
原作は、玉梨ネコの「リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩」(TOブックス刊)。様々なメディアミックスを経て大人気作へと進化し、いよいよ初の舞台化となる。
初舞台化にふさわしい魅力的なスタッフ&キャスト陣が集結。演出は元吉庸泰、脚本は小林雄次が務める。
主人公・佐倉いろは役は、林翔太、VR世界でいろはと対決するズィーク役に、松本幸大という、盟友同士の熱い共演も見どころの一つとなっている。
さらに、ドール・ミコト役に西葉瑞希、ドール・9号役に搗宮姫奈。工房の主人・レトロ役は陰山泰、サラ役に岩田陽葵、ディアベル役に藤田玲という魅力あふれる俳優陣が本作を創り上げる。
初日に先駆け、公開ゲネプロ及び囲み取材が行われた。囲み取材には林翔太、松本幸大、陰山泰、藤田玲、演出の元吉庸泰が出席。
現在の心境を聞かれた林は「今日ようやく初日を迎えることができてホッとしております」と安心した様子で「千秋楽まで誰一人かけることなく、毎公演毎公演悔いなくしっかりと噛みしめながらやっていきたいと思います」と意気込む。
松本は「この作品はアート感が強く、他のストレートプレイの作品とはちょっと違う作品であると思うので、見に来てくださる皆さんのためにも、そして自分たちが作り上げてきた時間を大切にするためにも、皆さんとともに頑張っていきたいと思います!」と力強く語った。
陰山は「この作品結構あっちこっち削ったり作ったりっていう苦労しながら作り上げた作品で、その苦労の跡がちゃんと今日のゲネには出てたなと思ってます。なかなか珍しい感じの、でも僕はとても好きな世界観の作品なので、最後までもっと完成を目指して続けていきたいと思います」と苦労を明かしながらも気合いを見せた。
藤田は「僕らメインキャストもそうなんですが、この舞台は不思議な枠を使った演出を元吉さんが付けてくださったので、アンサンブルの皆さんの力が強い作品になってると思います。一人も欠けることなく最後まで高みを目指して皆で頑張っていきたいなと思います」と語る。
そして、演出の元吉は「ちょっと短めの稽古期間だったんですけれども、カンパニー全員でちょっと作り上げた作品になっておりますので、楽しんでいただければ幸いです」とコメントした。
本作では現実世界で人形を作れなくなった「人形師」の少年が、VRMMOゲームの中で、再び人形制作に取り組み、仲間との冒険、ライバルとのバトルを通じて、人形と向き合いやがて自分の人生の意味を問い直していく物語となっている。
キャスト陣へ「印象的なシーンや好きなシーン、セリフなどは?」という問いかけが。
林は、「正直全部好きなんですけど、最後の方で陰山さんと二人でしっかりと向き合ってお芝居するシーンがあるんですけど、あのシーンになると、いろはとしてもすごく久しぶりにじいちゃんに会えて向かい合って話せたというすごくホッとするシーンで。本当のおじいちゃんみたいな安心感があるので、稽古の時からすごくあそこのシーンが一番好きです」と陰山が演じる祖父といろはのシーンを挙げる。
すると「今日ちょっと、あれ?ひょっとしたら泣いちゃうんじゃないかって思ったんだけど」と陰山に言われると「ちょっと危なかったです」と笑う林の姿があった。
松本は「今の泣いちゃうんじゃないかって言ってたじゃないですか。俺泣いちゃったんですよ」とカミングアウトが。「ズィークってパッと見、悪にしか見えないような感じもあるかもしれないですけど、妹との別れだったりとか、すべての葛藤もあって、その中に自分の正義もある中で、自分にとっての敵だと思い込んでいるいろはに対して、現実世界で首を絞めているシーンで。これは別に泣こうと思って泣いたわけじゃなかったんですけど、高ぶってというか。それは稽古してきた中でそのシーン本当が好きなんですよ」と振り返る。「色んな感情があるなって自分の中でもあったんですけど、そこで林とお芝居をここまで濃くするのは初めてなので。林との芝居の中で今日、なんかこう一個掴めるというか感じるものが一つあったのででより一層好きなシーンになりました」と手ごたえを感じた様子。
陰山は「このお二人とは初めてなんですけど、シーンの味わいが全然違ってて、ズィークは容赦なくガシガシ来る感じがとても気持ち良くて、あのシーンもすごい好きです」と語り、さらに「やっぱり林くんも言ったおじいちゃんと孫のシーンは唯一リアルに感じられるシーンで、人形じゃないし現実の時間が流れてるそこは好きです。セリフもおじいちゃんとの思い出のシーンの中で『お前はその時に何を求めてる?』っていうのが僕の今回のキーワードなんですけど、そのことをしっかりと二人で確認し合うシーンなんです。あそこは大好きなシーンです」と、林と同じシーンを挙げた。
