
「HERO」「アンフェア」などの大ヒット作を次々と生みだす秦建日子が23年に発表した小説『Change the World』(河出書房新社刊)は、『サイレント・トーキョー』のタイトルで映画化もされ話題となった『And so this is Xmas』の続編で、三部作構成の二作目となる。
今回秦自らが脚本を書き下ろし、過去に何度もタッグを組んでいるAsk主催により、最速で舞台化。演出は、演劇プロデュースユニット、Moratorium Pantsの主宰、橋本昭博が務め、初顔合わせとなる秦×橋本が化学反応を起こす。
とある大事件が起きた『And so this is Xmas』で描かれた世界から二年後の東京。すでに二年前の大惨事を忘れたかのような日々を送る人々と、それに怒りをもおぼえる二年前の事件の担当刑事たちが、新たな事件に巻き込まれる様を描く。
事件から二年後、新たな相棒と共に不可解な事件の連鎖に巻き込まれていく主人公のベテラン刑事を演じるのは、秦作品に共鳴し出演を決めた松岡充。
さらに、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、剛力彩芽、日向野祥、福圓美里、田中尚輝、塚本凌生、渡辺みり愛、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、大林素子、金子昇ら豪華キャストが集結。総勢27名で誰にでも起こりうる社会派ミステリ作品を創り上げる。
公演初日を翌日に控え、公開ゲネプロ及び取材会を開催され、松岡充、辰巳雄大、剛力彩芽、大林素子、金子昇、原作・脚本の秦建日子が出席。
当初、今年は音楽活動やライブに専念すると話していた松岡は「SOPHIAが結成30周年、来年がデビュー30周年ということだったのでこの2年間は芝居もお休みさせていただいてって去年の暮れぐらいまでは思ってたんですけど、全て秦先生のこの作品が悪いです」と笑顔を見せ、「この作品を読んでしまったら、それで世田というキャラクターを演じてくれないかとおっしゃっていただいたので、やってみたい!と。ミュージシャンと俳優を並行し始めてから20年なんですよ。俳優魂が疼いてやらせていただくことになりました」と作品に惹かれて出演を決めたとのこと。
ゲネプロを観劇していた秦は、世田を演じる松岡の姿に「本当にワクワクしましたし、続編もあるんですけど、ちょうどオファーした時に続編を書いていたので、その時もずっと松岡さんの世田が僕の脳内を駆け巡るんですが、でもきっと生で見ると僕の想像を超えた新しい引き出しがいっぱい開かれているんだろうなと思って、どちらの意味でもとても楽しみで。原作者冥利に尽きると思っています」と語る。
「お客さんと同じ気持ちで観て、最後の方に『さよなら古い世界の人』と(いうセリフが)あるんですけど、僕はちょっと古い世界の人で、新しい世界がこういう作品になるんだと、そういう化学反応を楽しめるのがこういう集団芸術の楽しさだと思うので、すごく新鮮な驚きと色んな想いを持ちながら楽しく拝見しました」と感想を述べ、「やっぱり舞台は役者のものだなというか、色んな光が入ったり文字が入ったり、たくさんのギミックがありますけれど、結局舞台上で生きている役者が魅力的であればこんなにも楽しく演劇というのは観られるんだなって、人って素晴らしいなって想いも改めて感じました」と続けた。
そんな秦の言葉に「作品に一番敬意を持ってやるべきだと1か月間みっちり稽古をやってきました。まだまだこれだけでは秦さんが込めたメッセージや本当の意味に辿り着けないかもしれないですけど、初めて作品と出会った時よりも1歩、2歩、3歩と近づいてはいます。偉そうなことは言えないですけど、この作品が単なるエンターテイメント、単なる舞台作品だけではなく、今、この時代を生きている僕たちや皆さんへリアリティを持ったメッセージがあると僕は本当に思っています」と熱く語る松岡。
さらに、物語の最初に出演者全員が舞台上に登場するシーンに触れ、「僕だけ一人お祈りをしているんですけど、それは演出家の方にお願いして、こういうお芝居をするんだったら、史実を含めて、テロというものの犠牲になった人たちにも、彼らたちの死が無駄にならないように、何か後世の人たちに、未来にメッセージを残すんだという先生の想いもあると思うので。亡くなられた方もたくさんいらっしゃると思うので、その皆さんの人生をお借りしますということで祈っているんです」と明かす。「もちろん楽しんで、すごい刺激をもらったなと帰ってもらいたいんですけど、心のどこかで今自分たちが生きていることの喜びとか幸せというものをもうちょっとリスペクトできるような、そういう影響を持った作品になれば嬉しいなと思っています」と呼びかけた。
さらに、本舞台のテーマソングは主演の松岡充がボーカルをつとめるSOPHIAの『あなたが毎日直面している 世界の憂鬱』。この曲について松岡は「このストーリーを読んで曲を作って書いていたんじゃないかと自分でも錯覚するぐらい、自分が書いた作品なんですけどこの作品のテーマソングになることによってもう一個自分が書いたものから教えてもらうことがたくさんあるなという新しい発見がありました」と物語とリンクしていること語り、歌詞にも触れ「(岩崎楓士演じる遠谷)未来が歌ってるって思ってるときますね。そういう風に聞いていただけたら」とアピールした。
最後に、代表して松岡からメッセージが。「正直、1か月間稽古長いなって思っていたんですけど、演出家の橋本さんを筆頭に、秦組の俳優の皆さんだったり、この3部作のシリーズを何年にも渡って支えてくださっている皆さんが骨組みを作ってくださって。僕らはどちらかと言えば外から入ってきた人間ではあるんですけど、どうやって『Change the World』という形が出来上がるのか全く想像つかない感じが、スタートからぶっちゃけ半月以上それで過ぎた気がしていまして。ただただ必死になって演出家が言うことであったり秦さんとお話させていただいたり、もう一回原作を読んだり、剛力さんはじめキャストとああでもないこうでもないとやりながら、ようやくちょっと見つけたかなって言うのが今日だったんです。劇場で初めて通したので、全然やり慣れてもないし、やり慣れちゃいけないとも思っています。11公演しかないんですけど、その瞬間瞬間、思いっきり生きなきゃいけない。これはどの舞台でも一緒だと思うんですけど、とにかく僕の20年の俳優人生の中でこれほどまでに一瞬一瞬が燃え尽きるような時間を過ごせる作品というのは無かったんじゃないかなと思うぐらい。明日とにかく走れればいいんじゃないか、それぐらいの気持ちでやりたいと思っています。ぜひ一人でも多くの方に出会っていただきたい作品だなと心から思っています」と呼びかけ、会見を締めくくった。
舞台『Change the World』は、2024年6月8日(土)から16日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて全11公演上演される。