
本作は、英国の著名な劇作家ピーター・シェーファーによって生み出された戯曲で、売れない若手彫刻家が留守中の隣人宅から数々の調度品を無断で借用し、婚約者の父親と億万長者の美術蒐集家を招き、さも自らの所有物かのように仕立てることで愛と富を手に入れようと画策。しかし、予期せぬ停電がアパート全体を襲い、招かれざる客も次々と訪れ、暗闇の中でトラブルへと発展していく物語。
ピーター・シェーファーは劇中、室内の電灯がついている設定のときは舞台上を暗く、停電の設定のときは舞台上を明るくするという、明暗が逆転したユニークな手法で表現することで、停電中のパニックを視覚的に際立たせるとともに、登場人物たちの隠された本音や嘘を表出させることに見事に成功した。
この戯曲に上演台本・演出として挑むのはヨーロッパ企画の大歳倫弘。
主演を務めるのは、舞台俳優としてジャンルを問わず八面六臂の活躍を見せる浜中文一。愛する女性と富を一挙に手に入れるべく画策する若手彫刻家ブリンズリーを演じる。ブリンズリーの婚約者キャロルには市川美織。ブリンズリーの元彼女クレアには三倉佳奈。ブリンズリーの隣人で東洋古美術商人のハロルドには山口森広。アパートの上階に住む女性ミス・ファーニヴァルには朝海ひかる。キャロルの父親で厳格な性格のメルケット大佐には渡辺いっけいと、実力派キャストが揃った。
取材会には、浜中文一、市川美織、三倉佳奈、朝海ひかる、渡辺いっけいが出席。
公演初日を翌日に控え、浜中は「かなり練習しましたので。もうやるしかないですよね!ひたすら頑張りますよ」と力強く意気込む。自身の役どころについて「ブリンズリーはずっと動き回っているので。あんなに動き回ることって自分の家であまりないのでね、非常にドキドキしています。あんまり言うとネタバレもあるのでどこまで話せばいいか……結構暗闇の中で皆さんとブリンズリーがお芝居でぶつかり合うところはやっていて楽しいなと思っています」と笑顔を見せる。
「『ブラック・コメディ』という名の通り、暗闇の中や悪い冗談の中、話が進んでいくんですけど、“コメディ”と名がつくタイトルをさんまさん(の笑顔)が描かれた客席の前でやるということで、昨日から微妙に圧をかけられているような感じで稽古しておりましたけど(笑)、この劇場にふさわしいような笑いをお届けできるよう皆で頑張って参りたいと思います」と話した朝海は、「ファーニヴァルはブリンズリーのお家の真上に住んでいて、同じ建物内で停電になるので、助けを求めたところ優しいブリンズリーさんが助けてくれて。浜中さんのキャラクターや雰囲気にぴったりで、ファーニヴァルとしても本人としても素敵な男性だなと思って演じていました」と役どころとあわせて座長の印象を述べる。
ブリンズリーの婚約者・キャロルを演じる市川は「私も30歳になり、もう良い歳かなと思っていたところ、大ベテランの皆さんと一緒に共演させていただけるということで、稽古場初日は本当に緊張しておりました。でも、皆さんあまりにもおかしな人たちで、稽古に入って色々意見を出し合いながら進めていって、皆さんの引き出しの出し合いを見ていて私も頑張らなきゃなと学びの毎日でした。たくさんの方の素敵な思い出になれるような舞台をお届けできたらなと思っております」と意気込み、「世間知らずでありながらネガティブなブリンズリーを元気付けるようなポジティブな性格で、停電しても明るさだけは私が保つような、そんな華やかな役だと思います。私も普段から明るくポジティブな人なので、そういうところはキャロルにも似ていて、やっていて楽しいなって感じです。」と役との共通点について明かした。
キャロルの父親役である渡辺は「台風に負けないぐらいハラハラするお芝居です。本当に面白いと評判の戯曲って大変なんだなと思いました。皆でああでもないこうでもないと言いながら作りました。明日、お披露目して、お客さんの反応を伺って、千秋楽までちょこちょこいじると思います。お楽しみに」と呼びかけ、役の見どころを「愛する娘の婚約者に会いにきて、ちょっと変な奴なので怒りが湧いてくるのを我慢している役なんですよ。その我慢の感じが演技として非常に面白くて難しいところで、そこを集中してやりたいし、見ていただきたいところです」と語った。
ブリンズリーの元恋人・クレアを演じる三倉は「今回、明暗逆転という今まで見たことないような新しい演出の中でお届けします。自信を持ってお届けできる作品になっておりますので、あとはお客さんが入ってどんなリアクションをいただけるのかとても楽しみにしています」と期待を寄せ、「長年ブリンズリーと連れ添ってきた恋人感を、お互いわかり合っていると言う雰囲気を芝居の中で出せたらと思います」と楽しみにしているシーンについて話した。
稽古場で楽しかった思い出を聞かれた浜中は「どうですか?楽しかったですか?」と周りのキャストに質問する一幕が。「僕はずっと考えていたのでぼーっとしてる時間が多かったんですけど」と話すも、キャストからは「楽しかった」と声が上がり、市川に「我々は浜中さんにめちゃめちゃ面白く笑わせていただきました」と言われるも、「そんなこともすることもなくひたすらぼーっとしてました……集中してました」と謙遜する場面があった。
物語にちなみ、これまでついたしょうもない嘘について質問が上がると浜中は「結構ついてますけどね、僕」と話し、渡辺から「飲みに誘われて断るのも多分しょうもない嘘がほとんど」と言及されるも「しょうもない嘘じゃない、あれはガチです。ガチで断ってますから」と断言する浜中。
また、しょうもない嘘については「例えば、ここは水道橋が近いじゃないですか。水道橋って実は鯉が泳いでいるんです……っていう嘘とかね」と淡々と話す浜中だった。
最後に「“明暗逆転”という大テーマがあるこの『ブラック・コメディ』。皆で一丸となって細かいところまで作業をしながら考えていった作品なので、皆さんぜひ安心してゆっくりとご覧になってください」と浜中が代表してメッセージを送り、会見を締め括った。
舞台『ブラック・コメディ』は、2024年8月17日(土)から9月1日(日)まで、東京・IMM THEATERにて上演される。