――舞台『ブラック・コメディ』に出演が決まった時の心境を教えてください
ちょうど車で移動している時に『ブラック・コメディ』という舞台だと聞いて、ブラックジョークのような人生を歩んできたので、僕がやるしかないなと思いました。めちゃめちゃハッピーな作品より、ちょっと暗い感じの方が僕の性格上合っているので。
――これまで様々なコメディ作品に出演されていますが、本作にはどんな印象を受けましたか?
海外ならではのセンスが散りばめられた作品だなとは思いました。
――海外作品に出演する際の作品との向き合い方は、日本作品と変わりますか?
やり方はそんなに変わらないです。海外作品は海外の人の感覚とか、その国その国で変わるじゃないですか。だから台本を読んでいてもどういう感覚なんだろうと思うこともありますし、日本人の感覚でこういうことかなってやっていても実際は違ったりして。海外の感覚でやると日本ではあまり受け入れられなかったりもするので、そこのバランスが難しく、海外の戯曲を日本でやる難しさはあるのかなと思います。なので、日本の作家さんが面白い本を書くのが一番だと思います。

――以前出演されていたミュージカル『ダブル・トラブル』も海外作品でした
僕は初演には出ていなくて再演からの参加だったのですが、初演ではいろいろアイデアが出て原作から結構変わっていったところもあったそうで、リアルタイムでディスカッションをしていないのでどういう流れか分からないですけど、多少日本向きに、日本人が見て笑えるところも入れていたみたいです。原作を大事にするという意味では変えない方が良いとは思いますが、例えば『ブラック・コメディ』だったらイギリスが舞台で、イギリスギャグを日本で言っても分からないから面白くないじゃないですか。あとは今回で言うとちょっと宗教的な話もあって。海外の作品には宗教の話が入っていることが多いですが、日本人から見たらそれがストーリーの裏テーマとか、繋がっているのかが分からなかったりもするので、それをどこまで出すかという塩梅が難しいですよね。僕も作品の度に勉強はするんですけど一瞬で忘れるので(笑)
――稽古中に演出の大歳(倫弘)さんとやり取りしていく中で、理解を深めていくことになるのでしょう
最終的に頼るのは演出家さんなので、教えてもらいながらやりたいと思います。

――稽古はこれから始まるそうですが(※取材は6月下旬)、どのように役にアプローチするか考えていますか?
なんとなくイメージは作っていますが、僕は稽古に入って本読みをしてから本腰を入れてやっていくタイプなので、ある程度は人物のことを掘り下げて、あとは皆さんと作って、変更するところは変更するみたいな感じで進めようと思っています。
――ブリンズリーにはどのような印象を持ちましたか?
ブリンズリーはクズなんですよね……。大体はどこか愛される人が頑張れ!って応援されて、最終的にはどうにかなる話が多いと思うんですけど。でもブリンズリーはクズなので、バレろバレろと、さっさと見つかってぶん殴られりゃいいのにって思うじゃないですか(笑)。だから僕はクズな人間だけどどこか応援してもらえるように、何とか乗り切ってくれないかと一ミリでも良いので思ってもらえるように演じられたらと思います。
――浜中さんご自身もブリンズリーは酷い目に遭ったら良いと思いますか?
でもこういう人が最終的に上手いことやって、世の中生き延びるでしょう?芸術家ってどこか特殊だと思うので、だから許されているのかなと。これが一般の仕事に就いている人だったらほんまのクズやから(笑)
――役に共感できる部分があれば教えてください
共感できるところもありますし、そうじゃないところもあるんですけど、前もって物を用意してなかったりするところは僕も同じですね。いざって時のために備えておけばいいんですけど、これあったらいいのになって後から気づくタイプなので、そこは一緒かなと思いました。
――本作では、部屋が明るいシーンでは舞台を暗く、停電の時は舞台を明るくする“明暗逆転”の演出となりますが、どのようなイメージを抱いていますか?
今のこの状態が舞台では真っ暗ってことですもんね。ちょっと恥ずかしいかもしれないです。本来真っ暗な時の姿って人には見られないじゃないですか。でも今回の舞台では普段見られないところをお客さんに見られるみたいな感覚になるのかな……。お芝居の中で暗闇にいる自分をイメージして演じると思うので、暗闇の中でこんな顔してんねや、みたいな、いつもよりそわそわするかもしれないです。逆にマッチを擦ったり、明るくなる時に照明が暗くなるんですけど、その方が安心しますよね。まだ体験していないのでイメージの話でしかないんですけど。
――暗闇という見えない設定の中、右往左往するのも見ていて楽しいポイントになってくるかと思います
原作も細かく指定されていたり、向こうでもめちゃめちゃ計算して稽古しながら書き直したりもしていると思います。でも60年前のお笑いが今面白いかどうかですよね。流行り廃りがあるから、1回やってみて面白いか面白くないか……でも皆さんとやっていく稽古の中で面白ポイントを見つけられたらそれが一番良いかなと。僕らが何か発見できれば、きっと良い方向に進むと思うので。
――映像があったら見てみたいですか?
見てみたいですね。こういう感じかな?ってイメージはありますけど、実際の照明の感じがどうだったのかを見てみるとまた感覚も変わってくると思います。

――公演ビジュアルが公開されていますが、撮影の際に衣装を着てブリンズリーのヘアスタイルになった時はいかがでしたか
普段はスウェットにTシャツ、夏だったら半パンにTシャツとかシンプルで部屋着みたいな格好でしか過ごさないんですよ。こういうカラフルな服を着ると引き締まりますね。
――ご自身で公演ビジュアルをご覧になった感想は?
良いんじゃないですかね?僕は被写体になるのが苦手で、こういう写真とかできあがったポスターとか映像も見るのが嫌なんですよ。でもこれは良いですね。普段の僕の感じがします。かっこよくポーズを取るのも苦手ですけど、驚いている顔だからやりやすかったです。
――渡辺いっけいさんと共演してみたかったとおっしゃっていましたが、本作で念願叶いましたね
舞台で共演するのが初めてなんですけど、舞台って役を作っていく過程が垣間見えるのがすごく楽しくて、いっけいさんのその様子が見たかったんですよね!
――ビジュアル撮影の時にお会いしたそうですが、何かお話はされましたか?
そこまでいっけいさんの普段を知らないんですが、その時はよくあるボケをされていました。「初めまして」って言われて、「いや、初めましてじゃないでしょ!」みたいな。そういうジャブを打ってくるんだと。稽古に入って距離感を掴んでいきたいと思っているので、まだいっけいさんという方が未知数です。
――渡辺さんにはどういう印象をお持ちですか?
現場での居方とかは聞いたことがあって、お芝居に対しての熱量や役作りに対しての感じとか、どういう風に役と向き合って作られている方なのかすごく気になっています。