エン*ゲキシリーズは役者・池田純矢が自身の脚本・演出により《演劇とは娯楽であるべきだ》の理念の基、誰もが楽しめる王道エンターテインメントに特化した公演を上演するために作られた企画となっており、シリーズ6作目となる最新作では、“即興音楽舞踏劇”と題して、即興で音楽を奏で、舞うという挑戦的で革新的な試みに挑戦する。

本作で主演を務めるのは、ストレートプレイからミュージカルまで幅広く活躍し、高い歌唱力とキレのあるダンスのみならず、繊細かつ力強さのある演技力で高い評価を得ている中山優馬。
共演には『宇宙戦隊キュウレンジャー』の主演で注目を集め、ドラマ、映画、舞台とジャンルを問わず活躍中の岐洲匠、本作の大規模オーディションで類まれな歌唱力と透明感を示し、初舞台にして抜擢された夏川アサ、声優として青年から二枚目まで様々な役柄を演じ、今作が久しぶりの舞台への出演となる野島健児。
そして、俳優としての活動をはじめ、舞台作品の脚本を担当するなどマルチな才能を発揮している池田純矢、エン*ゲキシリーズお馴染みのメンバーで、凛とした佇まいと高い演技力で舞台を中心に活躍している鈴木勝吾。さらに、圧倒的な存在感と硬軟自在の演技力で日本のドラマ・演劇界では欠かせない存在の升毅といった、華と実力を兼ねそなえた多彩な顔ぶれが集結した。

フォトコール後に行われた取材会には、中山、岐洲、夏川、野島、池田、鈴木、升が出席した。

主人公の青年・テオを演じる中山は、初日を翌日に控えた心境を聞かれ「この作品は即興音楽舞踏劇という新ジャンルと言ってもいいんじゃないかという作品なので、いつもの舞台本番前というような気持ちとはちょっと違うというか、どんな化学反応が起きるのか、その即興性の部分はこの舞台上でしか表現出来ないことだったりもするので、今までの準備の仕方がちょっと違うというか、即興でちゃんと表現出来る自分のコンディションを整えていこうということですね。非常に楽しみです」とコメント。

本作のポイントとなるのが”即興”ということで、他の舞台との稽古場での違いについて、「即興で何かを表現出来る状態を作る稽古っていうのが結構あったと思います。ピアニストのハラ(ヨシヒロ)さんとの見えない糸でのコンタクトというか、そういったものであったりとか、キャストの皆さんとの相性というかチームワークというかそういうのをどんどん高めていったっていう稽古です」と、この作品ならではのアプローチがあったと話す。

自身も役者として出演しながら演出・脚本を手掛ける池田。
新ジャンルとなる”即興音楽舞踏劇”を思いついた経緯については、「思いつき自体は本当にシンプルで、こういうことが出来ないかなというのは常日頃考えていたんですけど」と話しながら、「それで優馬との話の中で、例えば即興で歌って踊るみたいなことが出来れば、いわゆる爆発的に120点を叩き出す俳優になれるんじゃないかっていうところからのスタートではあったんですけど、今はこの作品においてこの即興性というのは無くてはならない存在だったなと、今改めて認識している感じです」と続ける。
「単純にストーリーとしてもそうですし、自分が表現したいものを突き詰めた時に、その即興性というものが大きく重要なファクターになっているんだなというふうに認識しました」と、即興性の大きさを実感したようだった。

池田演じる太子・ゲルギオスの傍にいる最高文官である宰相・バルツァを演じる升は即興劇は初めてだと話し、「いやあ……見たかったですね。始め、純矢くんに『こういう舞台をやりたい』って聞いた時に『ああ、それ面白そうだね』って見に行くつもりだったんですけど、出る側になってしまいました(笑)」と語る。
実際に即興劇をやってみた感想は「やっぱり若い方たちっていうのはどんどん変化していくっていう。僕なんか染みついているものがあるんで、それを取っ払うのがなかなか大変だったりしますし、今必死でついて行ってます」と、若手のキャストたちに感心させられている様子だが、「いい歳して割と新しいことが好きだったり、今までやってないことをどんどんやりたいタイプの人間なので、そういう意味では気持ち的にはすごく順応できていると思います」と自身も手ごたえを感じているとのこと。

領主の娘でテオと婚礼を迎えるエウリデュケを演じる夏川は、本作が初舞台。
「初めての舞台がまさか即興で歌って踊って、っていうなかなかハイレベルだなと自分でも。ただ、すごく挑戦させていただいていますし、このような大きな舞台に立てるのも私自身初めてで、あんまり大きな役を掴めてなかったので、ようやく掴んだこの役がエウリデュケというヒロインで。かなり経験も浅いのもあって皆さんにすごく助けていただいていて、本当に支えられながら、今23歳なんですけど、23年間分の殻みたいなのを突き破って、裸の心で演じられたらと思っております」と意気込む。

