ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、ジョン・キャメロン・ミッチェル作・主演で1998年にオフ・ブロードウェイで初演され、2001年には同じくミッチェルによって映画化。サンダンス映画祭観客賞、監督賞など数々の賞を受賞するなど、舞台・映画共に世界中に一大ブームを巻き起こした。更に、14年にはリバイバル作品としてブロードウェイに進出し、トニー賞4部門という快挙を遂げ、15年公演では、ミッチェルが本作においてトニー賞名誉賞も受賞した。

物語は、少年ハンセルがアングリーインチという悲しみを抱え、性別を超えたドラッグクイーン・ヘドウィグとしてロックバンドのライブステージに降臨。そのヘドウィグによって、これまでの生い立ちと現在の心情を表す歌と共に、一人語りで進行していく。

演技・歌・そしてライブパフォーマンスという様々な要素を持つこの作品でヘドウィグを演じるのは、関ジャニ∞・丸山隆平。
そして恋人でありバンドメンバーとしてヘドウィグを陰ながら見守るイツハクを演じるのは、バンド“ゲスの極み乙女。”で、ドラマーほな・いこかとしても活躍する、さとうほなみ。
どちらもミュージシャンとして第一線で活躍する二人が、本作で初めてミュージカルに挑む。

さらに、2年ぶりとなる日本での上演で、初めてミッチェル自らが舞台版の演出を手掛けることでより期待が高まる。

初日の公演に先駆け行われた取材会には丸山、さとうが出席。

ステージ下手から登壇した丸山は、「あら、ご機嫌麗しゅう。すごいわね、たくさん集まってくれているわ!」と、役になりきって登場。

取材会が始まり、現時点での手ごたえを聞かれた時も「手ごたえはお客さんが入ってからかしらね、よく分からないわ!でも楽しそうってことだけは分かっているわ」と引き続き役になりきって話し出した丸山。そんな姿にさとうが「ずっとそんな感じで?」と聞くと、「ちょっとやばいなこれ!」と早々に素の丸山の姿に。
「ミュージカル自体が初挑戦なので、どうなる自分がそこで湧き上がるのか、あとお客様にどういった反応があるのか、コロナ禍でもあるから多分色んな制約がある中だけれども、ほなみさんの支えと、バンドの方々もいらっしゃるので、生の臨場感を楽しんでいただけたらなと思っております」と、改めてコメント。

さとうは、「ヘドウィグの生き様とイツハクの関係性を築き上げてきているところで、これからもどんどん変わっていくんだろうなというところと、やっぱり音楽がかっこいいので、そこが一番上がる部分かなという感じがします」と答えた。

性別を超えたドラッグクイーン・ヘドウィグのいで立ちで登壇した丸山。自分の姿を見た感想には、「プロの技術ってすごいなっていうのを実感してます。あとドラッグクイーンの方々ってウィッグやメイクとかに攻撃性やその人の個性だったりを出していらっしゃるんだなというので、メイクしていく上でヘドウィグに気持ちを持ち上げてくださって、もちろん衣装やセットもですけど、それに助けられて支えられてなりたっているなっていうのを実感しています」と、語る。

どこで役へのスイッチが入るのかを聞かれると、「分からないんです。だんだん境目が分からなくなってきていて、舞台が終わった時にどうなっているのかなっていう不安もあるんですけど」と口にしながら「裏とかでこの格好になった時に、割と年上の男性のスタッフの方に『綺麗だね』とか言われると『いやちょっと待って!』ってなっちゃうので、分からない自分の部分が生まれ始めているのかもしれないです」と、心境の変化を感じている様子。

足の綺麗さを褒められると、「この後、断髪式があるんです。全然薄いんですけど、こちら(脇)とこちら(足)の毛を後ほど剃るので、皆さん見納めです」と話し、「各カメラさん見えますか?ズームしてください!これがこの後失われて、皆様の前に登場って形になるので!」と脇を全開にして大サービス。
そんな丸山を見て、少しだけ距離を置いたさとうは「脇を見せている写真に写りたくないなって」と苦笑いしていた。

