
ミュージカル『シンデレラストーリー』は、「シンデレラ」を子供から大人まで楽しめるようにと鴻上尚史が書き下ろし、2003年にシンデレラ役に新人・大塚千弘、王子役に井上芳雄のコンビで初演、その2年後に王子役が浦井健治に引き継がれ再演が叶って以来、17年ぶりの上演となる。
ファンタジーとしての物語の大筋は変えることなく、魔法が解けたのにどうしてガラスの靴だけはそのままだったのか、なぜ家事ばかりしていたシンデレラが華麗なダンスを踊れたのか、などリアルに考えたら避けては通れない問題に回答していく。
今回の演出には、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」シリーズなどの2.5次元作品やノンバーバルパフォーマンスで注目を集め、21年には東京2020パラリンピック開会式の演出で世界に感動の渦を巻き起こしたウォーリー木下。2003年の初演、05年の再演時同様、音楽には松任谷由実コンサートの音楽監督で、一青窈、今井美樹などの作品を手掛ける武部聡志、同じく作詞は、歌手、俳優として数々の代表作を持つ斉藤由貴という強力タッグが、本作を彩る。
シンデレラ役には、舞台で活躍中の加藤梨里香、初舞台で抜擢された新人女優・水嶋凜がWキャストで主演を務める。
王子役には、現在は日米に拠点を置き、ハリウッド進出を目指す大野拓朗。
そして、廷臣・ピエールを入野自由、王妃・ガードルートを彩吹真央、王を吉野圭吾、シンデレラ継母・ベラドンナを佐藤アツヒロが演じる。
さらに、シンデレラの義姉・オードリーに、お笑いコンビ“おかずクラブ”のゆいP、同じく義姉・ジェシカをまりゑ、ミスターマウチュを川原一馬、ネズミのチュウ太郎を和田泰右、チュウ1役にHomer、チュウ2役に夏目卓実、と異色の顔ぶれが揃う中、シンデレラを助ける魔法使い役は、モデルとして世界的に活躍し、今回が初舞台出演となるアンミカが演じる。
若いシンデレラたちを様々なジャンルから集結した個性豊かな俳優陣が支え、観客を夢と希望の世界へと導く。
公演初日を控え、公開ゲネプロ(シンデレラ役:加藤)と取材会が行われた。
取材会には、加藤、水嶋、大野、佐藤、アン ミカが出席。
今の心境を聞かれると、シンデレラ役の加藤は「緊張とかワクワクとか色々あるんですけど、本当に華やかで気難しいこととか、現実を全て忘れられるくらいすごく華やかで素敵な世界観になっているので、早く皆様にお届けしたいなという気持ちでいっぱいです」とかなり手ごたえがある様子。
Wキャストとして同じくシンデレラを演じる水嶋は、「色んなことが重なりすぎて良く分からない感情ではあるんですけど、今日(の稽古で)、梨里香さんがやってるのを見て、全てが組み合わさったらこんなに華やかになるんだっていうのに気づいて、私も早く見たいですし、皆さんにも見てほしいと思いました」とコメント。
シンデレラの継母・ベラドンナ役の佐藤は「素敵なシンデレラストーリーになっていると思います」と話し、かなり個性的な衣装について司会から触れられると、「ママ綺麗!」とシンデレラたちから声が上がり、「ありがとう」と笑みを見せる一幕も。「舞台では騒いでいるので、盛り上げて頑張りたいと思います」と語った。
王子役の大野は「僕は、びっくりするほど緊張しなくて」と心境を明かす。「ただただ本当にこの楽しい世界を早くお客さんにお届けして、たくさんの笑いと感動に包まれる空間に、僕もステージ上で皆さんの反応を楽しめたらなと思っております。僕自身も見ていて『ああ、シンデレラ可哀想!』ってちょっと泣きそうになっちゃったりとかして……」と、継母たちからいじめられるシンデレラに心を痛めながら、「でもその分、王子様と結ばれる時に、見てくださっている皆さんに『あの王子様と結ばれて良かったね』と、より感動してもらえるように、素敵に演じられるよう……ちょっとそう思ったら緊張してきました(笑)。素敵に王子様を出来るように頑張りたいと思います」と意気込んだ。
そして、魔法使いのアンミカは本作が舞台初出演。「50歳の新人ですから」と前置きし、「皆さんのリハーサルとか見て、本当毎日盗ませていただきながら実践させていただいているんですけど、本当にベラドンナが悪いんですよ!だからもうすごく感情移入がしやすくて、シンデレラを応援したくなるし。閉塞感がある世の中だったり、色んな人の人間模様が、芸能界でも色々ありますけど、人間って悪いもやきもち焼きも含めてお茶目やなって。登場人物それぞれを愛することが出来て、思いっきり笑いに昇華出来て、人生ってええなって思ってもらえるミュージカルやと思います。そこに私も、皆さんの心に希望と明るさの魔法をかけさせてもらいます」と、作品について語る。「ちょっと魔法の呪文にヒントがあるんで、そこも楽しみにしていただけたらと思います」と、自身の見どころについても明かした。
今回、シンデレラ役がWキャストということで、お互い意識し合ったりしたのかという問いかけに、加藤は「お互いに影響をもらい合っていて、全然違うシンデレラになっているので、違う作品に見えるのかなと思います」とそれぞれの個性が出ているとのこと。
