
1886年生まれの谷崎潤一郎は今年で生誕140年を迎え、「痴人の愛」「陰翳礼讃」「細雪」を初め、数多くの作品を世に残した。中でも、今もなお根強いファンの人気を集め、多くの名俳優たちにより映像化・舞台化されてきた「春琴抄」は、盲目の琴三絃奏者・春琴と丁稚であった佐助が、師弟関係を結んだことをきっかけに秘密の関係へと進化していく物語で、従来からのマゾヒズムと関東大震災を機に関西へ移住したことで触発を受けた日本の伝統美とが溶け合った谷崎の中期代表作であり、耽美主義文学の金字塔として世代を越えて読み継がれている作品である。
そんな「春琴抄」を戯曲化し、演出するのは、劇団papercraft主宰の海路。第29回劇作家協会新人戯曲賞を受賞し、以降も立て続けに話題作を発表し続け、近年は彩の国さいたま芸術劇場、KAAT神奈川芸術劇場と確実にステップアップをしてきた海路が、ついに新国立劇場に初進出。93年前に発表された「春琴抄」を、26歳の海路が、令和の今にどのように演出していくのか、注目が高まる。
主演にはドラマ・映画を中心に、モデルや音楽アーティストとしても活躍する茅島みずきを「春琴」役として迎え、世界的ダンスパフォーマンスグループs**t kingzのメンバーであり俳優としても活動の幅を広げている小栗基裕が「佐助」役で出演。ミュージカルとストレートプレイの両輪で数々の舞台で観客を魅了してきた水田航生が「私」役、小劇場での活動を中心に確かな演技力に定評のある永井秀樹が「晩年の佐助」として出演も決定。さらに、俳優のみならずフォトグラファー、映像クリエイターと多彩な才能を発揮している古屋呂敏が鴫沢役、本作が本格的なデビューとなる中山敬悟が門弟役として、2名が初の舞台出演をすることが発表された。
この度公開されたビジュアルでは茅島と小栗のそれぞれが、目を閉じて正対しつつも、目を開き横を向いて何かを見つめている姿が一回のシャッターの中で切り取られている。何かが見えているのか、それとも見えていないのか。瞳のその先には捉えているものとは―。公演への期待が高まる写真となっている。
この写真は、ドイツのデュッセルドルフ在住の日本人フォトグラファーJUMPEITAINAKA氏によって撮影された。ドイツと日本を中心に世界で活躍する彼が常に意識しているという“光と影”が、「陰翳礼讃」を始めとする谷崎文学にも通ずることもあり、本公演の公演ビジュアルを撮影することになった。
チケットは3月13日(金)から一般発売。それに先駆けて明日2月4日(水)よりアミューズ公式デジタルファンサービス「Amuse+(アミューズプラス)」、s**t kingzオフィシャルファンクラブ「062」にて先行受付を開始する。
【あらすじ】
私はある目的のために、旅をしていた。
ひょんなことから手に入れた冊子「鵙屋春琴伝」。
そこには春琴、そして晩年にこの春琴伝を編んだ本人と思われる温井佐助、という過去に存在した女と男について書かれていた。
後年関わりがあったという鴫沢の証言と春琴伝をもとに、私は目を閉じ、ふたりへ想いを馳せていた。
春琴は大阪道修町の裕福な薬種商の娘で、容姿端麗であったが、九歳で盲目となってしまう。
それより門弟達と琴三弦の稽古に励み糸竹の道を志すに至るのだが、そんな春琴に丁稚として仕えていたのが、十三歳の佐助であった。鵙屋は佐助にとって累代の主家であり、春琴の稽古の際に手を曳き毎日一緒に歩いていた。
やがて佐助は、何かにつけて彼女と同化しようとする熱烈な愛情からか、夜な夜な独り隠れて三味線の稽古をするようになる。半年ほど経った時に見つかってしまうも、どのくらい弾けるのか聴いてみたいという意見が持ち出され披露すると、皆に感心された。
それをきっかけに、春琴は佐助を弟子に持とうと言い出し、十一歳の少女と十五歳の少年とは主従関係の上に子弟の契りを結んだ。
こうして「学校ごっこ」のような二人の遊戯が始まったのであったが、やがて稽古は本物へと進化していって……。
【茅島みずき コメント】
16歳の時に初めて舞台に立ってから約5年ぶりとなります。久しぶりの舞台、そして「春琴抄」という名作に足が震えております。舞台の良さはやっぱり、生のお芝居の空気や迫力を身体いっぱいで感じて観ていただけるところだと思います。こんな素敵な機会をいただいたからには全力でぶつかっていきたいと思います。稽古はこれからですが、海路さんをはじめとする、キャスト・スタッフの皆さんと共に、観に来てくださった方々に沢山のエネルギーを届けられるように頑張ります。

【小栗基裕(s**t kingz) コメント】
2024年の「空夢」以来、海路さんとご一緒するのは二度目になります。いつもの海路さんの作品とはかなり毛色の違うこの「春琴抄」がどのように料理されるのか、自分はどんな味付けとして舞台に立つ事になるのだろうか。想像がつかなすぎてワクワクニヤニヤしてしまいます。素晴らしい出演者の皆様と共に美味しい人間の匂いをプンプン香らせたいと思います。

【水田航生 コメント】
「私」を演じます水田航生です。「私」は物語へ導いていく語り手でもあり、春琴に魅了され、畏怖の念すら抱いている存在であるとも思います。日本文学を代表する、谷崎潤一郎さんの美に存分に呑み込まれ、若き才能の海路さんの舵取りのもと本作を創り上げるのが楽しみでなりません。是非劇場に「春琴抄」の描く美を体験しにきてください。

【古屋呂敏 コメント】
今回、舞台『春琴抄』にて鴫沢役を演じます、古屋呂敏です。本作が初舞台となりますが谷崎潤一郎の濃密な世界を、てるという人物を通して体感できることを光栄に思います。丁寧に役と向き合い、一公演一公演を大切に演じてまいります。よろしくお願いいたします。

【中山敬悟 コメント】
初めまして、中山敬悟と申します。出演できる喜びと同時に、どっしりとした重みを強く感じ、背筋が伸びております。出演が決まったとき、正直「え、あの春琴抄に?」と驚きました。しかも初舞台が新国立劇場。海路さんの描く世界観の中でこの作品にどう向き合うのか、そして俳優の諸先輩方とご一緒できることに身が引き締まる思いです。不安もありますが、それ以上に、この舞台で役として生きられることへの期待で胸が高鳴っています。

【永井秀樹 コメント】
海路さんとは、初めてご一緒します。一度お話した時に「なんと頭のいい人なんだろう。こんな浅い自分で大丈夫なのか?」と一瞬不安がよぎったのを憶えています。とはいえ「なにか勝算があって呼んでくれたのだし、お任せすればいいか」と大船に乗った気持ちで参加することにしました。谷崎作品も初めて、共演者の方も初めて。「初めてづくし」あとは期待しかございません。

【演出家:海路 コメント】
谷崎作品を読んでいると、不思議なことに、すぐ隣の出来事なのでは。なんて思い違いを起こしそうになる時があります。今と谷崎が生きた時代とでは、時間も景色も、そして世界もきっと違ったことでしょう。でも、果たしてその思い違いは思い違いだったのか。今回の創作を通して、その答え合わせをしようと思っています。隣かもしれない、そんな場所で。お待ちしております。













