『天號星』は、劇団☆新感線が2023年秋に東京・大阪にて上演した、劇団の看板俳優・古田新太に早乙女太一&友貴兄弟が二人がかりで挑み、新感線史上最速の立ち回りで劇場を沸かせた話題作。
今作で中島かずきが繰り出したのは、“あっ”と驚く<入れ替わり>の物語。江戸の町で裏稼業に生きる人々の人情劇と奇想天外なストーリー展開を、主宰・
いのうえひでのりが、これまでの“いのうえ歌舞伎”とは一味異なる、愉快痛快なガッツリチャンバラ時代劇に昇華させた。
舞台を所狭しと疾走し連日大盛況となった本作を、映像・音声ともにスクリーン用に編集・ミックスし、ライブの興奮はそのままに、洗練されたクオリティで臨場感溢れる《ゲキ×シネ》としてお届けする。

初日舞台挨拶には、引導屋の主人・藤壺屋半兵衛を演じた古田新太と、その半兵衛とひょんなことから中身が入れ替わってしまう、冷酷無比なはぐれ殺し屋・宵闇銀次を演じた早乙女太一、さらに、乃木坂46の久保史緒里、山本千尋が登壇した。

作品について、最初に台本を読んだ時の印象を古田は「入れ替わりものか。なるほど、『天號星』な……」と素直なリアクションを見せ、「逆だったら僕は受けてないね。入れ替わっても体力のないおじさんという役だから、ああ、もどかしいこの体、って。最初のお話だと演出家や作家は『弱い役だから楽だよ』って嘘ばっかりつきやがって。大変でした」と早速のぼやきが。

早乙女は「設定としては定番と言いますか、色んな作品がある入れ替わりものの中で、男とおじさんが入れ替わるってそんなにない。男と女とかすごい分かりやすいものだったらあるけど……」と話すと、「おじさんと初老だからね」とツッコむ古田。
「僕ももう30超えてますからおじさんの域には入ってて、それはどうなのかなっていうのは最初の印象でしたけど、意外とお客さんから楽しかったっていうお声をいただいたので良かったです」と喜びを話す。古田演じる半兵衛との入れ替わりで工夫した部分を「いっぱい小細工をしないとなと思って、古田さんの歩き方とか姿勢とか、僕が思う古田さんのイメージというのがいっぱいあったんで、そこら辺を意識しながら稽古していました」と振り返る。
入れ替わりということで殺陣にも段階をつけていたとのことで「そもそも強い銀次として出てきて、そこから半兵衛と入れ替わって、全く剣を振ったことがない人が徐々に徐々に強くなっていくという、それは非常にやることが多かったですけど、普段できないことだからものすごく楽しくやらせてもらっていました」と語り、「やっぱり強い役って楽だなっていう実感しましたね。弱い人だと、強い人の1歩のところが3歩とか5歩使ったりするから、その分動きが増えて大変でしたけど、楽しかったです」と、本作ならではの苦労もありながら楽しめていた様子。

劇団☆新感線初参加となった久保は「元々新感線さんを客席で見に行ったりさせていただいていましたし、先輩が出演されたりもしてたので、目標ではあったので、まさか自分が出演させていただく日が来るとは思わずびっくりしました。しかも役どころ的には歌を歌うっていうのを台本開いて知って、これはまずいな、頑張らなくてはいけないなと」と気合いが入っていたとのこと。
早乙女から「(乃木坂46の)現役の方で新感線というのは初めてですよね。大阪の時とか、WWホールで公演終わった後に大阪城行ってライブしてたりしてたから」と舞台とアイドル活動との両立にも触れられ、「歌番組があったり、休演日も皆でユニバに行こうって話していたんですけどそれも叶わなかったですけど、そういうふうにどこか行こうとか、今日ご飯行こうみたいな会話がすごい飛び交う場所だったので、私も楽しみながら皆さんと仲良くさせていただくことができました」と笑顔を見せる久保。すると「坂はそういうのはないの?」という古田の言葉に「ありますよ!余計なこと言わないでくださいよ!」と慌てながら「一人で舞台に出る機会もあまりないので、こうやって皆さんと仲良く、(古田さんのことを)“おとっつあん”と今は呼んでいるので。すごい可愛がっていただけたなと思います」と続け、古田との関係性について、「不安しかなかったですけど(笑)。こういうことを言うんですよ!今日だって皆さん(記者が)いらっしゃっているのに書かれちゃうじゃないですか。“坂が~”とか。おっかないですけど、でもこうやって楽しくいつも会話していました」と、“古田節”にドギマギしながらも仲の良さを伺わせた。

