――本作への出演が決まり、原作を読んだ感想を教えてください
- 風間俊介(以下、風間):休日の夕暮れのような、すごく温かいんだけれども、この時間は永遠じゃないと感じさせる寂しさみたいなものがあるところが魅力的に思いました。雀さんは39歳なんですけど、絵が39歳よりも若く見えるなと思っていたので、撮影する中で、俺も40になるし、という大人の説得力と、まだまだですよと言ってもらえそうなキャラクターというバランス感覚を考えていきたいと思ったのが第一印象です。
- 庄司浩平(以下、庄司):『40までにしたい10のこと』以前に、書籍という形でボーイズラブのジャンルに触れたことはなくて、今回初めて手に取って読みました。僕は割と恋愛漫画が好きで結構読みましたが、好きな人と会って、楽しい時間を過ごして、でも引っかかることや乗り越えたいことがあって、お互いのことが大切だからと手と手を取り合っていくところが良い意味で特に何も変わらないんだなと。バケットリストを縮めて40までにしたいこととして、オフィスラブや年齢差など、面白い要素がたくさんある中でマミタ先生が本当に素敵な世界観を作り上げてくださっています。それに、付き合っている人たちの間で行われる描写も美しく描かれていて、男性目線の感想になるかもしれないですが、エグさみたいなものより、芸術のようなものを感じました。そこも含めて、このジャンルの面白さや、多くの方が虜になる理由が詰まっているなと思いました。
――ご自身が演じた役の魅力、そして共演された相手役の魅力について、それぞれどのように感じていますか?
- 風間:“ボーイズラブ”で魅力を括ってしまうのはもったいないと思うほど、オフィスラブでもあり、上司と部下の関係や身長差もあり、そこが物語に素敵な彩りを加えてくれている部分だと思います。雀さんは仕事場と家で全然見え方が違い、仕事では部下たちのことをしっかり見れる出来た上司で、家では一転、可愛らしくなって。でも慶司と一緒にいて、オフィスでもそれが綻ぶようになる変化があるので、そこが魅力的だなと思いましたし、そこにときめいてほしいなという願いを込めて演じていました。
庄司くん演じる慶司は、クールと形容されますが、雀さんとの恋愛によって見える綻びや焦りが魅力的だなと思いますし、眼鏡の奥のちょっとした動揺が見えた瞬間に、このキャラクターの魅力は倍増されるなと思っていました。
- 庄司:慶司はとても真面目で、仕事に対してもすごく良い形で取り組んでいて、そこは雀さんも評価している部分です。ただ、雀さんと関わり、時間が経つ中でちょっとした隙が生まれたり、年齢やキャリアの差に対して自分に至らないと感じる瞬間があったりして、それは原作の魅力でもありますし、映像でも少しずつ変化していきながら描かれていて、魅力的なところだと思います。2人の関係性の変化が、皆さんに愛される大きな理由の1つだと思いますし、初めてボーイズラブ作品に触れる方にも楽しんでいただけるポイントかと思います。
風間さん演じる雀は、慶司よりも分かりやすく、色んなものが変化していくと思います。明確なのが10個のリストを叶えていくことですが、こういった可愛いところ、素敵なところがあるんだとお互いのことを理解していき、主に可愛いところが増えていくのですが、その中でも頼れる上司として、一人の人間として素敵な人だなと感じることができるので、そこを彩り鮮やかに演じてくださった風間さんには感謝しかないです。僕は目の前で起こったことをキャッチしているだけでしたが、楽しい日々でした。
――ご自身と役との共通点はありますか?
- 風間:結構等身大でやらせていただきました。自分の仕事とプライベートがしっかり乖離していると思います。でも好きなものが片っ端から仕事になっているので、嘘つくなよって感じかもしれないですけど(笑)
- 庄司:僕はそんなに色んなことを器用にやれるタイプではないんですけど、慶司もちょっとだけおっちょこちょいな部分があったりします。あとは目上の方との人間関係で、リスペクトを持って敬語で話すなど当たり前のことはやっていますが、自分の中で綱渡りをしながら話している時もあるんです。この人ならちゃんと冗談で通じるなと、わざとフランクに崩したりして。それは慶司と田中(平井亜門さん)の関わり方もそうで、年下の慶司の方が優位に立ってそうに見えるけど、そういった関係性で許してくれるだろうというのがあるから、慶司が甘えているのだと思います。
――恋人という関係に発展していきますが、役作りの際に何か話し合われたことはありましたか?
