――本作への出演が決まった時の心境を教えてください
- 浅香航大(以下、浅香):まず『三人夫婦』というタイトルのインパクトが強くて、どんなドラマなんだろうと思いました。多様化する社会の中で、ドラマ自体も多様化していて、恋愛ものだと青春ものから不倫、BLだったり、色んなものが描かれている中で、果たしてこれはどういったものなのかという期待を持って台本を読ませていただきました。タイトルから想像するものを超える内容で、すごく説得力もありつつ、ほっこりと引き込まれるように読める台本でした。最近のドラマの中でも類を見ない形の作品だなと思って、ぜひ出演させていただきたいと思いました。
- 朝倉あき(以下、朝倉):私も『三人夫婦』という、ずばりなタイトルに、作品の面白さで勝負するぞ!という気概がまず感じられました。台本を読む前からすごく中身が楽しみでしたし、奇想天外な設定をすごく面白く落とし込まれた、練りに練られた台本だったので、その時点でこれは出演させていただきたいなという気持ちになりました。とても巧みに、ほっこりして皆が見やすいコメディになっているのが私はとても素敵だなと思っていて、深刻になりすぎず、難しい課題を扱っているところに魅力を感じました。
- 鈴木大河(以下、鈴木):僕が最初にお話をいただいた時は、まずこの3人の関係性を先に聞いて、全く想像がつかなかったんですけど、その後にタイトルを聞いて、なるほど、3人で夫婦なんだと。世間的には無い言葉ですし、なかなか想像もつきづらいですけど、いざ台本を読んでみたら、今まで何で無かったんだろうと思うくらい、僕の中ではしっくりきました。それでいて、拓三や新平、美愛という一人一人のキャラクターを読んでいくうちにどんどん好きになりましたし、見てくれた方もこの登場人物のことを面白いなとか共感できるなとか、そのキャラクターを好きになっていただけたらなと思いました。
――ご自身が演じるキャラクターをどう捉えて、どういうところを意識して演じられましたか?
- 浅香:拓三はいわゆる堅物で孤独な人です。几帳面であり、繊細で、古風なルールを持っていて、非常に面倒くさいと思われるかもしれないですね。ただ、とても優しくて、本当は愛情深くて、単純で、受容力がある。人付き合いが苦手ではありつつも、彼自身が持っているポテンシャル自体はすごく高いんです。それによって振り回されているようだけど、自分自身もそれを楽しんでしまうというか、そういう可愛いところがあります。
――可愛らしさみたいなものは特に意識していたのでしょうか?
- 浅香:意識しました。でも、僕はこういうキャラクターを今まで演じたことが少ないので、あまり肩肘張らずに、フラットでナチュラルに、割と等身大に近いイメージで演じようと思いました。
――朝倉さんはいかがですか?
- 朝倉:男性陣がとても素敵で素直なところがあるキャラクターに対して、美愛ちゃんは頑固で。自分の道を歩むゴーイングマイウェイで、マイペースにもほどがある。もう超絶“ジャイアン”で!皆の合言葉は「ジャイアンだよね」っていうのを現場で何度も繰り返して言っていたくらい、すごく我が道を行くタイプの女の子でした。そのゴーイングマイウェイっぷりはすごく意識して演じましたが、ものすごく疲れました(笑)
――確かにジャイアンと言われたら、演じる上で疲れそうですね
- 朝倉:音声さんに「すごい声大きかったね」と言われたくらい、まずは声の大きさで我を通していこうとしたところがありました。元気な子でエネルギーが吸い取られもしたし、彼女に助けられた時もあって、やっていて楽しかったです。
――鈴木さんは無邪気で奔放なダンサー役ということですが、どうでしたか?
- 鈴木:新平は、最初は結構ハツラツとしていて元気の塊みたいなイメージだったんですよ。年齢も拓三さんたちよりちょっと下で、弟みたいですごい自由、みたいなイメージがあったんですけど、演じているうちに、拓三さんや美愛ちゃんから受け取ったことに対して、元気に振る舞っていたり、場を明るくすることを気に掛けている人なんだなと思っていて。それは監督もおっしゃっていましたし、こういう題材だからもちろんシリアスになる場面もあったりするんですけど、そういった時に新平だけはその場を明るくさせようとするところは意識しました。台本に書いてある文章だけ読むと、結構深刻な話をしているんですけど、それをいかに深刻にならないように言うかは、すごく意識したところではあります。
――素で明るいのではなく、場を和ませようと明るくしている部分があったんですか?