山本も本作が劇団☆新感線初参加となったが「すごく楽しかったですね。舞台独特の距離感の立ち回りにすごく苦戦して、映像だと近くの距離感でするんですけど、いないところをずっと切っていくのはなかなか慣れなかったんですけど、太一先生も友貴先生も古田さんも教えてくださったりしたので、良い課題を与えてもらいながら楽しめました」とコメント。引導屋という役柄については「なかなかピンとこなかったんですけど、必殺仕事人とかで勉強して。それを三谷幸喜さんに相談したら、初回のものをくださって。そこからスタートしました」と役作りの参考にしたものを明かす。
公演が進むにつれて、何か変化があったのかという問いかけに「最初はこれで合ってるのかなと思いながら進んでいったんですけど、大阪ぐらいからすごく気持ちが楽になったというか、楽しくなってきて。あと、太一くんと友貴くんのとおとっつあんのラス太刀を見るのがすごく楽しみ……言っちゃった(笑)」と物語に触れてしまい固まる場面があった。

古田から見て初参加の二人はどうだったか?という質問には「可愛かったですよ」と即答。「本当に二人の可愛い娘が……。でも、最後に“おとっつあん”と言われるのはコイツ」と隣の早乙女を恨みがましく指差す古田に会場からは笑いが。久保が「本気で拗ねてました、ずっと『なんでこんな頑張ってるのに』って。劇団員さんもこんな頑張ってる古田さん見たことないっていうぐらい頑張っていたらしくて」と古田の可愛らしい一面を語った。

山本はそんな“おとっつあん”との思い出について「7ヶ月一緒にいたので思い出だらけですけど、やっぱりディズニーランドに一緒に行ったのは思い出深いですね」と、古田、久保、山本の三人で行ったディズニーランドを挙げ、「バスタ新宿から八時半発ぐらいのバスに三人で乗りまして。意外と海外の方しかいなくて。だから多分おとっつあんみたいな派手な日本人がいるなぐらいにしか思っていないから行きやすかったです」と大きな混乱も起こらず、バスで向かったとのこと。久保も「おとっつあんもご機嫌で。私たちは現地集合でいいんじゃないかって形だったんですけど、行き方が分からないっていうのと、バスだったらお酒飲めるじゃんって言いまして『ディズニー行くなら俺はバスでしか行かねぇ』ってバスで行きました」とバスを選んだ理由を語ると「目の前まで連れて行ってくれるからね、バスは。俺は歩くことと働くことが大嫌いだから」とどや顔を見せる古田。

また、ディズニーランドに着いてからは「絶対カチューシャを被らせようと思ったんですけど、それはやっぱり古田さんのファッションセンスのプライドが許さなかったみたいで、それは買わせてもらえなかったです」と悔しそうにする山本だが、古田自身は「美女と野獣めっちゃ楽しかった」と大満足だった様子。久保から「乗る前は楽しいの?とか言ってたんですけど、出た時は前のめりで楽しかった!って出てきました。なんでこんなに並ぶの美女と野獣のために、みたいな感じだったんですけど。誰よりキラキラしてました」と報告があった。

そして、本作の見どころともなっている殺陣について、早乙女は「一人一人、それこそちーちゃん(山本)にはちーちゃんの色の殺陣をつけてくださいますし、今回は新感線でも珍しく一対一が多いんですよね。普段の新感線は乱戦って大多数の時が多いんですけど、今回は一人一人の殺陣が多いから、全然違う色のぶつかり合いみたいなのは楽しんでいただけるんじゃないかと思います」と話す。

古田VS早乙女兄弟でガチンコ芝居となったわけだが、古田は「楽しいですよ。太一とは最後にちょっと戦いがあるんですけど、友貴との間にはト書に“一手、二手、刃を合わせる”って。友貴の不満たるやすごかったですよ」と絡みが少なかった弟・早乙女友貴の様子を話し、早乙女も「友貴は古田さんと戦いたい!兄弟で挑みたい!っていうものすごい意気込みを持って望んで、めちゃくちゃ楽しみにしていましたけど、ト書に二、三手って制限されて」と裏事情を明かした。