「どなたからどんな支えがあった?」と記者から問いかけられると、池田が「僕に怒られすぎて嫌いになってない?」と心配する一幕が。
「(稽古中)100回くらい泣かせてますよ」と明かした池田だったが、それに対して夏川は「でも本当に私のことが嫌いだったら絶対そういうことはしないかなと思いますし、心から向き合ってくださったから、私も頑張ろうと思えて、本当に感謝してます」と感謝を伝えた。

岐洲が演じるレオニダスは、エウリデュケの従者で奴隷でありながら、実は王家の血を継ぐ王族の身分だったことが判明する難しい役どころ。
自身の役について聞かれると「自分がどれだけ自由に立っていられるかっていうのが僕はすごい大切だと思ってて、ここまで自由になったことがなくて、アドリブであったり即興劇であったり、挑戦できる幅が大きすぎて……分かんないです」と素直な感想が。「とりあえずでも、自由でいることは意識しています。力を抜いて、縛られない、この位置に動くとかそういうのを全く考えずにただ自由である気持ちだけを持っています」と心持ちを明かした。

テオとエウリデュケの幼馴染のアデルを演じる鈴木は、池田と何度も共演している間柄だが、これまでの作品と本作のちがいについては「やっぱり即興で音楽を作っていくっていうのは、まず“即興”って言葉の概念探しから稽古初日に始めたっていうのがあって、それを考えているとお芝居って本来何?俳優って何するべきものなんだろうな?ってまた一から考えたというか、そういう稽古の日々で、純矢の考えていることであったり、舞台の板の上にいる相手役の俳優の方とどういうふうに関わっていくのかっていうのを一から考えさせられるというか、そういう稽古期間でしたね」と稽古期間を振り返る。「ピアニストのハラさんも含めて音楽とどう共存するのかっていうことを、やっぱり歌わない作品もそうですし、ミュージカルと言われる作品でもそうだったんですけど、支えてもらったりリードしたりっていう何か不思議な感覚でやらせてもらってます」と話した。

そして、領主でエウリデュケの父役の野島は、「普段私は声優としてお仕事をさせていただいているので、こういった舞台のやり方だったり、稽古の一つ一つをとってもなかなか出来ない経験ですので、正直、初めは戸惑いましたし、一回お仕事で純矢くんと一緒になった時に「出ませんか」ってオファーをいただいてすごくありがたくて。やっぱり僕も声優っていう仕事の狭い枠の中から一つ飛び出たことを挑戦していきたいなとちょうど思っていた時にお声がけいただいたのですごく嬉しくて『ぜひ出させてください』ってお願いしたんですけど、ちらっといただいた紙に“即興音楽劇”って書いてあったのは見なかったことにして(笑)。気のせいかもしれない、あれは見間違いかもしれないなてって思っていたんですけど、本当に皆さん即興でやっていくっていう姿を見て、すごく刺激的ですし、役作り一つ一つにしても、ゼロから作っていく作業というのを体感させていただいて、僕にとっても、結構な年齢になってるんですけど、それでも初めてのことづくしですごく勉強させていただいています」とオファーの経緯から声優業とはまた違った経験だと語った。

即興やアドリブは得意かどうかという質問に中山は、「得意か不得意かって言われると、得意じゃないんでしょうね」と答えながら「でも即興でこれをやってやろう!みたいなことでこの上に立つわけではないので、その瞬間に出てくるものを信じて、それをお届けするっていう感じなので。それは自分が出すものですけど、作品の中で皆さんからいただいたものを自分の力を乗っけてそのまま捧げるというような感覚なので、アドリブに対応しているとかっていう感覚はまるでないですね」と解説。
「今日もフォトコールで色んなシーンやらせていただきましたけど、ここは即興でとか、ここは決まっててとはあえて言わないですけど、今日の歌もほとんど聞いたことない、初めて聞いた歌ばっかりでした」と明かす。中山の歌唱パートも即興部分だったようで、「皆さんそういう持ち場っていうのがあって楽しいです」と笑顔を見せた。

「フォトコールやってみてどうですか?」という記者からの問いかけには、中山は「逆に皆さんに聞きたいんですけど!」、池田も「分かんないんだよね、やってる側はね!やってる側はもう即興だから、果たして今どういう音でお届けしているのか全く分からないんですよ!やったら次のために忘れなきゃいけないし……っていうのがあって」とこの作品ならではの手ごたえの感じづらさがあるようで、「どうでした?即興っぽかったですか?」と池田から逆に質問が。
記者から「即興か分からなかった」と返答があると、「じゃあ成功です」と嬉しそうな池田。

