思っております」とやる気を見せた。

そして、ジョセフを一番贔屓する父・ジェイコブ役の村井は「ジェイコブは120歳でございまして、135歳で亡くなっているわけですけれども、12人の子どもがいまして、奥さんが色々変わっているんですけど、下から二人目がジョセフ、一番下がベンジャミンなんですけど、年を取った子は可愛いといいますけど、可愛いという想いがこの物語全ての原因なんですね。他の兄弟の嫉妬を生み、ジョセフを殺してしまおうということになって、でも最後にはお互い助け合うというか矯正するというか、今、夢をなかなか持てない時代に、色んな夢を見て良いんだとジョセフが歌うんですけど、それがまた自分の胸に響いて、これは今やるべき作品だなと強く思います」と話した。

2年前の中止を経て、待望の上演となる今回。薮は、「2年間色んなお仕事をやらせていただいていたんですけど、常にジョセフを忘れることはなかったですし、頭の片隅にずっとありました」とジョセフに想いを寄せていたとのこと。
「いつ出来るのかなと思って、今回出来ると決まった時は本当に嬉しかったですし、久々に皆さんとお会いして、歌合せをした時に懐かしい色んな人の声が聞こえて、懐かしい色んな音楽が聞こえて、その瞬間に「ああ、ジョセフの世界に帰ってきたんだな」という気がして、ここからまたリスタートだという気持ちになりました」と、振り返る。

逆に2年越しで良かったことを聞かれると「自分で楽譜を見たり、ちょっと歌ったりとかしていたんですけど、歌稽古の時に歌唱指導の方や音楽監督の方が気づいてくださったんでしょうね。「(歌の練習を)やってた?」とおっしゃって。「少し自分で自主練してました」って答えたら「偉い!」と言われてすごく嬉しかったです」と笑みを見せる。
さらに、「元々オクターブ下で歌ってた楽曲とかも、歌稽古の中でちょっとオクターブ上で歌ってみようかとか、準備期間が割としっかりあったのでそういう試みが出来て、それはすごくポジティブな部分なのかなと思います」と語った。

2019年のオリジナルミュージカル『ハル』以来となるミュージカル出演となる薮だが、役柄がガラッと異なっているようで「『ハル』は割と内にこもる役だったので、なかなか高らかに歌う機会がなかったんです。でもこのジョセフという役は、すごく上を向いて前を向いて客席に向かって、「どうだ?これがジョセフだぞ?」というなりをして歌うことが多いので、すごくのびやかに歌うことが出来ています」と気持ちがまた違っているよう。

きらびやかな衣装にも触れられ、「キラキラしている衣装は、着てることを忘れるくらいしっくりきてます」と笑顔で答える薮。
「すごい裾が長いので、稽古中に一回自分で踏んでしまって尻餅をついてしまったんですよ。気をつけながら、でもちゃんとなびかせないと様にならないので結構研究しながらやってます」と、ジョセフならではの衣装に少し苦戦している様子。
しかし、「どうですか?似合ってますか?」と問いかけると、共演者から「似合ってる!」と声が上がり、嬉しそうにする薮の姿があった。

本作でナレーター役は物語の進行を歌で導く役割を果たしている。
平野は「こんなに自分の歌う分量が多い作品に挑戦させていただくのは初めてで……」と戸惑いながら、「ナレーターって役の大枠だけが決まっているだけで、演出家のダレンも「世界中、色んな場所でこの作品をやっているから、色んなナレーターがいるから自分だけのナレーター像を作り上げてください」と言ってくださって。私とシルビアさんは全然違うナレーター像になっていて、こういう表現があるんだ、とかここすごい素敵だな~っていうのを、シルビアさんが稽古をしていらっしゃる時に見させていただいて気づいたりとか、すごく勉強させていただいています。本当にこのWキャストは貴重だと思います!」と熱く語る。

シルビアも「Wキャストの意味というか、面白さはすごくこの作品の中で出てくると思います」と話し、「全部見てて素敵なんですよ。自分が持っていないものが見えると普通に喜んで拍手できるし、素晴らしいな、これは私には似合わないな、でも素敵だな、って思うこともすごいたくさんあるんですよね」と、Wキャストについて話す。
さらに、「二人とも『レ・ミゼラブル』とか全編歌っている作品にも出てたんですけど曲のスタイルが一緒なんですよ。でもこの作品は全曲スタイルが違うんですよ。それが大変なんです。音域もめちゃめちゃ広いし、多分相当色んなミュージカルをやってきた中で、相当チャレンジな役だなと思います。客観的に客席で聞いていて「綾ちゃん良く出てるすごいな~!」って思ったりするんです。だから普通にお客さんとしてすごく楽しみです」と続けたシルビアに、「明日出るんですよ?」と薮からツッコミが入り、「明日は私が客席からエールを送ります!」と平野の力強い言葉があった。

また、それぞれの好きなシーンは?という質問に対して「ファラオのシーンです!」と即答する小西。
ロックスターのような装いの小西は、「エルビスプレスリーを踏襲したような役なんですけど。でもこんな金ピカでギラギラで、新☆感☆線の舞台に出ているんじゃないかな?って錯覚するような衣装を着させていただいています」と話す。
そんな小西に、薮が「これが似合うのが遼生くんですよね」と言うと「そっくりそのままお返しします」と返される一幕が。

