鋭い感性とリアルを追求した演出で、現代の若者の生態と人間の本質を描き、賛否渦巻く衝撃作が代名詞ともいえる三浦大輔による3年ぶり待望の新作は、『ハザカイキ』と題し、“時代の価値観の変容に踊らされる人々”を描きます。芸能界を舞台に、マスコミとタレントという特殊な関係の中、現代に振り回されながら葛藤し続ける人間たちの揺らぎを、三浦独自の視点で浮き彫りにする会話劇。
リアルで繊細な人物造形と人間関係、湿度と温度を感じさせる会話など三浦の真髄はそのままに、よりシンプルに力強くエンターテインメントとして創り上げる。

プレスコール後に行われた囲み取材ではキャストの丸山隆平、勝地涼、恒松祐里、作・演出の三浦大輔が出席。

公演への意気込みを聞かれ、芸能記者である主人公・菅原裕一を演じる丸山は「芸能記者として色んなスキャンダルを撮るんですけど、社会的なものとかも追いかけてる記者ではあり、報道をするということに対してこの舞台上で起こる出来事と色々向き合いながら、菅原がどういう風になっていくのか、1つの記事から始まり、周りからの影響で変化していくという役ではあります」と話し、「今朝、SUPER EIGHTの安田章大さんから、”ガンバ!”みたいなLINEをいただきましたし、彼も舞台をやっているんで仲間のことも支えに、最後まで無事安全に走りきれたらなと思っております」と意気込んだ。

丸山演じる菅原の親友・今井伸二役の勝地は「菅原がやってる仕事を理解をちゃんとしてはいないんですけど、分かってるふりをずっとしてるというか『分かる、分かるよ』っていうことを言いながらずっとそばにいて、自分自身が抱えているものとかも最後に分かったりもするんですけど」とネタバレを避けながら説明し、「僕は初めて三浦さんの書いた脚本を読んだ時に『これだよ!マジこれだよ!スッキリしたわ!』って思ったんです。なので、それを届けられればなと思っています」と笑顔。

菅原に追われることとなる国民的人気タレントの橋本香を演じる恒松は「スクープをされてしまう中で、どんどん香の人生が変わっていって、自分自身と向き合うきっかけにもなって、少しずつ自分の中で整理をしていって、最後、すごく大きな見せ場がある役どころです!頑張ります」と気合を見せた。

構想に7年を要した本作を作るきっかけについて、三浦は「それが結構ネタバレになってしまうものなので……」と前置きし「ただ、とあるシーンを舞台上でやりたくて構想は始まったんですけど、もちろんそのシーンはありますし、7年経ってここまで時代とフィットするとは僕も予想外なんですね。なので、本当にこの時期に見るべき作品だったなと強く思っています」と語り、丸山を起用した経緯については「企画が発動して、1年ぐらい前なんですかね?そこら辺はちょっとあやふやなんですけれども、作品見てもらえば分かると思うんですけども、丸山くん自体の素というか、普段テレビとかで見ている丸山くんの地をそのまま使って演じてほしいなって思いを強く持っていて。もちろん、丸山くん自体は週刊誌の記者ではないですけれども、自分の仕事とリンクする部分も重ね合わせて演じてくれてるなと思ってます」と語る。

実際に芸能記者役を演じてみた感想を丸山は「こっち(取材される側)の方がしっくりきますね。でも囲み取材もここ最近はなかなか無かったじゃないですか。だからいざこういう役の立場になってみると、何書かれてるのかなって……」と記者の様子を伺う一幕もあり、「そういう側の立場は新鮮でもありますし、こういう思いで記者の方って色んな情報を集めたりしてるんだなっていうのは考えたことなかったので、すごく観察のしがいのある職業だなとは思いました」とコメント。