藤田も、いろはと祖父のシーンが好きだと話し、「あそこですごい好きなセリフがあって、おじいさんが『救われたんだよ』って言うのが、あそこにすべて詰まってるなって思う」と語る。さらに「僕、ゲーマーとして今回かっこいいなって思ったシーンが、二人のデュエルの時のパネルが二人の間に出てきて申請し合うのが、すごい胸アツでかっこいいシーンですよね!」と興奮気味だった。
今回、VR世界を表現するにあたってプロジェクションマッピングなどの映像技術を駆使せず、身体で表現する演劇的な演出を行っているが、その意図について元吉は「最初はネットの中でのウィンドウだったり境界線とかエリアが変わるのをどうやろうかなっていうのがあって、色々考える時に、ディアベルも言ってるんですけど『人の心は本物だ』っていうのがあって、人の心というのはネットの中でも現実でも変わらないじゃないですか。ネットのことで何かがあって、現実でも傷ついてしまったりとか、心が病むのってリアルだと思っていて。だからこそ境界線というものが簡単に飛び越えられるような、でも簡単には超えられないものであったりして、どういう風に表現しようか、映像を使うと一面的になるのが気になって嫌だなと思っていた時に、ドールズたちがアンサンブルでいらっしゃってて、彼らの人形劇にしようっていうのがコンセプトとして見つかったんですよ。そこからその境界線や扉やウィンドウを枠で全部やっていくっていうことで、人によって超えられたり超えられなかったり、時には断崖絶壁だったりっていうものを作るのにあの形が良いなと、美術の土岐さんと一緒に考えて、あの形になったのがラッキーだったなと」と解説した。
そして、同じ事務所の林と松本は外部舞台での共演が初となる。作品を通して感じるお互いの成長ぶりについての質問に、林は「外部の舞台でこんなにガッツリ演劇をやるっていうのは初めてだったんですけど、子どもの頃からお互い知っているので、良い意味でほんとに変わってなくて安心したというか。でもお芝居に対する姿勢っていうのを今回稽古場で見てて僕も刺激になったし、前日の場当たりでちょっとした衣装のトラブルがあって9号のベールが取れちゃって。アクシデントだったんですけど、それを見て逆にお芝居に使えるんじゃないかってことで元吉さんに相談して『こうしてみたいんですけど』って伝えていて、お芝居に対して最後の最後までしっかりと突き詰めていくっていう姿勢が見ていて勉強にもなるし刺激にもなりました」と語る。
そして松本も「良い意味で変わらないというか、僕にとって林は林だし、お互いが色んな作品を経験させていただいている中で、絶対的に成長していると思ってるんです。だから『大丈夫かな、林とのお芝居』とか不安は一個も無く、林は林のアプローチで来るから、僕は僕のアプローチだし、それが上手く絡むように元吉さんにバランスを見ていただくっていう作業だったなと思ってたんで、別に僕の中で特に変わったなっていうことはなく、楽しかったなっていうのはあります」と笑顔を見せる。「特に稽古場で『こうしようよ』って話してたわけじゃないんです。ただ、稽古の時にいきなりアプローチするんで、それに対して受けて、特に『○○やるね』とかは無く、もちろん『ここをこうしようか』っていうのはありますし、それは最初に元吉さんに話すんですけど、林も元吉さんと二人で話している時間もあったし、僕も結構話をさせていただいて」と会話は少ないながらもお互いに安心感を持って臨めたとのこと。
「昨日、帰る間際にスタッフさんに『お疲れさまでした』って言ったんですけどそこから1時間ぐらい話してたので、『本当にお疲れさまでした!』って帰って行ったんですけど(笑)。昨日も僕にとってはすごく大事な時間だったなっていうのはあったので、だから林と今このタイミングで共演させていただけたってことが感謝です。林は林で好きなので信じて、そして皆さんを信じてやるのみだなって思います」と前日ギリギリまで役について突き詰めていたという松本だった。
最後に、一人ずつ見どころとメッセージを語る。