- 鈴木:そうですね。年齢的に、お兄ちゃんお姉ちゃんたちに対して人懐っこい感じもあるんですけど、それって実は、そういう家族みたいな関係性がすごく嬉しいという気持ちの表れだったり。そこは素でというより、意識してそういうふうにしているところがあるのかなと思いました。
――ご自身と役で似ているところと似てないところを教えてください
- 浅香:こだわりの強さやルールがあるなど、共感できるところは多いです。他にも好きなことに熱中しやすいところや、単純な性格も似ています。似ているところは多いです。
――ご自身を投影させやすい役でしたか?
- 浅香:投影させやすかったです。ただ、そういうと拓三は変わった役ではあるので、僕も変わり者みたいになるかもしれませんが(笑)。逆に似てないなというところに関しては……。
- 朝倉:あんなにバーッてマシンガントークで理詰めすることはないですよね。
- 浅香:そうですね。理詰めするとかは無いですし、インドアでは無いです。あとは、あそこまで綺麗好きではないですね。僕は外着のままベッドとか上がっちゃうし。
- 鈴木:えー!意外ですね!
- 浅香:意外でしょ?全然上がっちゃうし、そのままメイクも落とさず寝ちゃうこともあるし。それぐらいの緩さは持っています(笑)
――朝倉さんは、美愛との共通点はありましたか?
- 朝倉:似てないところは、美愛ちゃんほど汚く過ごしていないところです(笑)。部屋で洗濯物を散らかしっぱなしにしないし、ゴミもちゃんと片づけますし、布団もちゃんと洗うし……(笑)。でも、自分で何でもやりたがるところは似ているのかなと思います。できることだったらどんどん自分でやりたくて、持てる小道具は全部持って現場に行きたいとか、(待機中のスリッパから撮影時の履物に履き替える時は)履ける時点で履いていきたいとか。作品の中であざとい女子の後輩が出てくるんですけど、その子に「そんなの男の子にやってもらったら良いじゃないですか!」って言われるような重い書類の山をわざわざ自分で持ってくるとか、そういうところはちょっと似ているのかなと思いました。
- 浅香:怒り方は?怒り方が、美愛ってなんだかんだ言って可愛い感じじゃない?
- 朝倉:本当ですか?じゃあ似てます!(笑)
――鈴木さんはどうですか?
- 鈴木:新平は人のことが好きで、誰でもというわけではないんですけど、心を開いた人にはとことん行くところが似ているなと感じます。拓三さんともそうですけど、出会ってすぐに「良い人だね!」と感じるところは、僕もあるかなと思います。こういう現場での出会いでも、すごくお話を聞きたいなと思いますし、これからご飯行きたいですよね、って僕は思ってます!
- 浅香:ぜひ行きましょう!
- 朝倉:行きましょう!
――ご飯は実現されていないですか?
- 浅香:まだ無いですね!
- 鈴木:行きたいところはたくさんあるので、あとは行くだけです!似てないところは、新平ほどエネルギーは無いですね。ベースは似ているんですけど、エネルギー量が違って、新平を演じる上では自分の200%のエネルギーを使っているなと感じていました。
――熊坂(出)監督の演出で印象的だったところや、何かアドバイスをもらったりしましたか?