フォトコールの内容について池田は、「ただいまお届けした歌に関しては、全即興です。僕が歌った部分に関しては、メロディー、歌詞、それから曲も含めて即興です。即興で鳴る音に合わせて即興で歌いました。彼(鈴木さん)が歌った歌も、優馬くんが歌った歌も即興ですね」と明かし、客席がどよめいた。

また、中山と池田は映画で共演経験がありプライベートでも交流があるが、舞台では初共演となる。
改めてお互いの印象について問われると「やんちゃな人だなーと思います」とニヤリと笑う中山。
それに対して「違うんですよ!僕まだ役者として板の上に立つのが、なんだったら今日もちゃんとやるのが初めてに近くって。稽古まだ僕一回しか出てないんです、ずっと演出やってたんですから」と弁明する池田に、升も「本当迷惑な話ですよ!」と冗談で乗っかる。

フォトコールではゲルギオスとバルツァのシーンも公開されたが、そのシーンについても升は「稽古場で一回だけ本人とやったんですけど、その時とも当然違います」と明かす。
「何回も稽古している感じがすごくした」という記者の言葉に、「それはもう彼の器ですよね」と返す升と、「いやいやいや…」と恐縮する池田の姿が。
「でもそれがなんかやってる方もすごく新鮮で楽しかったりするんで、『あ、今のところちょっと即興で誤魔化したな!』みたいにバレないようにしなきゃいけないなと。バレなければ『どこが即興だったの?』が正解だとなのかなっていう気がします」と続けた。

改めて中山が思う池田の印象については、「こんな企画思いついて本当にやろうとするんですもん。やんちゃな人だなと思いますけど、やっぱり知識量もすごいですし、その分たくさん考えられているので、かなり刺激はもらっていますし、面白い人だなと思いますね」と語る。

一方池田から見た中山の姿は、「本当に一俳優として素晴らしいなというところですよね。一緒にお仕事をするっていうとかなり久々にはなるんですけど、その間にすごく色んなことがきっと本人の仲にもあったんでしょうし、色んなアプローチが変わったりしたとは思うんですが、本当に演出家として心強い主演だなと思いますし、友人としても誇らしいなと思いますし、一緒にものづくりをしていくっていう関係としてすごく健康的だなと思いました。ちゃんとディスカッションが出来て、且つ、お互い対立も恐れずに思ったことをちゃんと吐き出し合えるというか、高められるというようなそういった間柄になれたかなと思いました。
その上で、何度か言っていますけどこの演劇界をこれから先牽引していく存在になるんだろうなというふうに純粋に思う素晴らしい俳優さんの一人だと思っております」と称賛。

その信頼があるからこそ、この作品が実現出来たのでは、という記者からの言葉に「そうですね。彼の中に培ってきた、即興ってどうしても急に思いついたことをやるだけだと稚拙なものになってしまいますから、高クオリティで商品としての価値がある状態の即興っていうものをお届けするためには自分の中の蓄積からしか生まれないと思うんですよね。そういう意味では、彼が今までどれだけ努力してきたのか、その人生そのものが詰まった作品になっているんじゃないかなと思います」と答えた。

また、一番見てもらいたいシーンについての質問では、「分からないんですよ。即興なので!その日によるんです、見どころが!変わるんですよ!」とまたもや本作の特性から語りづらいと話す池田。

中山は、「今見ていただいたアザリの丘のシーンというのは本当に自分も気に入っているし、多分カンパニーの人全員が好きなシーンだと思うんですが、キャストの皆さんが身体を使って風景を全て見せていくっていうそれはヒューマンパワーがすごいなって思いましたね」と語った。

明日の初日に向け、代表して中山からメッセージが。
「こんな時期だからこそ、今この瞬間に目の前にあるものとか、そういったものを大事にしなきゃいけないなと思う瞬間が自分もたくさんあります。この作品は、この劇場で瞬間的な“今”というのが繰り広げられる作品なので、本当にこの劇場のこの瞬間のこの時間にしかないものっていうのを必ずお届け出来ますので、その新鮮さをたのしんでいただけたらなと思いますので、劇場でお待ちしております」と会見を締めくくった。

エン*ゲキ#06 即興音楽舞踏劇『砂の城』は、10月15日(土)から30日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて、その後11月3日(木・祝)から13日(日)まで、大阪・ABCホールにて上演される。