――デビューのきっかけは?
高校在学中に、現在所属しているホリプロにスカウトされたことがきっかけです。
――芸能界には興味を持たれていたんですか?
芸能界に全く興味がなかったというわけではないのですが、中学卒業後、東京の高校に通うために上京し、普通に通学をしていたんです。そんな時に、私の通う高校の近くにホリプロの事務所があって、学校帰りにスカウトをされました。元々、東京に行って何か好きなことができないかなぁ、と漠然としたものを持って出てきていたので、こういう世界もあるんだなぁと思い始めて。でも、まさか自分が今こういう風に芸能界でお仕事をしてるっていうことを、当時想像はしていなかったですね。

――実際に芸能界に入って、戸惑ったことはありませんでしたか?
最初はいっぱいありました。初めてメイクをした時っていうのはよく憶えてますけど、人にお化粧してもらうっていうことが初めてだったし、爪から足先まで『わぁ!!お姫様みたい。』って(笑)。迷いは無かったけど、たくさんの驚きがありました。こんなことまでしてくれるんだぁっ、て。それとは逆に、人に見られる仕事なだけに、立ち居振舞いや話し方について、マネージャーさんに教えていただいたのですが、素直に『ハイ』って言えるところもあれば、『何でなんだろう?』と思うところもありましたね。
――そうですよね。全てが初めての経験になるんですから、戸惑いはありますよね。
あとは、初めて自分の名前を『芦名星です。』って言った時は、本名じゃないので、慣れるまで恥ずかしくて。「相手からするとそれが自分の名前なので何も恥ずかしいことはないんだよ。」と言われるんですけど、やっぱりうまく言えなくて、最初の頃はご挨拶をちゃんとできなかったり。それでもがんばって『芦名星です。』って、言うんですけど、聞こえないような小さな声になってしまって。「どうしたの?」みたいに心配されたりしていましたね(笑)。
――最初のお仕事のことは憶えていますか?
まず宣材写真を撮らなければならなかったので、一番最初のお仕事は宣材写真だったと思います。この撮影で、初めてカメラを向けられたんですが、その写真を今見ても、緊張感がすっごい出てるのがわかるんです。「笑って」とか「ちょっと微笑んで。」って言われて、『どうしていいのか』、みたいな雰囲気が表情に出てます(笑)。
――その後、いろいろなお仕事をされて、映画にも出演されましたが、『シルク』のヒロインとして、海外の錚々たるメンバーも出演されている中で演技をするというのはいかがでしたか?
オーディションで決まったんですが、本当に『まさか!』という感じでした。奇跡が起きたという気持ちと、私で大丈夫なのかなという不安もありました。撮影自体はすごく良い経験になりましたし、夢のような時間でした。海外独特の雰囲気や、有名な役者さんがいらっしゃって…。当時は、あまりにも突然ことで、どちらかと言うと何もわからずに必死だったので、役の大きさや、どれだけ凄い作品に参加しているかが自分では判断できなかったんですが、もし、今がその状況だったら凄く緊張していたかもしれないです。経験がまだ浅かった分、自分の役をどう演じるかということばかりでしたし、ただその場の雰囲気を楽しんでいるうちに、馴染めたという感じですね。
――これまでお仕事をされてきて、一番辛かったっことはありますか?
あまり辛いとか思ったことはなくて、基本的にそういうことが自分に対して心地良くなっていくタイプなんです。あっ、最近ありますね(笑)。マネージャーさんが私のことを24時間働けると思っていらっしゃるので(笑)。24時間のスケジュールを組んでくるんですね。そうするとですよ、睡眠時間っていうのがないんですよ(笑)。それを3日間ほとんど寝ずに稼動した日があって(笑)。スケジュールを全部紙に書いてもらって、それを見ると「出来たら(仮眠)」みたいな。あとは、「30分に現場が終わる予定なので37分の電車乗りたい…なぁ。」とか(笑)。「やるしかない!がんばろう!」って言われて(笑)、『わかりましたっ!』って。現場が終わって、動きながら脱いで、着替えて。ダッシュで行って間に合った、とかありましたね。でも72時間稼動、あれはもう“魔の3日間”といって、マネージャーさんと今でこそ笑いながら話しますけど、当時は体力的に辛かったですね(笑)。
――それは大変ですね(笑)。なにか気分転換はされていたんですか?
