作家として芥川賞をはじめ数多くの賞を受賞し、劇作家としても多数の作品を発表した昭和を代表する作家・劇作家・安部公房。
PARCO劇場では、1973年のオープニング記念公演『愛の眼鏡は色ガラス』(当時の名称は西武劇場)をはじめ、安部公房の作・演出作を数多く上演してきた。そして、43年ぶりに安部公房作品を上演することになり、選んだ演目は『幽霊はここにいる』。1958年に千田是也演出、田中邦衛主演で、俳優座劇場にて初演、1958年度岸田演劇賞を受賞し、翻訳版がヨーロッパなど世界各国でも上演され、国内でも度々上演されている傑作戯曲。
「前衛的」「不条理」「ナンセンス」といった言葉で表現される安部公房らしさに満ちた喜劇的作品であり、コーラスなど音楽的要素も効果的に取り入れた祝祭感やエンターテインメント要素の強い作品でもある。

本作の主人公で、幽霊を連れており会話ができるという謎の男・深川啓介を演じるのは、PARCO劇場初登場となるジャニーズWESTの神山智洋。
主人公・深川を取り巻く登場人物たちには個性豊かなキャスト陣が顔を揃えた。
深川が出会う怪しげな元詐欺師・大庭三吉には、硬軟幅広い役を変幻自在に演じ分ける八嶋智人、深川の幽霊話を信じようとしない新聞記者・箱山義一には、数々の舞台で確かな演技力を発揮する木村 了、三吉の娘・大庭ミサコには、昨年初舞台にして初主演を務めた期待の新星・秋田汐梨、三吉の妻・大庭トシエには、少年役から主婦役まで幅広い役をこなす実力派女優・田村たがめが演じる。
さらに、堀部圭亮、真那胡敬二、福本伸一、伊達 暁、まりゑといったベテラン勢・実力派が脇を固め、シュールでナンセンス、だけどどこか夢夢しい、不思議な物語を届ける。

そして、今回解禁したビジュアルでは、神山をはじめとするキャスト陣の顔が、「死者」と「生者」のカーニバルよろしく黒い人影の中に浮かびあがり、人間のようにも幽霊のようにも見える朧げな姿や、人間が持つ多面性を表現している。

「死」がかつてない身近さと、実感のなさを伴うようになった現代で、人は「死」とどうやって向き合い生き続けていくのか。実体の見えないものでさえ商品になり得るいま、この現代にも通じる物語に期待が高まる。

パルコ・プロデュース2022『幽霊はここにいる』は、2022年12月8日から26日まで東京・PARCO劇場、2023年1月11日から16日まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。

<物語>
元・上等兵で、いつも幽霊を連れているという不思議な男・深川啓介(神山智洋)。その幽霊は生きていた頃のことを覚えておらず、深川は幽霊の身許捜しをしていた。とある街にたどりついた深川は、うさん臭げな男・大庭三吉(八嶋智人)と出会う。大庭の妻・トシエ(田村たがめ)と娘・ミサコ(秋田汐梨)は不審に思うが、大庭は、深川が幽霊と会話出来るということを知ると、これはいい商売になると考え「死人の写真高価買います」というビラを町中に貼り、幽霊の身許捜しを兼ねた珍商売を始める。それを怪しむ新聞記者・箱山(木村了)は彼らの動きを探るも、地元の有力者や町全体をどんどん巻き込み、一大事業に発展していく・・・・・・。