山田洋次監督の91本目となる最新作『TOKYOタクシー』。タクシー運転手の浩二は、ある日85歳のすみれを東京・柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。人生の終盤を迎えたすみれは、「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」と浩二に頼み、幼少期から現在まで人生のターニングポイントとなった思い出の場所を寄り道することに。タクシーで旅を共にするうち次第に心を許したすみれは、初対面の浩二に、喜びと悲しみを織り交ぜた壮絶な人生を語り始める。そんな“たった一日の旅”が偶然出会った2人の心、そして人生を大きく動かしていく。

長きにわたり日本映画界で活躍し続け山田監督作品には欠かせない名女優・倍賞千恵子、そして『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村拓哉。さらに蒼井優迫田孝也優香中島瑠菜イ・ジュニョン笹野高史など多彩な豪華キャストが集結。

公開に先駆け行われた完成披露試写会。上映後の会場に登壇した倍賞は「皆さんが見た後にこうしてご挨拶をさせていただくのは初めてなんですね。ですから、すごいドキドキしています」と挨拶し、「今回、映画の中でメイクをしたりマニキュアを塗ったり、素晴らしいダイヤモンドのイヤリングをしたり、ネックレスをしたり、高いバッグを持ったりという役をやってこなかったんですね。ですから、最初は大変戸惑っていました。ネイルも最初は3時間ぐらいかかったんですね。どんどんやっていくうちに、撮影中も何度も手直しをしてくださって。暗がりでやっていると木村くんがパッと来て、スマホで明かりを付けてくださるんです。それで随分助けられて、その時はありがとうございました」と撮影の裏側を明かしながら、「そんなふうに出演した作品なんですけども、私にとっては生涯忘れられない作品だと思っております」と語る。

山田監督の作品には70作目の出演になると紹介があると、隣にいた木村が「すげ〜」と声を漏らす場面も。そんな倍賞にとって山田組は「私にとっての学校かなと思ったんですね。それはお芝居的な学校ではなく、人間としてどう生きていくかということを作品を通じて演じながらいつも考える、人間としての学校という感じで出演しています」と、印象を語る。

山田洋次監督は、今回の撮影を振り返り「映画を作るという仕事は、一言じゃ説明できない、とても複雑なんですよね。簡単に言えば、俳優さんとスタッフ、この人たちと一緒になって、ワーワー言いながら作り上げていくのが映画で、これはその他の芸術にはちょっとないものですね。一緒に仕事をしていることの楽しさと言うのかな。辛いこともいっぱいありますけれども、それも含めて『ああ、楽しかったな』という想いを全員が抱いてクランクアップできるような状態が僕にとっての理想だし、僕自身も皆と一緒にいて楽しかったと思っております」とコメントした。