また、芸能記者のイメージについては「すごい張り込んでるイメージ!車とかで。人によってスタイルは違うと思うんですけど、とにかく途方もない時間を、スキャンダルを撮るためだったり、でもそれだけじゃないじゃないですか。社会的なことも取り上げたりされてますから、そういうのって時間も労力も精神的なものも削られるんだろうなっていうイメージに変わりましたね」 と話す丸山。「すげえ怖い人らなのかなってイメージだったんですけど、記者の方も自分の生活があって、家庭があったり家族がいたりっていうのもあるわけじゃないですか。そういうところの背景とかを今回考えさせられたりしました」と、自らが芸能記者役を演じることで印象が変わったとのこと。

一方、勝地は「僕も色々ありましたから。色んなことを書かれたこともありますし、憶測の記事があったり、それで苦しむ時間もありましたけど。でもこういう時に宣伝していただいたり、マスコミの方たちとは持ちつ持たれつなんじゃないかなと思っていますけども」と素直に話しながら「昔撮られた時に、あるつけ麺屋さんからめちゃくちゃかっこつけて出てくる写真を撮られたんですよ。それを聞いたら、記者の人も、他の人追ってたんだけど空振りに終わって、飯でも食おうかって行ったら、勝地が呑気につけ麺食べてたって記事になったらしいんですけど、それ誰が読んで面白いんだろう?って思いながら」と自身がスクープされたことを振り返り「でもそういうのも含めて、有名になってるというか、そういうことでもあるのかなと思ったりしたので、撮られるイコール嬉しいことでもあったりもするっていう……なんか複雑ですよね」と言葉を濁すと、丸山も「注目されてなかったら撮られないし、撮られなくなっても終わりやろうし。でも撮られたとしても終わりでもあるし」と続ける。

恒松は「ずっと外で寒い思いをしながら張り込んでる人たちっていうイメージです。あんパンとか食べながら……」と話すと、「それ刑事じゃん!」とツッコミが入り笑いが起こる一幕が。「今回の作品ではこうやって(取材陣に)マイクを向けられるシーンがあって、今、舞台上にいるみたいな気持ちになってます。こういうシーンがあるから、リアルなのか舞台なのかがちょっと分からなくなっている感じです」と、舞台中と囲み会見の光景が重なるとのこと。

芸能記者に向けて一言言いたいことはありますか?という問いかけに、丸山は「僕から言えることとしては、皆さんそれ専門で飯を食われてるわけですから。記事の質にもよるとは思うんですけど。報道すべきことはするべきだと思うし、今は忖度だったりとかも言われてますけど、信念を持ってされているのであれば、すごい素晴らしい職業だとは思うんで。記事によりますけど」と念を押しながら「良い人生を歩むためにそうやって皆一生懸命やってるんだろうなとは思うし、自分の生活としてやっていただければと思います。あんまり触れたくはないんですけど、でも僕らもお世話になってますから、こうやって現に。なのでいつも感謝しております」と述べた。

稽古場の雰囲気は「結構皆笑ってるよね?楽屋とか行き来したりとかしてます」と明かす丸山。
差し入れについては「肉巻きおにぎりをしました。(舞台が)始まってからお弁当は第2弾ぐらいは考えております。結構エネルギーがつきそうな、労働者に効くお弁当を。結構段取りが皆それぞれ多かったりとか、出演している方以外にも裏で動いてくださってる技術の方とかも汗水垂らしながらされてるんで、そういう方にも効くような差し入れにしております」と計画している様子。

