本作は、世界でもっとも上演されている戯曲と言われる『シラノ・ド・ベルジュラック』の誕生秘話を、映画監督としても活躍するフランスの若手劇作家・演出家アレクシス・ミシャリクがドタバタ幕内コメディとして描き、2016年にパリで上演。日本では2023年に新国立劇場にて、マキノノゾミ演出、加藤シゲアキ主演で初演。

初演に続き演出を務めるのは、数々の賞を受賞し劇作家・演出家としての功績を高く認められるマキノノゾミ
“書けない”劇作家エドモン・ロスタン役で主演を務めるのは、NEWSとしての活動に留まらず、作家としても数々の人気作を生み出し、多岐に渡って活躍する加藤シゲアキ。新たなキャストとして、村田雄浩瀧七海阿岐之将一堀部圭亮の4名を迎え、細田善彦福田転球三上市朗土屋佑壱枝元萌佐藤みゆき安蘭けいが初演から続投。
今なお世界中で愛される名作誕生にまつわる紆余曲折と、苦悩、そして、なによりも熱い熱い劇場愛を、爆笑の渦に巻き込みながら届ける。

公演初日に先駆けプレスコール及び開幕前会見が行われ、会見には加藤シゲアキ、村田雄浩、瀧七海、安蘭けい、演出のマキノノゾミが登壇。

公演への意気込みについて加藤は「2年前にも1度やっておりまして、その時も内容さながらのドタバタのカンパニーだったので、あのドタバタをまたやるのかという楽しさと不安が同時に押し寄せています。昨日、ゲネプロだったんですけど、常にドタバタで、このドタバタの勢いが逆に面白くお客さんに伝わるんじゃないかと、楽しみになってきています」と笑顔を見せる。
再演すると聞いた時を振り返り、「この再演を聞いたのが初演をやっていた日の東京千秋楽に、そんなこと(再演)を考えていると言われたんです。その時の率直な感想は、嘘だろ?って思いました。そんなバカな。もう皆出し尽くした日にまたやる話をするのかと。なんの勝算があって、僕たちのモチベーションはどこにと、思ったんですけど。仲良かったんですよ、チーム自体が。だから、また集まって何かやれるのは楽しいかなというのは感じて、その初演が終わってからも定期的に会うメンバーもいて、安蘭さんともご飯とか行ったりした時も、やる前提で話をしていたので、やるのが当たり前みたいな気持ちに途中で自然とスライドしてはいたんですけど、まだ2割ぐらいは後悔しています」と冗談まじりに答え、「大変じゃないですか!?昨日のゲネプロでこんな大変だったなと思い出しました。人間ってやっぱ楽しかった記憶が残るんだなと思いましたね。でもきっとまた楽しい日々が待っていると思いますし、もしかしたら東京千秋楽はプロデューサーと会わないようにどこか逃げて帰ろうかなと」と笑いを誘った。

今回が初参加となる村田は「最初の顔合わせの時に、演出家のマキノさんはじめ加藤くんや皆に『地獄へようこそ』と言われて。確かにすごい台本だなと思っていて、これ映画の台本なんじゃないかなと思うぐらい、テンポが速いしシーンが短くてポンポン進んでいく。これをどうやってやるのかと思っていたら、(初演の)映像を見せていただいて、とにかくスピーディーで、これはちゃんとできたら本当に面白いんだろうなという感じはしていました。でも、地獄です。これが上手くハマったら面白いと思うので、ぜひぜひ色んな人に見ていただきたいと思います」とコメント。

同じく今回が初参加、さらに初舞台となる瀧からは「稽古前はお芝居とか転換もちゃんと動けるか不安でいっぱいだったんですけど、稽古期間にジャンヌと向き合ってきた時間があるので、それが自信に繋がっています。本番は共演者の皆さんと思いっきり楽しみたいです!」と頼もしい言葉が。

初演から続投となる安蘭は「2年ぶりの再演で新しいメンバーも加わって、前回よりもパワーアップして、前回より必ず笑いが多いと思います。前回はコロナの最中で、劇場も違って、なんだかちょっとお客様と共演者の間に何か壁があったような、遠い感じがしたんですけど、今回はPARCO劇場ということで、お客様とも一体化して、余計に『エドモン』という作品の質が上がって、分厚い良い作品になっている気がするので、ぜひお客様も参加型で、笑いで拍手で参加していただきたいなと思います!」と呼びかける。

