――映画「半分の月がのぼる空」の公開を迎えられて、現在の心境はいかがですか?
最高ですね。本当に幸せです。
――「半分の月がのぼる空」の出演が決まった時、どのような気持ちでしたか?
まだ台本が上がってないときにお話をいただいて、原作を読みまして、即、やらせていただきますとお返事しました。
――裕一はどんな少年ですか?
伊勢で生まれ育った、17歳の高校生です。映画では監督と話し合って、裕一のもっているピュアな部分をより意識して役作りしました。

――三重県で1ヵ月のオールロケだったとのことですが、メインのロケ地・伊勢はどんなところでしたか?
本当にあったかい街で、大好きになりました。懐かしい気持ちになるような、何気ない街の風景がすごくあったかくて、街の方々もとてもやさしくて。三重県という土地がものすごく映画に力を与えてくれたと思います。
――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?思い出深いエピソードがありましたら教えてください。
和気あいあいと、でもしまるところはしまってっていう感じで、とてもいい雰囲気で撮影できました。 一つ大変だったところだと、撮影の頃、ちょうどインフルエンザが流行ったときだったんですね。今回は、実際の病院を使って撮影させていただいていたので、伊勢でインフルエンザの患者さんが出たら、撮影ができなくなるかもしれないという事でみんな少し不安な時期もありましたが無事に撮影できました。
――深川栄洋監督はどんな監督でしたか?
今の映画界でもあまりいないような監督なんじゃないかと思います。本当に映画への愛情をすごく感じましたし、映画が大好きなんだなと思いました。ワンシーン、ワンカット、1分、1秒、絶対無駄にはしないし、とにかく僕らにぶつかってきてくれるんですよね。だけど、常に寄り添ってくれる監督でもあるんです。僕は、シーンによっては撮影前にあまり食事ができないときがあって、それを監督が聞いて、栄養ビスケットを買ってきてくれて、僕も食べないからってそれを半分いただいたりして・・・。「60歳のラブレター」のときも、綾戸智恵さんが坊主にしたときに、一緒に坊主にしたって聞いてますし、ホントに愛のある監督ですね。

――里香を演じた、忽那汐里さんはどんな方でしたか?
やっぱりポッキーのCMの印象が強かったので、最初会ったときは、えらく落ち着いてるなと思いました!いざこうやって一緒の現場にいると元気なところもたくさんあるんですけど、キャピキャピしてるとは少し違って、どこが太い芯が通ってて、すごくピュアで、まっすぐで・・・。画面を通して見る汐里ちゃんは、人にはない、独特の雰囲気があります。伊勢という初めての場所でも、自然とその場に馴染める子なんだなと思いました。ナチュラルな子ですね。
――夏目役を演じた、大泉洋さんはどんな方でしたか?
おもしろかったです(笑)。大泉さんがいらしてから、現場の雰囲気が変わりましたし、大泉さんのまわりには笑顔が絶えなくて、人を引き付けるパワーをものすごく感じました。夏目というキャラクターを大泉さんが演じることで、この映画、何かあるんじゃないか!?ってお客さんを引き付けるし、シリアスな役どころでも大泉さんが演じると、それだけじゃないあったかいオーラがある、いい意味で原作とは異なった大泉さんじゃなきゃできない夏目だなと思います。

――池松さんから見て、裕一はどんな人ですか?実際演じてみていかがでしたか?
原作の裕一は仲間の中でリーダーだったり、客観的に自分を見ることができる大人な部分をもっていたり・・・というキャラクターなんですけど、映画ではちょっと違った描き方をしています。すごく人気のある原作なので撮影前は原作に忠実に、原作ファンの方々を裏切らないようにやらなきゃっ!って僕自身すごく気を張っていた部分があったんですね、でも監督は映画でしかできない「半分の月がのぼる空」を考えていて、原作の橋本先生も「原作を超えるものをつくってください!」とお話くださって、監督との話し合いの中で原作の裕一がもっているドジだったり、ピュアな一面をどんどん掘り下げていきました。裕一と里香の出会いから、里香を必死に守りたいと思う裕一の気持ちがよりよく形になったと思います。
――特に印象に残っているシーンはありますか?
いっぱいあるんですけど、何度も泣いてしまうのは、大泉さん演じる夏目がアルバムを見るシーンです。「半分の月がのぼる空」以外にも深川監督の作品には、必ずと言っていいほど、どこか情けない男が出てくるんです。「半分の月がのぼる空」に関しては、僕もそうだし、大泉さんもそうだし。そういう人間味溢れるキャラクターの描き方がシーンをものすごくいいものにしてると思います。
――もし現実に、里香みたいな性格の女性はどうですか?
無理です(笑)。それ毎回聞かれるんですよ(笑)。でも、なんて言うのかな、僕の今回のテーマのひとつとして、二人だけの空間を作りたかったということがあります。「半分の月がのぼる空」は、ずっと愛したかった少年と、ずっと愛せなかった大人が、半分ずつ、物語を作っています。僕の方の半分は、裕一が里香と仲良くなって、二人で病院を飛び出して・・・どこかこう、二人だけのおとぎ話みたいな、映画だからこそ描けるドラマがあって、聞いただけだったら「よくある話」と思われてしまっても、映画を観たお客さんはなぜだかわからないけどその二人だけのおとぎ話に入り込んでしまう、観てくれる人をグイグイひっぱっていけるような前半にしたかったので、何かこう二人だったから、こうできたんだよねっていう空気にしたかったんです。

――映画の見どころを教えてください。
公開までの宣伝の中で、正直僕自身も泣いてしまった話もしてきましたけど、決してその、はじめの段階からお涙ちょうだい的な映画にはしたくなかったし、単なる恋愛映画にはしたくないんです。それを超えたものをみんなで目指していたし、恋愛ものであり、難病ものっていうくくりにはなると思うんですけど、それだけではない、人が忘れかけているような、本当にいろんな感情がたくさんつまった、人間味溢れる、人間くさい映画になったと思います。なので、「ここを観てほしい、どういう風に観てほしい」とは決めつけたくないですし、抵抗せずにまず観てもらいたいですね。嬉しいことに最初抵抗があった人にも、観ていただいた方々には好評をいただいてますし、先行上映の伊勢でも動員新記録を出したと聞いています。そこまで公開前から愛される映画はなかなかないんじゃないかなと思いますね。
――最後にファンにメッセージをお願いします。
「半分の月がのぼる空」是非観てください。映画を愛するキャスト・スタッフが集まって作り上げた作品です。決して自己満足のような映画ではないし、観ていただいたら必ずどこか心動かされる部分があると思います。イチ日本映画ファンとして、こういう映画をたくさんの人に届けることができたらいいなと、撮影中からずっと思っていました。素晴らしい作品になりましたので、ぜひ映画館で観ていただきたいです!


スタイリスト:高橋由美  ヘアメイク:森香織