役の中では親友同士という関係性である丸山と勝地は今回が初共演。(バラエティ番組での共演経験はあり)親友になれましたか?という質問に「なってないです。2ヶ月ではならないです。でもこれからどんどんなっていけたらなと」と素直に答える勝地。
すると丸山から「舞台とか演劇で言ったら大先輩だったりするので、色々と現場でアドバイスいただいたり、稽古期間中にちょっと『お前ちゃんとせえよ』っていうのはちゃんと言っていただきました」と稽古中のエピソードを明かされるも「ほら!変な切り取り方されるから!」と警戒する勝地だったが、丸山が続けて「それは劇を良くするために、もうそろそろこの段階ではダメなんじゃない?っていうのを言っていただいて。でもそうやって言ってくれる人って、僕も40なんですけどなかなかいなくて。すごくそれは嬉しかったし、助かってます」と真相を明かし、さらに「それから台本を持って行って、このシーンってどう見えた?と聞いたりするとすごい的確にアドバイスをいただいて。もちろん三浦さんの演出のもとなんですけど、ふっと見た時にどう見えるかをつぶさにアドバイスをくださるので、めちゃくちゃ助かってます」と良い関係性を築きつつあるようだった。

作品のタイトルにちなみ、丸山が所属するSUPER EIGHTがグループ名変更から2ヶ月が経った端境期(ハザカイキ)として今の心境を「グループ名を変えるのは自分たちで決断したことで、グループにとっても今年が20周年でもあるので、今回の場合は良い“ハザカイキ”になったんじゃないかなと思います。ファンの方々も一般の方々も、ちょっとくすっとしながらも応援してくださっているようなムードをこの2ヶ月の間で感じてるので」と話す丸山だが、グループ名には慣れたか聞かれると「今でも(前のグループ名を)言っちゃいますね。周りのスタッフさんとか共演者の方とかもやっぱり前の名前が出てきたりするので、それはしばらくご迷惑をかけるんだろうなというのは体感としてあります」と語る。

メンバーは見に来るのか?という問いかけには「予定はないですね。ヤスくんも舞台だし、村上(信五)くんもMCで引っ張りだこやし、横山(裕)くんも今(ドラマを)撮ってますし。大倉(忠義)はプロデュース業で忙しいし、分からないですね。でも個々の活動が充実しているのは良いことなので、あんまり無理して来ず、休む時は休んでほしいです」を思いやった。

最後に、公演を楽しみにしているファンへ向けて丸山は「今のこの時代にフィットしたような作品になってますので、すごく色んな見方ができて、題材は本当に社会的なものと思われる方も多いかもしれないですけども、1つの週刊誌の記事によって、色んな人たちがそれぞれの生活の中で何かが変化していったり、何かを受け入れたり許したり、許されたり、そういうことを思い起こせるような作品になってると思いますので、見に来られる方はじっくりと味わって帰っていただければなと思います」とメッセージを送り、会見を締め括った。

Bunkamura Production 2024『ハザカイキ』は、2024年3月31日(日)~4月22日(月)まで東京・THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズのラストを飾り、その後、4月27日(土)~5月6日(月・休)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。

<あらすじ>
芸能記者である菅原裕一(丸山隆平)が担当することになった、国民的人気タレントの橋本香(恒松祐里)と人気アーティスト・加藤勇(九条ジョー)の熱愛疑惑。リークしたのは、香の友人・野口裕子(横山由依)。
香の父・橋本浩二(風間杜夫)は人気俳優であったが、芸能事務所の社長となり、いまは香のマネージャーの田村修(米村亮太朗)とともにマネージメントをしている。香がまだ幼い頃に、不倫をスクープされ芸能界から姿を消した自身の経験を元に、香にはスキャンダルを起こさないよう諭している。勇のマンションから出てきた香を追い、菅原が入ったスナックには浩二と離婚した香の母・智子(大空ゆうひ)がいた。
菅原には同棲している恋人・鈴木里美(さとうほなみ)と、親友・今井伸二(勝地涼)がいる。菅原は里美との生活に安らぎを得、今井と会うときには仕事の愚痴を話したり、ごく普通に過ごし、そんな生活が今後も続くと信じていたが、実は二人は菅原の仕事を快く思ってはいなかった。
ある日勇がとある不祥事で芸能界を追放され、事態が急変する。勇との熱愛をスクープされた香にも芸能人としての存続の危機が訪れる。
そんな中、香は菅原に対面し、ある難題を投げつける……。