演出のマキノは「出演者の地獄はお客さまの天国。エドモンが酷い目に遭えば遭うほど面白いという仕掛けの芝居なので。あとは手作り感というかアナログの魅力だと思うんですよね。映画のシナリオのような台本なんですけど、映画と違うのは2時間ライブで、本来はそんな転換無理だろというのをやっているので、生で人間の力で2時間魅せるという、そういう魅力に詰まった珍しいタイプのコメディですので、体力勝負ではありますが、ぜひ見にきていただきたいなと思います」と語った。また、本作の魅力を「僕にとっての魅力は1番は僕は劇作家で同業者でもあるので、劇作家の苦悩と苦労をよくここまでコメディに仕立てたなと、エドモンには同情を禁じ得ないんですけど。僕にとってはそれが一番楽しいです」とニヤリ。キャスト陣については「出演者の皆さんは2回目の人も多いですけど、新しい方もいて、必然的にチームワークが良くなって仲良くなるんですけど、皆大変だから、一つの船に乗って誰がサボっているやつがいるとすぐ沈んじゃうというか。12人がフル稼働なんですよ。良い座組みだと思いますし、その楽しさが伝わったら良いなと。必ずや伝わるだろうと思っています」と力説。

総勢12人のキャストが50役を演じ分ける本作。稽古場で印象に残ったエピソードを聞かれると、加藤は「基本的には7割ぐらい同じチームなので、その人たちは久しぶりというか、同窓会のような空気から始まり、そこに新しい転校生を温かく“地獄へようこそ”という感じの空気がありました。瀧七海さんは初めての舞台なので、そういった部分を最初はサポートするつもりでいたんですけど、彼女が成長していく姿に逆に皆引っ張られていくみたいなことがあったので、良いカンパニーですね」と答えながら、「すごい疲れるのでずっと皆マッサージしているんですよ。ストレッチが入念になるんです。大体本番始まるまではどこのストレッチ器具が良いとか、それを貸してくれとかずっとそんな話をしたり、あとはずっと誰かが食べてます。食べて体を休ませないと乗り切れないみたいです」と、ハードな作品の裏側を明かす。

続けて村田は「私も初めてですけど七海ちゃんも初めてで、彼女の成長のすごさというか、初舞台でさっきの挨拶もしっかりしているじゃないですか、若いのに。最近の若い人はえらいなと。私はグダグダの挨拶しかできないのに、ちゃんと挨拶ができて芝居もしっかりどんどん成長していく。私なんか退化していく一方ですから。皆に介護していただいている感じで。でもこれが通ったら面白いだろうなと思いながら稽古をしていたんですけど、なかなか入ってこなくて。愚痴になっちゃうんですけど」と自虐を混ぜながら瀧を称賛。

そんな瀧は「稽古期間中はドキドキで、皆さんとまず仲良くなれるのかみたいなところで不安ではあったんですけど、ウォーミングアップをされながら皆さんが手作りご飯のお話をされたり、マッサージ器具やツボだったりとか、そういう話をよくされていて、その賑やかな様子を眺めるのが密かな楽しみになっていました」と笑顔で答え、その姿に加藤が「若いからまだそんなに疲れない(笑)」と笑っていた。

また、安蘭は「2年ぶりにやって、残っているメンバーはやっぱり覚えているかな?みたいな感じで取り組んだんですけど、意外と覚えていて。細胞に入っていたのか動いてみると、そうだったそうだった、と。それも不思議だなと思って、加藤くんもセリフとかをめちゃめちゃ覚えていてすごいなと」と2年前の経験が体に染み付いてるようで、加藤も「それだけ2年前が体に入るぐらいの。なんでまたやるんだって思ったんですけど、稽古をしている段階で、ああ、だからやるんだって気づく場面も多かったんですね。コロナが明けて、PARCO劇場でこの座組みだったらもっと良くなるというパルコさんの目論見があったんだなと。おみそれしました」と共感していた。

2年ぶりに演じる役柄に対して、解釈や演じ方への変化を聞かれ、加藤は「2年前は転換稽古が多かったんですけど、本読みでもたくさん話し合ったりとか、実際翻訳してくださった方にフランスについての知識の講習の時間もあって、深められていたつもりでいたんですけど、やっぱり2年経ってみると、こういうセリフもあったんだ、こういう意味だったんだという発見はまだまだありました。演劇の深みというのは本当に底がないというか、そういうこと自体も発見が多かったですし、キャストが変わっている方もいるので、人が変わると自分も変わるという再発見や変化が楽しかったです」と、再演したことで新たな発見があったことを明かす。