演出の元吉は、本作を「選択肢の話」と語り、「何を選んでも間違いではなく、何を選んでも正解であり、結局何かをもらったり失ったりして、最終的にそれを振り返るんじゃなくて何を選んでいくかという話にしたいなというのがあって。それは稽古の当初から相談をしながら『この人は何を選んだんだろう』っていうのをこだわって作らせていただいたので、それを感じて、お芝居が終わった後に自分の選んだものに自信を持てるみたいな作品になれば良いなと思っております」と作品に込めた想いを熱弁。
藤田も「この作品は二人(いろはとズィーク)がどういう選択をしてこうなっていったのかっていう、本当に正解は無いと思うんですね。ズィークに正義はあるし、いろはにも正義があるし。そして今世の中でSNSだったりすごいアクセスしやすくなっていて、AIやチャットGPTだとか、そういうのが最近の時代は僕らに近づいてきてるので、今見るべき演劇なんじゃないかなと心から思いますので、ぜひお客様には数ある演劇の中ですけど”選んで”生で見てくれたらなと思います」とデジタル化している現代にぴったりだと話す。
陰山は「個人的にこの作品の隠れたテーマは想像力だと思っていて」とし、「ゲームの世界だから自分で色んなものを選べるという世界観ではあるし、その裏で芸術論を交わすおじいちゃんと孫がいて、お客さんはこの中に自分がどこに入り込めるか、そのための設定が随所にあって、多分あちこち引っかかるように作ってあるから、想像しながら見ていただければ良いなって思います」と呼びかける。
「僕にとってもこのズィークという役は初めての境地と言いますか、まずこの作品のアート感や選択をするとか魅せ方とか、出来上がってみて尚更僕にとってもすごく初めての作品なんです」と話す松本。「ストレートプレイの中でもちょっと違う新たなジャンルの作品なのかなっていうのはすごく感じていて、この作品に携われて、皆さんと、そして林とお芝居が出来て、元吉さんとお仕事させてもらえて、本当に幸せに思います。とにかく舞台ならではの良さがすごく詰まっている作品なので、生で見て、生で感じて、生で選択していただきたいので劇場でお待ちしています」と熱いメッセージを。
そして最後に林は、「僕は最初に台本を読んだ時の印象と今の印象が全然違って、こんなにも生々しい演劇になるとは思っていなくて、さすが元吉さんパワーだなと思いながら稽古中もやらせてもらったんですけど、ここに居るメンバーだけじゃなくてたくさんの方が出ていて、特にドールの役の皆さんは本当に動きも激しいし戦うシーンもあったりとか、すごい覚えることもたくさんあるんですけど、アンサンブルだからアンサンブルっぽい動きをするんじゃなくて、皆がメインキャストという気持ちでやってるので、そういうところも見ていただきたいです」とコメント。
さらに「元吉さんが言ってた言葉で『お客様が最後の共演者だ』っていうのをすごく思っていて、お客様から教えていただくことがたくさんあるので、この後初日を迎えてお客様の反応を感じるのが楽しみですし、千秋楽までお客様と一緒にこの作品を育てていけたらいいなと思っているので、ぜひ劇場に足を運んでいただいて、生の演劇を楽しんでいただけたらなと思います」と締めくくった。
舞台『DOLL』は、6月1日(木)から5日(月)まで渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて、6月16日(金)から6月18日(日)まで京都劇場にて上演される。
<キャストコメント>
【ミコト 役:西葉瑞希】
舞台『DOLL』毎日キャスト、スタッフの皆様全員で考え、動かし、試行錯誤を繰り返した作品です。舞台上のどこを観ても、何かが起きています!毎公演新鮮な気持ちで届けられるように、まずは私が楽しみたいと思っています。最後まで誰1人欠けることなく、この世界を生きられますように。沢山体を動かして、頑張ります!!劇場でお待ちしております!
【9号 役:搗宮姫奈】
舞台『DOLL』、とうとう開幕します。この作品は、ご来場していただくお客様がどこを切り取るかによって感じ方、見え方が変わる作品です。どこを切り取ってもそれが正解です。そしてご来場いただくお客さまもまた、作品の1部です。是非人形の世界を体験しに来てみてください。皆様のご来場、こころよりお待ちしています。
【サラ 役:岩田陽葵】
舞台「DOLL」ついに本日開幕です!
元吉さんが描く世界に私たちもワクワクしながら挑んできました。ゲームの世界にそれぞれ何かを求めて、もがいて選択し続ける人々と、舞台を美しく彩ってくれているDOLLたちが作り出す不思議で危うげで繊細な世界観をぜひ劇場で体感して頂きたいです。もんざえもんと共に「DOLL’S ORDER」の世界でお待ちしてます!