そして、「一番端の方も……」(シルビア)、「あれはずるいよね!」(薮)と指摘されたのは小浦の衣装。
「目が行きますもん。芝居中大変です」と話す薮に対して、「本当に衣装に助けていただいてありがたい限りです」と恐縮する小浦。
さらに小西の「怒ったらそこのてっぺんから煙が出る装置を入れてほしいよね」という願望に、小浦が「千秋楽までに加工してもらおうと思います」と冗談も飛び交った。

村井の衣装も眩しいという話になると、「僕のはものすごく重たいんです。こだわりの記事で世界観を出しているんだと思います。これはちょっと恥ずかしいですね」と照れながら語る。
そんな村井が演じるジェイコブは舞台の中ではジョセフを贔屓する父親だが、薮の印象を問われると「素直で変に作らないでスッとそこにいらっしゃるのがものすごく可愛いんですよね」と大絶賛。「だからそういう意味では愛情は強く湧きます。だから最後にジョセフとエジプトで会うシーンはすごく嬉しい感情が湧きます」と続けた。

記者から「他の共演者の方々より可愛い?」の問いかけに「可愛いです」と答えた村井。
薮は「言わせないでよ~!」と言いながら、「僕への誉め言葉、全部書いてください!」とアピールしていた。

座長らしい振る舞いを行っているかの質問には、「座長らしさとは……大盤振る舞いすることでしょうか?(笑)」と逆質問する薮。
「このご時世なので差し入れとかは梱包されているものとかに限られて、プライベートで座長らしさは出来ないですけど……」と顔を曇らせた薮に、シルビアが「『レモラ』の差し入れがたくさんありました!」と明かし、「皆さんにたくさん飲んでほしいということで」とHey!Say!JUMPがCMキャラクターを務める『レモラ』が差し入れされていたことが分かった。

そして、事務所の後輩であるSnow Man・ラウールがこの春、早稲田大学人間科学部・健康福祉科学科(通信教育課程)に入学した報道を受け、2020年に同学部を卒業した薮は「早稲田の後輩は初めてなので嬉しい」と話し、「楽屋とかで勉強するのってちょっと恥ずかしいと思うんですけど、気にせず、自分で黙々とパソコン開いて出来る学部だと思うので、頑張ってほしいです」とアドバイス。さらに「何かあったら僕に相談してください、って言うのもなんですけど(笑)、中丸(雄一)くんも居ますし、僕も居るので、何か煮詰まったり立ち止まったりしたら言ってくれたらと思います」と力強いコメントが。
しかし、「ただ、連絡先知らないんですよ、ラウールの。同じメンバーの佐久間(大介)とは結構会うので、佐久間経由でラウールの連絡先を聞きます」と微笑んだ。

最後に薮からファンへのメッセージとして、「やっと今日、幕を開けることが出来ます。このジョセフという物語は、人を許し、そしてもう一度立ち上がるというテーマになっています。色んな出来事があるご時世ですけど、人を許して、また皆で手を取り合って一歩ずつ歩んでいこうという気持ちに見ていただいた方がなれるように、出演者そしてスタッフ一同、必死に、誠心誠意頑張って行きたいと思います。千秋楽まで気を引き締めて、感染対策をしっかりして頑張って行きたいと思います。よろしくお願いします!」と、取材会を締めくくった。

東京公演は、2022年4月7日(木)から29日(金・祝)まで日生劇場にて上演され、その後、5月5日(木・祝)から7日(土)まで愛知・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール、5月12日(木)から16日(月)まで大阪・オリックス劇場で上演される。

<あらすじ>
旧約聖書「創世記」の「ジョセフの物語」をベースに、全編音楽で綴るミュージカル。
現代のある家。眠れない子供たちの前に突然不思議な女性=ナレーターが現れて、過去の物語を語り始めます。
それは聖書の物語。ナレーターは子供たちを物語の世界にいざない、夢を見ること、そしてそれをあきらめずに希望を持って生きることの大切さを自身の言葉で優しく子供たちに教えていきます。
カナンの地に住むジョセフは、12人兄弟の11番目で父ジェイコブが贔屓する一番のお気に入り。ある日、ジョセフだけに父からカラフルなコート(=テクニカラー・ドリームコート)を授けられたが、残る11人の兄弟から妬まれてしまい、策を講じられて奴隷として売り払われてしまった。奴隷となってエジプトで暮らすことになったジョセフだが、持ち前の真面目さで献身的に仕えるうち、主人に信頼されていくように。しかし、主人の妻から一方的に想いを寄せられたことがきっかけで、投獄されてしまう。牢獄でジョセフは、“夢を読み解く”能力を生かして登りつめていき、ついにはエジプト国王に仕える立場になっていたある日、かつて自分を売り飛ばした兄弟たちがジョセフの前に現れて…。
ナレーターと子供たちが物語の世界の中で時に応援し、その運命を見守る中、ジョセフの取った選択は?