
演出を務めるのは、2014年の『殺風景』に始まり、感染症禍の20年に一旦は公演中止となりながら、22年に復活を果たした『パラダイス』まで、5つの新作をBunkamuraに書き下ろし、演出・出演してきた赤堀雅秋。最新作となる『台風23号』では、戦後最大級の台風23号が迫る、海沿いのとある町に生きる市井の人々を赤堀独自の視点で描き出す。
本作で主演を務める森田は、「稽古で皆さんで積み上げてきたっていう気持ちが強いので、それを出せるように、荷物を一生懸命運びたいなと思います」と意気込み、自身の役柄について「とにかく時間通りに指定された場所に荷物を運ぶと、それは生きるため、っていう真っ直ぐな男だと思っています」とコメント。
そして、森田と共に主演を務める間宮は「稽古の時から自分の出ていないシーンとかをずっと見ていて、個人的にすごい好きな作品だなと思っていたので、もう自分の出ていないシーンであっても客席から観ることは無いと思うと少し寂しい気もしますが、それだけ好きだと思える作品に出演できている幸せを噛みしめながら、1個1個大事に演じていきたいと思います」と好きな作品だと語る。間宮演じる田辺はヘルパーとして仕事をしており、「自分の中では頑張っているし、人当たりも良いし、自分に正当な評価をしてもらいたいという想いが強くあって。それが会話となって見え隠れするというところになっていくんですけど」と役柄について説明した。
初共演でダブル主演となった森田と間宮。稽古を始める前と現在でお互いの印象について聞かれると、森田は「会うのをすごく楽しみにしていたんですけど、一緒に稽古を重ねてきて、その稽古に取り組む姿勢だったり、すぐできちゃう感じとか『この野郎、良いな』と思っていました。男っぽくて優しくてセンスがあって、楽しいです。一緒に芝居していて」と絶賛。一方で稽古を振り返り「僕はなかなか役を掴めずにいて、演出してもらってる時にこのままやられてたら俺泣くんじゃないかなって時もあったんですけど。でも、その時にB作さんを見たら、B作さんもそんな顔をしていたので救われました」と苦戦した様子だった。
森田の言葉を受け、間宮は「ほとんどのことは嬉しかったんですけど、すぐできちゃうっていうのだけやめてもらっていいですか?(笑)」と照れる一幕もありながら、「剛さんはとにかく色んな方から『本当に喋らない人だ』とご一緒する前に聞いて、最初に赤堀さんと食事会で話した時に「全然そんなことないよ」って言って色々喋ってくださいましたし、昨日も通し稽古の前にスタッフの方々と円になって喋っていたりして、そこはお会いする前と一番印象が変わったかもしれません」と印象の変化を明かす。「自分が稽古の時とか見てたりすると、座っているだけのところから一気にその人の今までの奥行きを感じさせるような、役者として底知れない魅力があるなってことを再認識しましたし、一緒にお芝居をしている時は、毎日稽古で同じシーンをやっても1度も同じことが起こらないというか、そこで交わす言葉の色んな模様が変わってくるところがあって、本当に一緒にやっていて楽しいです。あとは、趣味の師匠として、プライベートの方でもお世話になっています」と笑顔を見せた。
作品を引っ張る森田と間宮の姿を見た佐藤B作は「すごい若者たちだな、この人たちは僕の年になる頃にはどんな俳優になっているんだろうと見とれてしまうような素晴らしい方」と称賛した。
最後に森田が「ある街の人々たちの一生懸命生きている姿を観て、元気を出してもらって、生きようと思ってもらえたら良いなと思います」、間宮が「演じる自分もそうですけど、毎日やっていて違う感情になったりとかするので、これから見てくださるお客様一人一人の人生や日常生活によって、同じシーンを見ても大笑いする人がいたり涙がこぼれる人がいたりするような、そんな作品だと思います。この作品が大切なものになれば嬉しいです」とメッセージを送り、取材会を締めくくった。
取材会には、木村多江、藤井隆、伊原六花、駒木根隆介、秋山菜津子、作・演出の赤堀雅秋も出席した。
Bunkamura Production 2024『台風23号』は、2024年10月5日(土)から10月27日(日)まで東京・THEATER MILANO-Zaにて、その後11月に大阪・愛知にて上演される。