2012年の初演から2022年まで幾度も再演を重ね、多くの人々に愛されてきた本作。知的で紳士、けれど一風変わった若き慈善家・ジャーヴィス・ペンドルトンと、孤児でありながらはつらつとして聡明(そうめい)なジルーシャ・アボットとの心温まる恋の物語。初演よりジャーヴィスを演じる井上芳雄。ジルーシャ役には初演から同役を演じる坂本真綾と、2022年から参加の上白石萌音と初のWキャストで届ける。

二人きりで織りなす愛と感動の物語が、あの“あしながおじさん”のストーリーが、3年ぶりに待望の再演となり、井上は「大好きな作品なので嬉しいです。今回はジルーシャが二人いますので、豪華というか贅沢というか、申し訳ないなという気持ちでいっぱいです」と、恐縮。
5年ぶりとなる坂本は「初演の時のような新しい気持ちで向き合えていて、すごく刺激がいっぱいで、楽しい稽古場の時間を過ごしてきました」と稽古の日々を振り返り、「萌音ちゃんと一緒にステージに立つことができないのが、ダブルとしては本当に残念なんですが、心の友がもう一人増えて、心強い気持ちでいっぱいです」と微笑むと、その言葉に上白石は「今のお言葉を聞いて幸せな気持ちでいっぱいです」と笑顔。「私はお二人がずっと紡がれてきたこの作品の大ファンなので、開幕するということが一ファンとして嬉しいですし、真綾さんのジルーシャにお客様が会われるのは久しぶりだと思うので、それもすごく興奮しますし、私もしっかりこの素晴らしい作品を素晴らしい形のままでお届けできるように頑張ろうと思っているところです」と語る。

本作は登場人物が二人なので、舞台に立っている時間がほとんどとなるが、井上は、「年々集中力が切れてきて大変なことをやってたんだなと思うんですけど、最後に向かうに喜びがますます回を重ねるごとに増していくので、幸せな作品だなと思っています」と大変さも感じながらやりがいがあると話す。
坂本は「関係ないよって言ってくださる人もいるんですけど、年齢を重ねたので18歳に見えるかなとかそういう不安が…」と心配そうにするも、すぐさま「見えます!」とフォローする上白石の姿もありながら、続けて坂本は「それはさておき、今の自分にしかできないものもあると信じて頑張っています」とコメント。

そんな上白石は坂本の大ファンであり、一緒に稽古をされた感想を聞かれ、「日々、真綾さんがたくさん考えていたりその場で心に任せて生み出されるものが本当に魅力的で、すぐ真似したくなってしまうのを堪えるのが大変でした。なんとか私も自分のやり方を探してやらなきゃという中で、本当は全部真似したいんですけど」と、葛藤があったことを明かすと、井上が「でも幕開いたら真似するって言ってました」と笑いを誘い、上白石も「やってるかもしれないです(笑)。でも本当にそれくらい魅力的で、大好きなジルーシャを目の当たりにできて、幸せです。たくさん勉強させていただきました」と、坂本から多くを学んだと語った。
上白石は坂本へ毎日愛を伝えていたそうで「戻ってきてくださってありがとうございます、と」と恥ずかしそうに明かす。その言葉を受けて、「5年ぶりでただでさえ不安な中で、稽古でも私の出番を終えて帰ってくると『素敵でした!』って褒めてくれて。あまり仕事をしていて褒めてくれるってあまりないじゃないですか。だからすごい心の支えで、萌音ちゃんがいなかったらステージに立てないくらいでした」と、上白石の存在が大きかったよう。

また、再演で同じ役を演じることについての心境を聞かれると、井上は「役や作品は自分のものではないと思っているんですけど、これに関してだけは、許される限りやりたいなと思うくらい大好きですね」と思い入れの強さを滲ませる。
坂本は「改めてこの作品の素晴らしさ、役者にとってこの作品と巡り会えた幸運が、本当にラッキーだったと感謝する日々でした。同時に、この幸福感をよりお多くの俳優の人たちに味わってほしいという気持ちもあったりして、自分たちで独り占めしていいんでしょうか?と…」と、心配するも、井上は「でもできる限りは!」と熱くアピールした。
上白石は「可能な限り見続けたい作品」と話すと、井上から「出てるし!」とツッコミが入り会場からは笑いが。続けて「必要な時に呼んでいただけたらいつでもやれますって状態にしておきたいと思っています」と微笑んだ。

作品にちなみ、手紙にまつわるエピソードを聞かれると、坂本から「芳雄さんにはお伝えしてなかったのが、萌音ちゃんと交換日記を始めて…」と告白すると、「蚊帳の外だ…」と落ち込む様子の井上。「これから本番が始まると会えなくなるので、同じ役を演じる仲間として、一言伝えたりしています」と、交換日記の内容を話すと、「それを読むのが日々の楽しみです」と嬉しさを隠し切れない上白石は「持って帰りたいぐらいです」と話していた。

会見の最後に、井上から作品を楽しいにしている方々へ「一人でも多くの方に見ていただきたい作品なので、心を込めて僕たちは毎回お届けします。今回は3人で届けられるのをとても嬉しく思っておりますので、ぜひ楽しみにして劇場にお越しください」と、メッセージが送られた。