早乙女兄弟が戦うシーンについては「やっぱり(友貴は)合わせるのはうまいなと思いました。普段からですけど、僕がわりかしガンガン攻めていく方で、それを見て捌く方が友貴なので、人に合わせることに関してものすごく長けているから、今回、僕は強い役じゃないないて、結構荒かったり間合いがいつもと違うんですけど、そこら辺は友貴だからできたなと思います」と語った。

そんな殺陣チームの稽古のことを久保は「通し稽古で初めて殺陣を見る形だったんですけど、今まで新感線さんの舞台ですごいなと思っていたのが目の前で繰り広げられるのが、本当にすごいの一言で。ちーさん(山本)の中国武術と私が歌わせていただくシーンもあったりしたんですけど、私は稽古でしか見られなかったので、稽古ではものすごくガン見していました。かっこよかったです」と称賛。
山本は「本番だと……」とまたもや物語に触れそうになり、話しても大丈夫かマイクを通さずに隣の早乙女に確認。「大丈夫だよ!」と背中を押され「しーちゃんとコラボするところがあるんですけど、コラボしているものなので私はしーちゃんの姿を見ることができなくて、なのでゲキ×シネでしか見れないから私もワクワクしている部分があります」と、笑顔を見せる。

これから映画を見る方に向けて、誰も気づいていないけど見てほしいポイントを聞かれると、古田は「新感線でよくあるんですけど、全員がセリフに合わせて動きを揃えるのがあるんですけど、その中に一人、逆木圭一郎っていう人が出てきまして、その人が全く合わないんですね。注目してください」とニヤリ。
「私もそのシーンが大好きなんですけど」と話す久保は「同じシーンでちーさんと二人の掛け合いというか、二人で舞台の端っこにちょっと行くシーンがあるんですけど、そこは毎回さっき話したコラボのところが上手くいったかどうかというのをそこでいつも報告を受けてました」と山本とのやり取りを明かし、山本も「お互いどうだったかっていう報告会をしてたので。舞台上にいる時に今日は上手くいった!とか」と続け、「そういう様子とか映っているのかな?と思います」と楽しみにしている様子。

早乙女は「僕はこのゲキ×シネやっと久保さんの顔が見れたというか、通し稽古やゲネとか見れるところは客席で見てたんですけど、もう顔がちっちゃすぎて!客席から見てると顔が見えないくらいで、やっとゲキ×シネで、こんな表情してたんだとか。それこそ歌のシーンとか隣に右近(健一)さんがいるから顔の大きさが……」と久保の小顔に触れながら、劇団員との顔のサイズを比較し、笑いに包まれる場内。

最後に、これからゲキ×シネを見るお客様へ向けてメッセージ。

山本は「私は実はこのゲキ×シネという形でまだ見れていなくて、7ヶ月皆さんと一緒にいたものですから、まだ心の準備ができなくて。皆さんの方が先に見られると思うんですけど、ぜひネットなどで感想を書いていただいて、それをパワーに私も見たいと思っています。3週間よろしくお願いします」と呼びかけ。

久保は「自分にとって思い入れのある作品になったんですけれども、劇場で見てくださった方もいらっしゃると思うんですけど、ゲキ×シネで見る点合成もまた違った良さだったりかっこよさというのをたくさん見つけていただけると思うので、3週間あるのでぜひぜひ何度も見にきていただけたら嬉しいなと思います」とコメント。

早乙女は「今日は公開初日に皆さんお越しいただき本当にありがとうございます。これから3週間上映されますので、多分舞台を見られた方も多いと思いますけれども、違った楽しみ方のできるゲキ×シネを楽しんでいただければと思います」と述べた。

古田は「ゲキ×シネはね、舞台を生で見るのと違って、4、5回見れるんで。ぜひ何度も足を運んでください」と、会見を締めくくった。

ゲキ×シネ『天號星』は、新宿バルト9、T・ジョイ梅⽥他、全国にて本日より3週間限定上映。