マネージャーさんには、1日1回お風呂にだけは絶対入りたいって伝えてるんです。お仕事が忙しくて眠れなかったりした時、やっぱりどこかで気持ちをチェンジできる瞬間が欲しくて、必ずお風呂にだけは入りたいって思うんです。
――では、この仕事をしていて良かったと思う瞬間は?
雑誌・映画・舞台・ドラマ…どんなことをやっても、悩んだりっていう時間はありますよね。でも、それ以上に、その作品のスタッフの方とたくさんお話をしたりして、完成したモノを見た時は、良かったと思います。あとは、多く悩んだ作品になればなるほど、やり遂げたときに感じる感覚があって、それに浸ってる時って、『あぁ、やっぱりこの仕事好きなんだなぁ、うん、すごい大好き!』って思えるんです。
――本当にお仕事が好きなんですね。
はい。仕事をしている時が一番楽しいです。普通に生活をしていて、感情って、年齢が大きくなればなるほど動きにくくなったり、続かないって思うんですけど、私が今やってることって、悩んでみたり、怒ってみたり、泣いたり、笑ったりってことがとてもたくさんある仕事なので、そういうこともすごく刺激があって好きなところの一つなんだと思います。

――さて、現在公開中の映画『鴨川ホルモー』のことをうかがいます。とてもオリジナリティのある作品だと思いますが、最初に脚本を読んだときはいかがでしたか?
脚本を最初に読むときはいつも、自分の役に関しての話を先に読むのですが、正直、私の役に関しては難しいなと思いました。意味がわからないというか、ちょっと掴みどころがないというか。他の人たちはみんな、容姿からキャラクターが割とはっきり想像できるものだったんですけど、私の役はあまりにも普通過ぎて、いい子なのか悪い子なのかすらわからない…って思いました。早良京子という役に関して、どういう風にやっていったらいいかたくさん考えました。
――難しいなと思っていたを早良京子演じるにあたって、どういう役作りをされましたか?
台本を読んですぐ、衣装合わせで、その時初めて監督にお会いしたんですけど、その時に『この子って、悪い子なんですか?』って聞いたら、「すごくいい子なんだよ。」っておっしゃったんですね。でも私の中では、周りがみんなキャラクターが凄く強いので、どうにかして早良京子にそれ以上の色を付けたくて、『普通の女の子じゃつまらない、悪い子にしたいんです。』って話をしたんです。
――芦名さんの考える悪い子、早良京子について教えてください。
ほかの出てきているキャラクター、みんなそれぞれ純粋なんです。別に曲がってるわけじゃなくて、みんなそのままの性格で、言われたままに真っ直ぐ行ける精神を持っているだけで、ひねくれてる子は一人もいないんだって思いました。その中で、じゃあどうやって早良京子を悪い子に見せようって考えた時に、彼女がとっても人より純粋なんだって、自分の中で思ったんです。一見ジコチューに見えるけど、彼女が芦屋くんに振り向いてもらいたいがために必死に起こした行動が、他の人に対して“迷惑をかけてる”とか、“この人を利用しよう”ってなってしまうのは、それは結果的にそうなってしまったことであって、彼女の純粋さゆえのことだと思えるんです。
――腹黒い女の子じゃなくて、真っ直ぐ生きてるんだけど、周りからするとすごい「迷惑」みたいな(笑)。
そうそう、『何なのこの子?』みたいな。女の子からは絶対嫌われるっていう(笑)。でも蓋を開けてみればいろいろ考えて、真っ直ぐで芦屋くんのことしか見えてなくて、みたいな。そんな風にできればいいんじゃないかなと台本を読んでいて気づいて、そのことを監督に話したら、「思うようにやってみなよ。」ということになって。現場でもよく話をしたし、決めて撮るというより、その気持ちだけを持って、あとは周りの雰囲気を見ながらとか、ここでこんなことできるかな、とか話をしながらやっていった感じです。
――ちょっと小悪魔的であり、純粋がゆえに猪突猛進な早良京子ですが、リンクする部分はありましたか?
あの役はテンションや声のトーンもかなり上げてやっていたので、私の中で、あんなに役を作り込んだのは初めてだったと思います。あまり自分と近いところがなくて、最初戸惑った部分がありました。でも、早良京子が芦屋くんに向ける真っ直ぐな気持ちは自分にもあって。だけど、自分だったらこうするのに、というのはありますね。ただ、彼女に似てるかって言われると真逆のところにいるかもしれないですね(笑)。