安蘭も「再演するにあたって前回の公演の動画を見たら、私の場合はずっとギャーって叫びすぎていたから、うるさい!と思って、うるさいのを今回は少なめにしようと思って」と意識していたよう。加藤から「でも結果的に(少なめに)なっていないですよね?僕も思いました。自分で聞いてうるさいなと思って、でも動画で見たらうるさいんですけど、劇場で見たらそれがちょうど良いんですよね。初演をやっていて色々変えたくなる部分もあるじゃないですか。でもいざやってみると、やっぱあれが正解なんだなって」と、初演の経験が活きている部分もあるようで、続く安蘭も「気性が荒いって書いてあるから良いんだろうなと思いながら。でもまだもがいてもがいて。もがいてやりたいなと思っています」と意気込んだ。

小説家としても活動している加藤だが、書けない時の乗り越え方について聞かれて「僕は書けないことはないんでね……」とドヤ顔で答えるも「そう言いたいんですけど、僕は自分のペースで欠けているからなんですけど(笑)。ただ1個、今締め切りが近いものがあって、稽古をやりながら終わって書いたりとか」と、本作の稽古と同時進行で執筆活動を行なっていることが分かり周りがどよめく一幕も。「書けないというよりも本当に時間がないところがあります。稽古場でマキノさんも多分次の作品の準備をされているのを見ていると、すごく気持ちがわかります。2人ともエドモン状態になっているので。書けないときどう乗り越えるか……でもやるしかないですよね」と述べると、マキノも「今までなんとかなってはきてるんだよな。毎回エドモン状態です」とエドモンと重なる部分があるそうで、続けて加藤も「他人事じゃないです。ギリギリは何回かあるけど、落ちないんですよね。やるしかないというか、乗り越えさせられているのが正しいのかもしれないです」と語った。

また、劇作家の役ということで、実際に劇作家をやってみたいかを問われると「1度書いているんですよ。3、4年前ぐらいに。それはすごい楽しかったんですけど、それも割と早く書きあがって、コロナがあったので1年延期になったんですよ。僕の場合はラッキーなのかなんなのか、急かされないように生きてこれているのでその時は楽しかったんです。小説とは違う楽しさが託さなって、自分のセリフをキャストの方が言ってくれる面白さとかもあるんですけど……」と語るも、「『エドモン』をやってると、すごいわがままなんですよ、安蘭さんの役が。セリフ増やせとか減らせとか、あんなこと言われたら……」と想像。するとマキノが「結構ある。詳しくは言えないけど」とボソッとこぼす場面がありながら、加藤は「小説は自由なので、自分の中で完結するし。またいつか書きたいなとは思っています」と意欲を見せる。

また、同時期にNEWSのメンバー・増田貴久がミュージカル『ホリデイ・イン』が上演されていることに触れ、「差し入れしたいなとは個人的には思っているんですけど、なかなか会うタイミングや話すタイミングが無いので、心の中でお互いエールを送り合っていると思います」と話す加藤。「こんなに同じタイミングになったことがないので、行きたい気持ちはあるんですけど。すぐそこなんですけどね。下手すると寝てしまう可能性もあるじゃないですか。万全な体調で行けるかどうか、スケジュールを見直します」と微笑んだ。

最後に加藤から「劇作家が無茶振りされてドタバタするコメディではありますけど、きっと劇作家のみならず多くの方が、上司やら先輩やら会社やら、きっと無茶振りの日々だと思いますので、この舞台に来ればそうした憂さ晴らしも少しできるし、励みになるんじゃないかなと。こんなに苦労している人たちがいるんだって、キャスト12人を見ながら少し優越感を感じてもらえればと思いますし、初演を見てくださった方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、間違いなくそれ以上のパワーは出ていると思います。チケット代以上の価値は間違いなくあると僕が断言しますので、見にきていただけると嬉しいです」とメッセージが送られ、会見を締め括った。

パルコ・プロデュース 2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」は、2025年4月7日(月)から30日(水) まで東京・PARCO劇場、その後、大阪、福岡、愛知にて上演される。