原作は、元新聞記者ならではのリアリティーある描写でベストセラーを多数生み出している、堂場瞬一による傑作警察小説『コーチ』(創元推理文庫)。
警視庁人事二課所属の一見“冴えないおじさん”向井光太郎(むかいこうたろう)が、捜査に失敗し行き詰まり逃げ出したくなっている若手刑事たちを“コーチ”。魔法のように彼らの潜在能力を引き出し、刑事としてだけではなく人間としても成長させていく姿を描く、異色の警察エンターテインメント。
主人公の向井光太郎を演じるのは、テレ東連続ドラマ約7年ぶりの主演となる、唐沢寿明。向井にコーチをされる若手刑事役を倉科カナ犬飼貴丈関口メンディー阿久津仁愛といった今旬の俳優陣が務め、さらに彼らを取り巻くメンバーとして古田新太木村多江の出演。

記者会見に登壇した唐沢は、演じる役について「若くて悩んでいる人たちにヒントを与えて、その人たちが自立をしていくきっかけを作る役で、今までそういうパターンはなかったので、すごく楽しいです」と話す。役作りのために地毛を白髪にし、髭も生やしているが、自身との違いを聞かれると「全く違いましたね。見た目もね。普段はすごくかっこいいんで俺は。髭さえ剃ればこっちのもんだから」と笑いを誘い、「僕は冴えないおじさんなので、それに徹しようということでやっています」と、徹底した役作りで挑んでいるようだった。

会見中に行われたサイコロトークにて、“最近、思わず二度見してしまったこと”について唐沢は「このドラマの撮影をしていて、若い人たちの演技がすごいんです。その辺はすごく二度見します」と話し、「カナちゃんは真面目だと言いますけど、演技をしていて微妙な感情の動きがすごく上手いんです。犬飼くんはすごい荒いんだけど、最後の最後に見事に自分のものにして、自分の足で立ち上げる瞬間がかっこいいんです。メンディーくんは見た目が派手じゃない。でも見終わった後はメンディーくんに見えないのがすごい。阿久津くんはまだ2、3シーンしかやっていないけど、泣き虫だっていう部分があるんですけど、そこが良いんです」と一人ひとりの魅力に触れ、「僕は直に向き合って演技をしますけど、影響されるところもあります。ちょっと言ったことでこんなに人間って変わるのかと。最初にテストした時と全く違う人みたいになるんです」と、唐沢自身も影響を受けているそう。

さらに、撮影現場での“この人のここがすごい”というエピソードでは、犬飼は唐沢の名前をあげ、「唐沢さんとご一緒する機会が多かったんですけど、その時に『ちょっとニュアンス違いでこう言ってみたら?』とアドバイスをくださったことがあって。僕はここの流れが自分の中で気持ち悪いと感じていたところで、そこを唐沢さんの一声によって全部が繋がって気持ち良くなった瞬間があったんです。長年トップを走り続けてきた唐沢さんだからこそ成せる技なのかなと、すごく助かりましたし、さらに尊敬するきっかけになった出来事です」と語る。

続く倉科も「唐沢さんと一緒にお芝居をさせていただいていて、全てがすごいなと思います。台詞のないカットでも引き寄せられますし、私が苦戦していたシーンがあって、長台詞で緊張もしていて、相手との距離感で沸点が変わったりもするので、感情がどこで動くんだろうと探っていた部分があったんですけど、終わった後に唐沢さんが『緊張感とかも全て役の糧になるし、セオリー通りのお芝居よりも緊張感を全て生かしてシーンに乗っけていくことも良いことだよ』とおっしゃっていて。なかなかアドバイスをくださる先輩はいらっしゃらないので、すごく感動しましたし、素敵だなと思いました」と、唐沢からの金言を明かす。

その言葉に唐沢は「世間話をしていて、ちょっと言うだけなんです。それに気づく人もいれば、演技が変わらない人もいるんです。僕から見てこのメンバーはすごく面白いなと思うのは、見違えるようになるんです。だから、可能性ってすごいことだなと。大した話じゃないのに、自分で考えて、それをやっている。自分も同じくらいの歳で色々考えたり1人でやった時期もありましたけど、その時を思い出すこともあるし、生で見ていると気持ちいいですね」と返していた。

さらに、タイトルにちなんで、キャスト陣がそれぞれ向井に自分のどんなところを“コーチ”してもらいたいかという質問に倉科が「真面目すぎるって言われるんですよね。舞台に立たせていただく時もマネージャーさんに『もっとワガママになって良いんだよ』って言われるんですけど、それがなかなかできなくて、コーチングしてもらいたいです」と答えると、唐沢は「役は役で別でやれば良いけど、根底は真面目じゃないとダメだから良いんじゃないですか?今、アドバイスしたから1万5000円」と、コーチ料を請求する冗談も見せた。

会見の最後に唐沢は、「この作品は刑事ものと言いましても、特に驚くようなシーンや派手な仕掛けは一切ありません。殺人事件もありますが、そういうものもそんなに気にならないぐらい、彼らが成長していく過程が、すごく優しいドラマです。トゲトゲしている感じもないし、最後は見ている人たちが笑顔で終われるような、気持ちが良いなと思えるような作品です。ぜひその辺を楽しんで、若い刑事たちの成長もぜひ見てあげてください。本当に素晴らしい演技をしています」と呼びかけた。

ドラマ9『コーチ』は、テレ東にて2025年10月17日(金)より毎週金曜夜9時から放送される。