- 浅香:熊坂さんとご一緒するのは、3作目になるのですが、非常に信頼している監督です。まず最初に、本読みの機会を設けていただいて、そこでこのドラマは“コメディでもあるが、皆で一生懸命真面目にやること”や“コメディだと思って演じないこと”など、作品の方向性を整えていただき、スタッフさん含めて共有していただきました。現場ではとにかく新鮮に、演じ過ぎないように、自分だと思ってその場に存在することに意識を置いて演じる、という作り方で立たせていただきました。深刻な内容もあるし、デリケートでセンシティブな内容も扱ってはいますが、ほっこりする場面や笑いも入ってきて、実は非常に高度な台本でもあるのですが、そこで嘘をつかずに、真面目に皆が演じるというスタンスを取らせていただいたので、その環境はすごく演じやすく、本当にありがたいなと思っています。熊坂さんが土台をしっかりと作ってくださっているんだと思いました。
- 朝倉:私は熊坂さんとは今回が初めてだったんですけれど、「響き合うお芝居をしよう」という言葉がすごく印象に残っています。あと、「真面目に心を込めてやればもっと立体的になるから、セリフを忘れちゃっても良いから、気持ちを届ける、気持ちでお芝居をするというのを意識しなさい」とよく仰っていて。私はセリフが上手く出てこなかった時に、それらの言葉に助けられて、良いシーンになったなと思えるところがいくつかありますので、楽しみにしていてほしいです。
- 鈴木:僕も熊坂さんとは初めてで、ドラマに出るのも2作品目なので、本読みの前に1回、監督と1対1でお話しさせていただく機会をいただいて、その時から「不安なところはない?」とか「何か分からないことがあったら聞いてね」と、すごい優しく基本のところから色々と教えてくださいました。
その中でも印象的だったのは、撮影していて、監督が考えていた芝居との相違があった時に、必ず「違う」じゃなくて、「これはどういうことだったの?」とか「どういう気持ちでお芝居をしたの?」と聞いてくださって。僕が「こうです」と答えた時に、「そうなんだ、それなら全然良いよ」と、否定しない教え方をしてくださって、それは経験のない僕にとって、自分で改めて考える機会にもなりましたし、後々褒めていただいた時にはすごく自信にもなりました。メンタル面でも助けていただきましたし、「自由に大胆に」という言葉もたくさんおっしゃっていて、肩の力を抜いてお芝居することができました。
――どのキャラクターもどこか残念な部分がありますが、朝倉さんからみて、拓三と新平の良いところと、残念だと思うところはありますか?
- 朝倉:私から見ると、2人とも共通して素敵だなと思うところは、とても繊細で、お芝居中に私が忘れ物をしたり見落としたりしていることがあったら「朝倉さん、次こうだよ」とか色々サポートをしてもらう瞬間がたくさんあって。それはお二人自身の姿だったりもするんですけど、拓三と新平の真っ直ぐで優しいところはご本人の性格が反映されているんじゃないかなと思うので、そういうところは素敵だなと思います。残念なところは……。
――たとえば拓三の几帳面なところはどうですか?
- 朝倉:セットで拓三の趣味のものがぶわーっと並べてあるんですけれど、それを一つでも動かしたらいけないんだろうなというぐらい、趣味の強さの圧が結構強かったりするのが、残念なところというか、「だから彼女に振られるんだぞ」「美愛ちゃんからああいうこと言われるんだぞ」というエピソードの一つだったりするんですけど……。
- 浅香:そこは譲れないですね。結構世間でも議論になるところじゃない?結婚する時に、お互いの趣味がどうなのか、特に大好きなものが捨てられてしまったとか話題になると思います。そこは拓三としてじゃなく浅香としても、譲れないタイプですね!
- 朝倉:(笑)。それがそのまんまお芝居に表れているなと思う瞬間もあったりしました。
- 浅香:そこも含めて愛してほしいんだよね!
- 鈴木:確かに。
- 朝倉:最終的にどうなるかは楽しみにしていただきたいですが、私自身もその趣味部屋に入った瞬間に、趣味へのこだわりの強さに、これは面倒くさい男だなと思いました(笑)
新平くんは、彼もさっき言ったように、すごく難しいことも明るくしよう、空気を変えようという彼なりの気遣いがすごく感じられるんですけど、美愛ちゃんと、美愛ちゃんを演じている私からすると、へらへらしてんな~、みたいな(笑)。そう受け取れてしまうところがあるかもしれません。
- 鈴木:そもそもなんで付き合ったんですかね?(笑)
- 朝倉:そういうことになっちゃうよね(笑)。でも、彼はストリートダンサーなので、かっこいいなってなったんだと思いますし、美愛ちゃんは家事がとても苦手なんですけど、それを補ってくれる彼の家事能力だったり、そういうところに惹かれたんじゃないかなと思います。
――二人とも結婚相手としてはありですか?
- 朝倉:私は結婚相手としてはありですね。ただ、その趣味とへらへらしているところが、ちゃんと将来に向けて話し合いができるかどうかというところが大事かなと思いました。