そしてヘドウィグを恋人として支えるイツハク役のさとうは、役を演じるにあたって「男性の格好をさせていただいているのが今回初めてで、イツハクとしてヘドウィグについて行きたいっていうところでツアーも一緒に回っているところでもあるので。尊敬する丸山さんについて行かせていただこうと思っています」と笑顔でコメント。

どの辺りを尊敬しているのかという問いに、「今の姿ですよね。こうやって思いの丈をちゃんと人に伝えることが出来るというところだったり、魅せ方も上手ですし、考え方も素晴らしいし、もう100点……」と褒めるさとうに対して、「それじゃあ伸びしろがありませんよ……『伸びしろですね!』」と急にモノマネを入れて会場を笑わせる丸山。
「こういうのがすごいですよね、本当に」と感心するさとうに、「じゃあこの舞台で200点目指して頑張ります!」と張り切る丸山だった。

そんな丸山とさとうは、今回が初共演。お互いの印象を聞かれると、丸山は「別の番組とかではお会いしたことがありますけど、すごく素直で、分からないことは演出家の方や音楽家の方にズバっと聞きに行って、それをすぐ体現してやってみるっていうレスポンスが素晴らしいなと。一緒にやっていて、頼れる方だなと思いました」と語り、「お互いリズム隊だったりもするので、決まった時にこれは何か面白いことが起こりそうだなという予感はしていたんですけど、間違いではないなと稽古中に確信しました」と続けた。

対して、さとうは「本当に自由度の高い方だなと感じていて、お芝居をしていても歌っていても、そのままの丸山さんで居てもすごく自由度が高くて、生き生きされているなっていうのが見て分かるので、一緒にやらせていただいてすごく楽しいです」と返した。

丸山がベーシスト、さとうがドラマーと、お互いミュージシャンとしても活動している上で、何か感じ合うところはあるのかという質問には、丸山は「今回結構僕はボーカルで、彼女はコーラスだったりするので、普段やっているリズムや音を楽しむことはあったとしても、歌うってことに対してはちょっと別次元のものをやっているような感じがして、むしろすごく新鮮で楽しいって感じです」と、今作ならではの楽しさを実感しているとのこと。
さとうも「普段やらないことをさせてもらってる感じがとっても楽しいですけど、私、リズムの取り方は結構似てるなと思います」と話すと、「まじで?それは知らなかった!初めて聞きました」と驚く丸山。

どういうところが似ているのかを具体的に説明してほしいと聞かれ、さとうが「曲間のリズムの取り方ですね。歌い方みたいなところは、変えてもついていけるというか……」と話すと、「今回彼女はコーラスやってくれているので、僕がちょっと変えても合わせなきゃいけないっていう結構難題を出されているんですけど、それですごく僕の歌を聞いてくれている中で感じてくれたんだと思います。例えば皆さんがカラオケに行った時に、『こういう風に歌うやろうな~』って合わせる人いるじゃないですか。ああいうのとかが、すごく相性がいいとか、こいつのリズム感が気持ちいいなって思ったり、そういうことなのかな?」と補足する丸山に、「ありがとうございます。代弁していただいて」と微笑むさとうの姿があった。

身体の方で作品に向けて準備したことについて丸山は、「(関ジャニ∞として)ツアーを周りながらの稽古だったので、自ずとそうなって行きました」と話し、「身体作りっていう意味で言うと、ピラティスとかで体幹を作っておかないと、ヒールが思ったより高かったりとかして、男性の方はなかなか体験出来ないと思うんですけど、後ろが四角いんですよね。これが思っているより前に体重が行ってしまって、角ばっているから動くときとかに結構制限があるので、身体もヘドウィグの身体というかドラッグクイーン用の身体に稽古するにつれてなっていっているような感じがします」と、身体の変化も感じている模様。
今回履いているヒールの高さについては、「何センチなんでしょうね?……人差し指ぐらいの長さです。7センチくらい?」と、自身の人差し指を当てて長さを測る場面が。「でも女性はピンヒールを履いている方もいるんですよね。本当に尊敬します。女性の気持ちをちょっと体感させてもらってます」と語った。

