
松田正隆による《読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞》の傑作戯曲を気鋭の演出家・玉田真也の監督・脚本で映画化した映画『夏の砂の上』(公開中)は、共同プロデューサーも務める主演のオダギリジョーを筆頭に、髙石あかり、満島ひかり、高橋文哉、森山直太朗、光石研ら豪華キャストで贈る極上の人間ドラマ。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女…それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描き、日本映画として23年ぶりの快挙となる第27回上海国際映画祭「メインコンペティション部門」審査員特別賞を受賞した。
この度、映画公開前には封印されていた、乾いた心を抱える治と優子に雨が降り注ぐ、本作の重要シーンを捉えた場面写真が解禁。
本作の舞台は、雨が降らない渇水状態の夏の長崎。蝉の声が鳴り響き、うだるような暑さがスクリーンを通して伝わってくる。主人公の治は、幼い息子を亡くした喪失感から、働きもせず街をふらふらとしている。妻も彼から離れつつあり、大切なものを失い続ける日々の中、治の妹の阿佐子が、娘の優子をしばらく預かって欲しいと突然訪ねてくる。優子もまた父親の愛を知らず、乾いた心を抱えていた。こうして、どこか似たもの同士の2人の共同生活がはじまる……という物語。
今回解禁された場面写真は、渇水状態の長崎の街に雨が降る場面。心の乾きを潤すかのような待望の雨に、治と優子が歓喜するシーンを切り取ったもの。
優子を演じた髙石は、このシーンに特別な思い入れがあり、「治と優子が雨を喜ぶシーンは、とても印象的です。のちにオダギリさんが“あのシーンの芝居は本当に映画的だった”と言ってくださって、鳥肌が立つほどうれしかったです」とコメントしている。主演だけでなく、共同プロデューサーとして本作に携わったオダギリは、本作に込めた思いについて「監督作ではないけれど、とても深い関わり方をさせていただいたので、すべてのシーンに思い入れがあります。優子と治のシーン次第で見え方の変わってくる映画だと思いますが、その瞬間が幸せに見えるといいなと。ただ僕は、映画をつくる側として、観客に答えを渡す作業ではダメなのではないかと感じていて。人によって受け取り方が違ったりするものこそが、映画であってほしいと思っています。水を飲むシーンだって、僕はハッピーであってほしいと思いましたが、悲しいシーンだと受け取る人もいるはずで、それこそが映画としての成功であり、正解だなと。観終わった後に余韻を感じたり、深く考えることのできる作品がないと寂しいものですよね。やはり僕は手軽に観られる作品にはあまり興味が持てないので、今後もこういった映画に関わっていきたいなと思っています」とコメントする。
登場人物が抱える喪失感や孤独感に差し込む一筋の希望。それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描く映画『夏の砂の上』は、現在公開中。