――芸能界を目指したきっかけとは?
母が元宝塚女優だったので、小さい頃から当たり前のように家族で舞台や宝塚、ディズニーランドのショーをよく見に行っていました。そういう環境に育ったので、舞台などを見ることは大好きだったんです。ただ幼い頃はすごく人見知りで、人前に立つようなお仕事につこうとは考えていなかったんです。でも小学校3年生の時に、家族と一緒に「アニー」を見たことで変わりました。あれって子どもが主役のミュージカルじゃないですか。すごく華やかな舞台に子ども達がいっぱい出ているのを見て、私もやってみたいなと思ったのが、このお仕事に興味を持ったきっかけです。
――ミュージカル「レ・ミゼラブル」で、笹本さん演じるエポニーヌはどんな女性なのでしょうか。
過酷な1700年代のパリで、17年間、親の愛を受けずに、ほぼ一人で生き抜いたような女性です。その当時というのは、お金がない貧民層の場合、子どもから大人になるまでに「健康に育つ」ということ自体が奇跡だったんです。そんな時代を生き抜くためには何かしら盗んだり、犯罪まがいのことをしたり…エポニーヌはすごくたくましく、自分の力だけで生きてきたような人で、すごく強いハートを持っているんです。自分を守ろうと、生き抜くために色んなことをしながら必死に生きてきた女性ですね。また、その中でエポニーヌにとっての唯一の癒しや希望の光になったのが、彼女が恋をするマリウスなんです。生き抜くために色んなことはしているけれども、人を純粋に愛する気持ちがあるってことは、やはり彼女の心だけは汚れずに、すごくきれいで純粋な女性だなと思います。
――18歳から演じているエポニーヌ役ですが、公演を重ねることで役柄の捉え方にも変化は出ましたか。
18歳当時の自分はエポニーヌの年齢に近いということで、すごく演じやすいなと思っていたんです。でも、本当に心の底から人を愛する気持ちや、自分が食べるものも着る服もない中でもし一つの希望を見つけたらどんな思いが生まれるだろうとか、深いところまではあまり突き詰めることができませんでした。今になってようやく、自分の人生経験と重ね合わせてエポニーヌ役を演じられるようになったので、彼女のすごく奥深いところにある心が見えてきた気がしますね。

――今回のエポニーヌの見どころとは?
新演出版になった今回のエポニーヌの特徴は、人への接し方だったり出で立ちというのが、すごくボーイッシュなところなんです。これもあの当時を一人で生きてきた女性ならではの考えだと思うんですけれど、たくましさというか、あまり女々しいところを出さずに生きているんですね。エポニーヌは17歳なんですが、日本人と違って外国人はすごく大人っぽいですし、年齢的にも立派な大人で、見た目も成熟していたと思うんです。けれども彼女はあくまでも自分を守るために女性らしさを消してボーイッシュに生きていました。ただ彼女の好きなマリウスの前では、ちょっと女心をみせてしまう、そのギャップが今回の演出であり、エポニーヌの見所でもあります。
――ミュージカル「スクルージ」では市村正親さんと共演されますね。
主演の市村正親さんは、最初に「屋根の上のヴァイオリン弾き」、次に「ミス・サイゴン」で共演させていただきました。「屋根の上のヴァイオリン弾き」では、私のお父さん役だったんですが、父と娘の役を演じていると、私としてはもう、私生活から市村さんのことがお父さんにしか思えなくて、その時から市村さんも私のことを可愛がってくださっています。役者さんとしても、すごく信頼していますし、一緒に舞台に立つのが楽しみです!
――演技のお話もされたのでしょうか。
市村さんからは、たくさんアドバイスをいただいています!「ミス・サイゴン」の時には、エンジニア(市村さん)とキム(笹本さん)という役で共演しました。この時は、親子役ではありませんでしたが、一幕の最後に私が歌う歌で「命をあげよう」という、すごく重要なナンバーがあるんですけれど、市村さんは自分の出番が終わっているにも関わらず見てくださっていて、「今日の玲奈の歌は○○だったよ。こうしてみたら?」っていうアドバイスをしてくださったりとか、まるでお父さんのように面倒を見てもらっています。
――作品はクリスマスのお話ですね。笹本さんはクリスマスに、どんなイメージをお持ちでしょうか。
一年で一番街が鮮やかになる時期ですし、クリスマスプレゼントも小さい頃から一番の楽しみでしたね(笑)。
だからクリスマスにはすごく幸せなイメージがあります。また「スクルージ」に関しても、すごく寂しい人が奇跡によって、どんどん変わっていって最後はハッピーエンドっていうのが、すごくクリスマスらしいお話です。クリスマスに起きる奇跡というのは、クリスマスプレゼントのような幸せ感があると思います。
――ミュージカル「スクルージ」は、どんな方に見てもらいたいですか。
私もこの作品を小さい頃に見に行ったことがあるんですけれど、やっぱりクリスマスに上演される作品というのは、「クリスマス」=「スクルージ」というように、すごく印象に残るんですよね。私自身、「スクルージ」に出てきた華やかなダンスとか妖精とか、そういうイメージが蘇ってくる作品なので、小さいお子さんにもたくさん見に来ていただけたらいいなって思っています!それに、子どもも楽しめるミュージカルは珍しいと思うので、家族の絆を深めるためにも親子が一緒に見るには、すごく良い作品なんじゃないかなって思っています。
――お稽古前ですが、仲の良い皆さんとの共演とのことで、楽しみにされていることはありますか。
こういう明るい作品って、カンパニーの結束力もすごく強くなると思うんです。なので、カンパニーも朗らかに楽しい雰囲気で公演が進んでいくと思います。共演の皆さんに関しても、田代万里生くんとか、今井清隆さんとか普段から仲良くさせてもらっている方ばかりなので、お稽古も楽しみです。