物語のポイントとなっている”カタワレ”はどういう意味に捉えたら良いかという質問には、「カタワレって夫婦だったりとかっていうものもあると思うし、もしかしたらご両親とか、芸人さんの方だったら相方だったりってこともあるし、色んな形に捉えられるので、今回の演目はそういった点でも皆さんの生活の中にちょっとでも寄り添ったようなテーマがあると思うので、何か思い当たる部分が見つかるような、面白いテーマだなと思いました」と話した丸山。

そんな丸山は「丸山さんのカタワレは誰ですか?」と記者から問われると、カメラに指を指して「全国にいるファンの皆さんです!」と力強く宣言した。

そして今回、演出を務めるジョン・キャメロン・ミッチェルとは、コロナ禍ということでリモートでのやり取りとなったが、丸山は「すごく肯定的というか励ましてくださって、ご本人も何度も演じられているので、俳優のメンタルだったりとかも分かってくださっているので、そういった面でもすごく支えていただいています」と頼りにしているようで、稽古中様々な助言があった中、「生活的なこととか物理的なことが一番刺さってますね。『お酒をちょっと控えて修行僧のように生活しないとこの劇は持たないわよ』とか。先ほども連絡をくださって『とにかく初日、たくさん色んな自分に出会って楽しんでおいで』というようなことを言ってくださったので、力をもらえました」と振り返る。
さとうも、「最初にリモートでお話しさせていただいた時に、作品にとらわれずに自由にやってほしいと言ってくださったので、それをやるしかないなというか。ただ楽しむ感じでやらせていただけたらジョンも喜んでくれるんじゃないかなと思っています」とコメント。

本作への出演にあたり、関ジャニ∞のメンバーからのリアクションを聞かれると、「今日メールが来ました!」と嬉しそうに話す丸山。
「村上(信五)くんは北京からメールをくれて『北京から応援してるぜ』みたいな感じで、ヤス(安田章大)はわりと一言で『行ってらっしゃい』って。で、たちょ(大倉忠義)は、『大変な中やけど、無事に幕が開けて終わるのを待ってます』みたいな感じだったり。ヨコさん(横山裕)は寡黙な人なので、多分終わってから『お疲れ』ってくると思います。四者四様で、すごく心温まって元気もらいました」と笑みをこぼす。「色々と大変な世の中なので、無理なく仕事に支障なく、良いタイミングで来ていただけたらと思います」と、メンバーの観劇に期待を寄せた。

一方、さとうは「今日メールもらってないですね、誰からも」と悲しい報告となり、大爆笑する丸山。
「あなたのところの絵音くん(川谷絵音)は色んなバンドやりすぎ!働きすぎやねん。課長(休日課長)は?課長からは何も?」と丸山から聞かれるも、「連絡は誰からも……。でも課長は見に来てくれるって言ってくれたんですけど、頑張れよ、みたいなのは誰からもなかったです」と続けたさとう。
「信じてるんじゃない?見えない繋がりがあるじゃない?」と丸山がフォローする一幕もあった。

最後に、見に来てくださる方に丸山は「エンターテイメント的にも感染症対策はしっかり用意してお待ちしてます。こういう世の中だからこそ、こういう劇が皆様に届くんじゃないかと思いますので、皆さんも本当にご無事で、ご無理なく来ていただければなと思います。来たら皆の中に籠っているものをガンガン発散して帰すので、楽しみにお待ちしております」とメッセージ。

「この状況下で来ていただいたら、うちのヘドウィグが発散させていただきますので、ぜひお楽しみいただければと思います」と話したさとうに、「イツハクとして普段と違う面とかも多分見ていただけると思うから、すごく楽しみに、もしバンドを応援してくださっている方が来てくださるとしたら、こんなほなみちゃん他所では見られないと思うので、刮目せよって感じです」と続けた丸山。
「ありがとうございます。助けていただいて(笑)。ご覧いただければ幸いでございます」とさとうが締め、最後まで息がぴったり合った取材会となった。

ブロードウェイミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、2022年2月3日(木)の東京・EX THEATER ROPPONGIでの公演を皮切りに、全国5都市で上演される。