- 風間:日々の撮影の中で普通に話し合うことはありますが、撮影前という意味では、本読みの時にどういう具合か、温度感みたいなのは話したね。
- 庄司:そうですね。原作があるので、そこの温度感を失わないという、3次元であることに対する調整だったような気がします。
- 風間:精神性では、2人でちょっと喋った時に、作品が描いていたものをどう捉えたかが一致している体感があったので、あとは横に並んだ時の慶司と雀の感覚を確かめようと、庄司くんが立っている目の前に僕が立ってみたんですね。そうしたら、バックハグを待っている人みたいになっちゃいました(笑)
――可愛らしさのある雀ですが、役を演じる上で可愛さをどう意識していましたか?
- 風間:雀さんはある種ヒロインという立場になり、今まで恋愛ドラマなどで女優さんが担っていたものは本当にすごいんだな、角度1つで伝わり方は変わるものだなと改めて実感しました。マミタ先生の原作でも雀さんは本当に可愛らしいのですが、それは自分が好きな物に一生懸命だからこその可愛さで、多分雀さん自身は可愛くしようとは思っていない。そのようなバランスの中で、“可愛い”をやろうとしたらきっと可愛くない瞬間があると思ったので、“可愛い宣言”をしてキャッチーにワイワイやっていました。精神的には慶司を見た時に心から愛おしく思っていれば、勝手に顔は輝いていくのではないかと思いながら撮影をしていた記憶があります。
庄司くんはクールだけど物語の中でそれが綻んだり、感情の機微をどう出していくのかを監督とたくさん話している姿を見て、すごく真摯に向き合っているなと思いました。
――風間さんの言葉にあるように、クールなキャラクターである慶司を演じる上でその内面や感情の動きをどのように捉えていましたか?
- 庄司:ジャンル分けをした時に便宜上クールになるだけで、同僚の田中とも仲良く話しているし、雀さんと遊ぶ時は楽しそうにしているので、分かりやすくクールでいるわけではないなと思っていました。慶司がかっこいいと言われる部分は、彼が色んなことに対して実直に真摯に向き合っているところを、雀さんが素敵だと思えることだと思うので、色んなことに真摯に向き合うところがにじみ出ていたら嬉しいなと思いつつやっていました。どうでした?
- 風間:すっごいかっこよかった。
- 庄司:太字で書いてください(笑)
――雀は可愛らしいものも好きで、ぬいぐるみも1つのキーアイテムになっていますよね
- 風間:我がすず子のことですね!この記事を読んでくださる人の中で、何を家族とするのかというのはあると思いますが、雀さんにとっては間違いなくぬいぐるみたち、そしてすず子が家族なので、家にいる時は1人のシーンですが必ずすず子が見守っているという形で、この作品のアイコンを担ってくれているのと同時に、この作品の大事な大事な登場キャラクターです。
――着ぐるみの部屋着姿やぬいぐるみに囲まれる風間さんはどうでしたか?
- 庄司:めちゃくちゃ可愛かったです。これも太字で書いてください(笑)
――“可愛い”というキーワードにちなんで、お二人にとっての理想の“可愛いおじさん”像とはどのようなものでしょうか?
- 庄司:年齢を重ねていく内に色んな経験をされて、その分、折れづらくなっていきますが、若い人や目上の人、環境などに対して柔軟であること。あとはいつまでも新しいことをやっている人はどの年齢でもフレッシュな空気感があって、人間としてのキューティーさみたいなものが常にあるんですよね。おじさん、おばさんと言われるようになったとしても、輝いて何かに向かっている人は尊敬できるし、可愛らしさがあると思うので、自分もそういられたらなと思っています。
- 風間:全員おじさんだったとしても、皆、子どもだった時代があり、小さい時に好きだったものがあって、年齢を重ねていったら色褪せてしまうものもあれば、自分の中にずっと残っているけど「この年だからもうね」と対外的なことを意識して置き去りにされてしまうものがあると思います。そして雀さんも多分、幼い頃から可愛いものが好きだったんだろうなと。幼い頃や感受性が豊かだった頃に好きだったものを否定しないであげられる大人は可愛らしいなと思います。月日が経ち、本当に色褪せてしまうのであれば自分の変化だと思いますが、「自分の年齢でこのぬいぐるみはね」と思うのであれば、対外的なことは気にせず、自分が好きだった“あの頃の自分”を愛でて大切にしてあげられると可愛さが出てくるんじゃないかなと、個人的には思っています。