――当時のお仕事でこれはキツかった!と思うようなことはありましたか?
キツイって思うようなお仕事って、今振り返ってみると、そのキツさが成長に繋がっていったんだと思えるんですよね。たとえばダンスレッスンが何日間も続いたり、ツアーの練習が厳しかったり、体力面で辛いなーと思うこともあったんですけど、それって実際にライブをしてお客さんの顔を見ると全部ふっ飛ぶんです。頑張ってやってきたからこそ、このライブがあるんだ、と。 レコーディングに関しても自分の思うように声が出ないとか、納得ができないとかあるんですけど、でも作品が出来上がった瞬間、それがあったからこそ面白さや深みが出たんだなって思えるんです。

――では、記憶に残っている当時の良い思い出をひとつ挙げるとしたら?
やっぱり、日本武道館でライブをして自分が卒業をした時ですね。言葉では言い表せないくらいの歓声と熱気と、いい威圧感を感じました。会場は満席で、そこでやったライブはいろんな方たちと一体になれて、人生最大の感動、言い表せないくらい最高でした!卒業するってことで、みんなとしばらく会えなくなってしまうこともあり、メンバーもウルウルしてたんですけど、私はそこで泣きませんでした。 「この瞬間に泣いて、この空間、この風景が潤んで見えなくなってしまったらもったいない!しっかり目に焼き付けておこう!」と思っていました。
――そして、モーニング娘。を卒業し、ソロ活動に入ったわけですけれども、モーニング娘。のメンバーだった時と環境や心境の変化はありましたか?
はじめてのユニットを組むという形で、自分で歌詞を書かせていただき、音楽に対する姿勢を自分で咀嚼しつつ学んでいった部分があると思います。 そこに携わっているスタッフの方々とも新しい出会いもありましたし、環境自体、モーニング娘。のときとは違っていて、ライブハウスでライブをやらせていただいたり、生バンドで「みんなで作っているんだぞ」っていう気持ちが最高でした。
――その後ご結婚を機に引退され、ご出産されたのですよね。ご結婚をし、母親になり、「自分は変わったな」と思う部分はありますか?
妊娠してから、お腹が大きくなったりする体の変化から、同時に自分が母親になるんだっていう実感が湧いてくるんです。お腹の中で動く感覚って、自分にしか分らないじゃないですか。そういうことがすごく愛おしいんです。 そして子供が生まれてからは、「この子のためならなんでもできる!」という、母としての強さが出てきました。母は強くなります!虫も殺せるようになりますから(笑)。
――芸能生活から離れた5年間は、どのような活動をされてたのですか?
子供が二人いますので、子育てに専念していました。そして今回5年ぶりに復帰をさせていただくことになって、約一年くらい前からお芝居のレッスンを受けたりしています。

――一度は引退した芸能界へ再度足を踏み入れることを決意したきっかけは何ですか?
子供が成長して、少しずつ手が離れるようになってきて、だんだん自分に費やせる時間ができたんですね。 その中でふと、自分を改めて見つめ直した時、「このままでいいのかな?」、「まだやってないことがあるよね」って自分の中で問いただしてみたんです。でも「復帰したい」という一言を、果たして言っていいのかという葛藤もあったんです。 ずっと育児をしていくほうが、子供にとっても私にとっても、家族にとっても幸せなのかなって。だけど、人生は一度きりだし、子供と一生バイバイするわけではないし、気負わずにやっていけばまだ可能性はあるんじゃないかって思い直したんですね。 その後、主人に相談したら、「いいんじゃない?」って言ってくれたんです。ものすごく肩の荷が下りました。「いいんじゃない」って言葉がすごく大きくて、その一言で一気に背中を押されましたね。
――家族の理解があって踏み出すことができたんですね。
そうですね。十代の頃って、何もかも漠然と物事を考えていて、自分を表現することが不器用だったような気がします。 今なら、かけがえのない子供、家族があって、守るべきものが増えたからこそ、貫き通さなきゃいけない部分があると思うし、自分がやりたいことをとことん追求してやってみれば、きっと子供もついてきてくれる、私はそう信じています。
――復帰されて、以前と変わったと思われることはありますか?
仕事一つ一つに対する責任感が昔以上に高まっていますね。会社の方とのミーティングもたくさん重ねています。
――この再デビューを一言で表すと?
「旅」ですね。結婚してから育児休業として約5年間休んでいたのも旅ですし、また戻ってくることに関しても人生の旅だと思っていて。 人生は一度きりしかないですから、何もかも出し惜しみしてたらもったいないなって。本当に、後悔しない人生を送りたいです。
――今後はどういった活動をしていきたいですか?
この一年間、お芝居のレッスンをさせていただいてお芝居のおもしろさがわかり、「こういう役をやってみたい」っていうのもあります。演技レッスンの成果を現場で出したいと思っています。歌も機会があれば歌いたいですね。
――これからの夢、目標は?
気負いはせずに少しずつ感覚を取り戻しつつ、その中で新たな出逢いを大切にして、これからも「市井紗耶香」というものを築いていきたいです。
――最後に読者の方へ一言お願いします!
約5年間というブランクがありましたが、いい充電期間だと思って、その中で培ってきたものをフルに活かしていけたらいいなと思っています。これからの市井紗耶香に期待してください!