一方の水嶋は、今回初舞台で初主演。加藤と共にシンデレラ役を演じることについて、「プレッシャーはあるんですけど、お手本が居てくれるからやっていけるというか。『こうやったらいいんだ』とか『こうやってここをちょっともらえばいいんだ』とか、自分の役を客観的に見られるのがすごく大きいと思いましたし、本当に居てくれて良かったと思いながらやっています」と、加藤の演技を見て参考にした部分があったようだった。
主演という立場については、「よくわからない感情です。自分が抱えているものがどれぐらい大きくて大事でプレッシャーがあるものなのかっていうのも最近徐々に分かってきたって感じですし、最初はもう実感が湧かなくて、ただ『梨里香さんの背中を見なさい』って言われて『はい!』みたいな感じで見てて。なので、本番が始まる前に実感出来たことで一歩進めた気がしたというか、本番で素敵な私らしいシンデレラと梨里香さんのシンデレラを見ていただきたいなと思いました」と、稽古を重ねる中で主演の実感が湧いたとのこと。
そんな水嶋は、共演者からたくさんアドバイスをもらったようで、「『今のはもうちょっとこうした方がいいよ』とか、アツヒロさんも、『今のここもうちょっとはっきり動いたほうがいいよ』とか、細かいところまで皆さんが具体的に教えてくれるので、時間を割いていただいて本当にありがたいと思いながら、全部書き留めてお稽古していました」と、稽古を振り返った。
アンミカも舞台初出演ではあるが、「ちょっと自分の地に近い役ではございますので気持ちは楽です」と笑みを見せる。
「本当に魔法が使えそうですもんね」という司会者からの言葉には「口に十と書いて叶うですからね。暗闇があるから光のありがたみが分かるとか、自分の言ってる名言がそのままミュージカルの世界でたくさん登場するんですけど、もう“梨里香パイセン”がね、どれだけ引っ張ってってくださるか!私が救わなきゃいけないシンデレラなんですけど、『こうした方がよかったです』とか動きを合わせるのに教えてくださったり、すごく頼りにしてます。 あの舞台では私がちゃんと頼られてます!」と、アンミカ節を炸裂させながら、女優として先輩である加藤に助けられたことを語った。
そんなアンミカの姿に、加藤は「もう存在自体が魔法使いなので、ものすごいハッピーオーラで、だからシンデレラもすごく勇気を出させてもらえるし、「自分を信じなさい」ってアンミカさんにおっしゃられるとすごくパワーがみなぎります!」と返答。
また、劇中では継母や義姉妹たちからいじめられるシンデレラの役柄について、「でも今回のシンデレラは負けないというか、諦めずくじけない、明るいっていうところを大切にしているのでポジティブです」(加藤)、「いじめられていることを苦に思っていないというか、私は私で日常を楽しくやってるわって感じなので」(水嶋)、「それがまた(ベラドンナたちを)イライラさせるようです(笑)」(加藤)と、本作ならではのシンデレラの姿が見られるとのこと。
佐藤も「色んな物語がある中で、今回のシンデレラストーリーのシンデレラは、その状況にいつも前向きに歩いて行く姿が描かれているので。で、ベラドンナ一家はそれに対して何度も何度もやってやろうみたいな、一緒に生きているというか、そういう空間になっていると思います」と、語った。
そして、この舞台の作詞を、水嶋の母親である斉藤由貴が担当していることも話題になっている。そのことについて水嶋は、「最近思ったんですけど、アンミカさんの歌の中で『自分を信じなさい、どんなに無力な時も』って歌詞があるんですけど、その時になんとなく背後に母が見えるようになってきました。この歌詞そうだ、書いてるんだ!って」と、明かす。
「確かにあのシーンの時ウルウルしてるもんね」と言うアンミカに、水嶋は「なんかすごく重みを感じるように最近なりました」と、心境の変化を感じた様子だった。
アンミカはSNSでも親子のそっくり具合を語っており、「一緒に演じててもなんですけど、お客さんから見た時の伏目がちの顔の角度とか、声もお歌を聴いていただくとものすごい『初戀……!』って出てきます」と興奮気味に語る。
水嶋は「ありがたいです。「本当に綺麗よ、凛ちゃん」っていつも言っていただいてます」と恐縮していた。
また、母親から何かアドバイスをもらったのかという質問には、「細かいところですかね。『あなたは歯がすごく出ちゃうから歯茎隠しなさい』とか(笑)。細かい顔的なアドバイスが多いかもしれないです」と明かした。
会見の最後には、「この秋、最高にハッピーになれる作品になっていると思いますので、ぜひ皆さん劇場に足をお運びください。お待ちしております!」(加藤)、「待ってます!」(水嶋)と、メッセージを送った。
ミュージカル『シンデレラストーリー』は、2022年9月6日(火)から東京・日本青年館ホールを皮切りに、愛知・福岡・大阪にて上演される。