本作は、東日本大震災で家族を失った青年が、喪失と向き合いながら、周囲との絆と家族愛の中で再び前へ踏み出していく姿を描いた、脚本家・内館牧子の小説『小さな神たちの祭り』が初の舞台化。演出は鈴木裕美、脚本はG2が担当する。
主人公・谷川晃を演じるのは、宮城県仙台市出身の八乙女光。親友役に福田悠太、弟役に藤井直樹、恋人・岡本美結役に堺小春、母・クミ役に西尾まり、父・広太郎役に中村まこと、祖父・行雄役に福島県出身の斉藤暁が出演する。

この度行われた製作発表にて、演出する上での意気込みを聞かれた鈴木は、「私は今まで震災にまつわる演劇に参加したことがなく、今回が初めてになるんですが、非常に頼もしい俳優の皆さん、スタッフの皆さんにお集まりいただけて、この機会に私も何らかの形で関与できることをとても嬉しく思っております」と、本作への想いを語り、「皆さんには、今も苦しんでいらっしゃる人がいる事柄を扱うので、とにかく誠実に真摯に、想像力を使っていい加減なことはしないで役に向かっていく稽古をしましょう、ということをお話し、強くご賛同いただけて、稽古をしているところです」と稽古に臨む姿勢を明かす。

主人公・晃を演じる八乙女も「僕は台本を読んで、1行1行言葉が大切で、よりリアルに伝えなければいけないというのが僕の中にあって。時間をかけないと腹に落として芝居はできないなと、芝居とリアルの間を演じる気持ちです」と作品との向き合い方を語る。

舞台となる宮城県・亘理町には稽古が始まる前に八乙女と鈴木が訪れたそうで、宮城出身の八乙女は「小さい頃から海水浴に行ったり遊びに行ったことがあるんですけど、綺麗になってしまった、という印象でした。震災前はもっと漁師さんがいて船がいて、もっとごちゃごちゃしていた街だったんですけど、今はすごく綺麗で、それは復興の表れではあるんですけども、それが心のどこかにある虚しさをくすぐるような景色でした。でも、海はなにも悪くないので、ただただ綺麗だと感じました」と率直な心境をコメント。鈴木も「ものすごく天気が良くて、青い空と海が本当に綺麗で、『綺麗ですね』と申し上げてしまったんですけど、町の方々が、元はもうちょっとガチャガチャしていて綺麗じゃなかった、実は震災で全部が無くなってしまったからこんなに綺麗なんですよとお話を伺って、ドキッとしました」と、コメント。

また、晃の実家と同じように、亘理町に震災を乗り越えて今でも続けているイチゴ農家があり、そこにも足を運んだという八乙女。「『どうして今までイチゴを育てるのを続けてこられたんですか?』と聞いたら、『毎年同じイチゴは作れない』とおっしゃったんです。それは僕が舞台をやるにあたって、絶対に毎日同じ芝居はできないじゃないですか。イチゴと舞台だけでもこういう共通点があるんだと、不思議な思いがあります」と、重なる部分があったそう。

堺は、本作のオファーを受け「この1年で東北を訪れることが増えていたタイミングだったので、ご縁のようなものをすごく感じました。私も震災の時に、東北に対して何か自分ができたことってあったのかなって考えたこともあったので、自分が作品で東北にちょっとパワーを与えられるような存在になれたんだという喜びはありましたし、光みたいなものを感じたのを覚えています」と話していた。

斉藤の出身地である福島も、震災では大変な被害を受けたが、当時を振り返り「震災にあったときは東京にいたんですけども、テレビで見ると本当にあるのかと、ショックでした。自分も何かできないかと思ったんですけど、何もできなかったですね。でも、何もできなかった自分が、こういう作品に出られることが嬉しいです」と想いを口にした。

また、福田は「本当に忘れられない出来事で、あの時から15歳、年を取って少し大人になって、改めてあの時の重みを感じております」、当時10歳だった藤井は「あれだけの大きな地震を体感したのが初めてで、テレビとかを見て、こんなことが本当に起きているんだとすごく怖くて。僕はその時は千葉にいたので、大きな被害はなかったんですけど、地震の怖さを知ったのがその時で、そこから防災の意識を持ち始めたかなと思います」と思い返す。

製作発表の最後に八乙女は、「震災当時、本当に無力で悔しい思いをした僕は、15年という月日が経ち、大きなプロジェクトに参加できることができて、やる気に満ち溢れております。観に来てくださった方に、普通の日常がどれほど大切で、心の支えになっているかを感じていただけたら。未来に繋がる復興になったらいいなという思いで、カンパニーの皆とこの作品を届けたいと思います」と、メッセージを送った。