1990年に公開されたパトリス・ルコント監督の代表作『髪結いの亭主』は、一人の男の純粋で偏愛的な恋心を描いたフランス映画の傑作であり、90年代ミニシアターブームを代表する名作として語り継がれる本作を大胆にアレンジし、物語の舞台を1950年代の茨城県にある小さな理容室へ移して描く。幼い頃より“髪結いの亭主”となることに憧れていた男は、理容室で働く一人の女と出会い、結ばれる。小さな理容室には今日も個性豊かな人々が集い、二人は静かで満ち足りた日々を過ごしていたが…。静けさのなかに激情を秘めた男女の愛と官能の物語を鮮やかに紡ぐ。

脚本・演出を手掛けるのは、第33回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した新進気鋭の劇作家・演出家の石黒麻衣。自身が主宰する劇団普通で2025年に上演した『秘密』『季節』での演出が高く評価されるほか、出身地である茨城県の方言を用いた全編方言芝居にも取り組み、茨城弁ならではのリズムや響きを生かした独自の演劇表現で注目を集めている。

本作で主演を務めるのはSUPER EIGHTの安田章大。共演には、中村映里子、丸山智己、占部房子、村木仁ら実力派俳優陣が集結。繊細な人間模様を描く本作を確かな演技力で支える。

いよいよ明日より公演初日を迎える今の意気込みを、安田は「来てください、という一言です。とにかく来ていただければ、見ていただけるので、“石黒ワールド”を見に来ていただけたらなと思っています」と率直に語る。
石黒が主宰している劇団普通の作品をプライベートで観劇していたという安田は、石黒作品の魅力について「僕たちは普段生きていると、話を聞いてそうで聞いてない人の相槌とか、実はちゃんと聞いていたという相槌とか、意外と無意識で生活していることが多いんです。無意識で行動を起こしたり発言したりしているものが多いので、それをエンターテイメントの中に落とし込みながら、見ていてクスッと笑えたり、こういう人っておるよな、というところに共感性を感じて、面白さを見出しました」と熱弁。

プレスコールでは一部のシーンのみ公開となったが、安田は「あれだけだと届かないなと思いました。石黒ワールドが見事に展開されているので、初めて見られるお客様、そして石黒ワールドが好きなお客様、そしてこの劇場のファンの皆様がここでこういう体験をするのかと、プレスコールだけで分かるかなと思います。どんな響き方をしていくか、楽しみにしててもらいたいです」と期待を寄せる。

「本当に素晴らしい方に集まっていただけて、私は本当に幸運だなと思いました」と感激する石黒は「安田さんは、初めて稽古場で本を読んでいただいた時に、本を書く時にこんなに安田さんのことをイメージして書いたんだと、改めて思いました。原作とはまた違った魅力を持つ主人公を作り出さないといけないのが私の課題だったんですけど、その時に真っ先に思いついたのが安田さんで」と明かし、「声を出して読んでいただいた時、頭の中で思い描いていた人物が目の前に現れたんだと思って、本当に感動しました」と、熱く語った。

1950年代の茨城県にある小さな理容室が舞台となり、全編茨城弁での上演に、安田は「不思議な言葉でした」と茨城弁の印象を語る。「関西弁のイントネーションが混ざっているところもあれば、標準語や茨城の北の方の方言のイントネーションも入っているし、さしすせそが鼻から抜けるような音も入っているし、会話の前後によって語尾が上がる下がるとかも、全部変わるんです。なので、未確認物体みたいな、初めて出会った生き物でした」と難しさを表現。「以前、津軽弁をやらせていただいたことがあったので、それとはまたバランスが違い、新しいバランスボールの上に乗っかった感覚でした」と述べた。

丸山も茨城弁での芝居は初となるが、「石黒さんがまずご自身で(茨城弁のセリフを)吹き込んでくださったのが配布されて、ひたすら聞くところから始まりました。稽古場で石黒さんが茨城弁でお話してくださると、本物だ、と思うぐらい耳に馴染みました」と、自身に茨城弁が浸透していったことを語り、「音の持っている特有の柔らかさや距離感の近さが、普段やっている標準語でのお芝居と違いがあるなと。全編通して茨城弁なので、茨城弁が包むふわっとしたベールのようなものが、お客様に届く時に、何かの形で届き方が違うんじゃないかなと思います」と感じていた。

「稽古がすごく楽しかったです」と話す中村は、夫婦役を演じる安田について「安田さんがとても積極的に夫婦の関係性や作品について色々話してくださって、お芝居の中でも色んなことを提案してトライしてくださるのがあったので、私の中に、この役が存在していくことを一緒に作れていっている感覚がありました」と話し「毎日皆さんに感謝しながら臨ませていただいております」とコメント。

また、メンバーの丸山隆平が主演を務める舞台『water』が本日より公演初日を迎え、同じ時期での舞台上演について、安田は「『初日やね〜』『ファイトやで〜』『体気をつけや〜』って労わりあいました」とやり取りを明かした。

会見の最後には、楽しみにしている観客へ向け、「『髪結いの亭主』石黒バージョンを、一旦体に浸透してみてください。多分1回じゃ厳しいですね。2回じゃ無理だな。いっぱい味わってみてください。今回は東京だけじゃなく、大阪、広島の方にも足を運ばせていただきます。それぞれの劇場で芝居を楽しんでもらえたらなと思います」とメッセージを送った。

PARCO PRODUCE 2026『髪結いの亭主』は、9月28日(月)より10月25日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて、その後広島・大阪にて上演される。