1960年9月20日に開業した映画館「丸の内 TOEI」が、東映株式会社本社の入る東映会館の再開発に伴い、2025年7月27日(日)に閉館となる。約 65年という長い歴史のグランドフィナーレを彩る「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトとして、5月9日(金)から7月27日(日)まで傑作特集上映が行われている。

5月14日(水)には『探偵はBARにいる』シリーズ一挙上映と、『探偵はBARにいる3』(2017)上映後舞台挨拶が開催され、主人公の探偵を演じた大泉洋と相棒の高田を演じた松田龍平の登壇。二人が揃って丸の内TOEIに登壇するのは2017年12月15日(金)の「探偵BAR」シリーズ累計200万人動員を記念して行われた大ヒット舞台挨拶以来、実に約8年ぶり。
「今日は『かくかくしかじか』の公開イベントに来ていただいて……」と初っ端から小ボケを入れてくる大泉。「正直ね、今『探偵』の舞台挨拶している場合じゃないんです!数日後に公開なりますから!」とさらにユーモアを交えながら、「でも久しぶりにこの曲に乗せて松田龍平と出てくるなんて考えられなかった!何一つ撮影してないのに!過去作を上映しただけで!」と喜びを見せる。

「しかもね、ギリギリまで松田龍平さんが来るっていうのは私も知らなかった。どれぐらいから決まってました?」と松田に伺うと「4日前ぐらい……」と返ってきて、「私はだいぶ前から聞いてました!てっきり一人で出るんだろうと」と一人での登壇も覚悟していた大泉。「松田龍平って人はもっと薄情な人間なんじゃないかと思っていた。丸の内TOEIの最後に舞台挨拶してくれませんか?って言われても、『うん……いいかな』って断るんじゃないかって!そこにやってくるって実は情に熱い男なんだなって」と熱弁。

対する松田は「8年ぶりですからね。会いたいなと思って」と話し、「高田を演じました、『探偵はBARにいる4』の舞台挨拶に……」と大泉に続く小ボケに会場も爆笑。「これが8年間の成長の証。8年間温めてたかもしれない!」と大泉も嬉しそうにしていた。

『探偵はBARにいる3』の撮影を振り返り、大泉は「忘れられないです。パンツ一丁で縛り付けられて、あれは中でも最低でしたね」と拷問シーンについて触れ、「本当に寒いから、僕としては面白い画にしてもらわないと困ると。なんでもやりますからやりたいこと言ってくださいって言ったら、監督がじゃあ一つだけ、って言って『沖に出たい』と。バッと準備してパンツ一丁でよーいスタート!って。カット!どうでしたか!『揺れて撮れません!』って。ふざけんな!分かるだろ沖に出たら揺れるのは!」と、苦労を明かす。
そんな大泉の姿を見ていた松田は「次、次回作やってくれるのかなって。1の時から大泉さんの体が持つのかなって、もうやりたくないって言い出すんじゃないかなって心配してました」と語る。高田はアクションシーン担当のポジションだったが「1の時は僕じゃなくてプロの人がいるからいいや、ぐらいの感じで、だんだん回を追うごとに熱が入ってくる。自分で全部やるみたいな感じになって、3が1番殺陣を頑張ってやったんですけど、あんまり頑張らない方が良いのかもなと思ったんです。良い塩梅を探そうと。頑張りすぎた」と反省があったよう。

また、大泉は『探偵はBARにいる3』の公開当時、小学校低学年だった娘にも見せたようで「のっけからいきなりアイスピックでグサグサ刺されて、娘がびっくりしちゃって。それで見てたら、パパが知らない女優さんとベッドに入って、結局途中退出。終わった後に妻から『全然無理だったから』って。俺も後悔しました。なんでこんな映画見せたんだろうって」と家族とのエピソードを明かした。

一挙上映後ということで、シリーズにわたって思い出話に花を咲かせて、大泉が熱弁するも、松田はあまりピンときてない様子。すると松田から「よく覚えてますね。昨日見返しました?さては」と疑いの目を向けられる大泉の姿もあった。

丸の内TOEIでの舞台挨拶での思い出にも触れ、3の時には「大泉洋映画祭」が開催。「『バカバカしくていいね』って話を受けたのを覚えてます」と懐かしむ大泉に、松田が「そんなのあったんですか?審査員でも呼ばれてないな…」と残念そうにし、「次は一緒に」と期待すると、大泉は「一緒にノミネートされるかもだけど、(賞を)取るのは僕ですから!」と譲らなかった。

続編となる『探偵はBARにいる4』の制作の話になり、客席からも期待の拍手が巻き起こる。「僕はだいぶ前から準備万端です。この人が忙しくて、忙しいと同時に本にうるさいんです。こだわりが強くてちょっとめんどくさい」とぼやくと、大泉が「お前も拷問受けてみろよじゃあ!」と反撃。「言ってますよ私もプロデューサーに!どうなってるんだ!って。『室町無頼』やってる場合じゃないって!」と自身の出演作にも触れながら反論。
しかし、松田から「でも、4の初日舞台挨拶をやる劇場がなくなっちゃうんですよ……どうします?」と問いかけられた大泉。閉館までの公開を検討するも、「8年ぶりの映画を突貫で作るのもね。2ヶ月ぐらいでできた映画だなって感じで、キャストも違う人になっていたり、それはちょっと残念じゃないですか」と話す。

そこから4のストーリーを妄想する流れになり、ヒロイン役については「子役の子」と松田から提案が。
すると大泉が「分かる!良いと思う!子どもに振り回される探偵ね!」と乗っかり「ケラーオオハタに子どもが入ってくる。『なんだお嬢ちゃん、君なんか来るところじゃないよ』とか言ったら『パパ…』って…」とストーリーを膨らませ、「手紙かなんかよこして、この子はあなたの子どもです、って。そこからまた色んなことが起きて、また高田が助けに来るのがなぜか遅れてやってきて、やっぱり最後は子どもとお別れするんでしょうね。なんか分からないけど、一人で生きていくんでしょう、その子は」と結末まで考えると「だいぶストーリー固まってきましたね!」と手応えを感じていた。

大泉の絶好調トークで大盛り上がりとなった舞台挨拶。最後にそれぞれメッセージ。
松田は「最後にずっとお世話になった劇場で、4は間に合わなかったですけど、こうやってシリーズが改めて上映することができて、大泉さんと壇上に立つことができてとても良かったなと、嬉しい思いでいっぱいです」とコメント。

そして大泉は「7月27日でこの丸の内TOEIの歴史が終わるということで、今日呼んでいただけて本当に嬉しいです。『探偵はBARにいる』というシリーズを3部作らせてもらって、ここで初日の挨拶をし、毎回次回作制作決定!なんつって盛り上がっていただいた思い出がたくさんございます。そして2017年からおよそ8年ぶりに、映画を作ってないのに龍平くんとまたここで舞台挨拶させてもらえたというのも、最後の最後で素敵な思い出をもらえたなと思いまして」と感慨深げに語り、「閉館には間に合わなかったけども、『探偵はBARにいる4』はやっぱり作らなければいけない!と、気持ちも新たに感じた次第でございます」と力強さを見せる。「一旦、7月27日に間に合うかどうか試しですけど、監督も脚本も私かもしれません!明日から子役のオーディションの入ろうと、試しに間に合うかどうかやってみようと」と、最後の最後に笑いを誘う。「いつか『探偵はBARにいる4』、皆さんの前にお披露目できるよう、精進して参りたいと思っております。久しぶりに皆様に2人でお会いできて、大変嬉しく思いました!」と笑顔を見せ、舞台挨拶を締めくくった。