
『ナミビアの砂漠』『あんのこと』の2作品で主演女優賞に輝いた河合は「自分にとって大切な2本の映画とキネマ旬報の歴史に名前を残せることをすごく嬉しく思っています」と挨拶。
それぞれの作品での撮影を語る河合は、まず『あんのこと』について「実在の人生をお借りして作った物語で、その人生に触れるって時に、全員がそれぞれできる限りの力で真剣に、どうにか未来に繋がっていくように祈りながら映画が作れた」と話し、次いで『ナミビアの砂漠』に関しては「映画作りを面白がる力だったり、何か描いてみたいって志が、山中監督から現場の隅々までこう伝わっていくような、すごくワクワクした、キラキラした時間だった」と振り返った。
また、この2作品が「すごく自分の勇気になった」と話す河合は「熱い気持ちだけでは映画は作れないと思うんですけど、それでも作り手が諦めずにしぶとく高みを目指そうと思ったら、強い力みたいなものが宿るんだなっていうことをすごく確信させてくれた2本」と明かし、「世の中がすごく混沌としていて、自分の表現って仕事がどういう働きかけになってるかなってすごく迷うこともあるし、何か世界に動きがあるとどんどん見えなくなっていくような思いもあるんですけど、この2作にもらった勇気を胸にこれからも諦めずに光を探していけたらなと思っています」と意欲をみせた。
それぞれ作品を作るアプローチは全く違ったそうで「作品の色も違いますし、1人の人を演じるって時の理解の仕方だったり、体で表現しているやり方だったりは全然違った」と話す河合。『ナミビアの砂漠』では監督が脚本を書きあげる際に結構話す時間が取れたと言い「社会に今あるムードだったり、私たちの世代が自然に感じてしまってることとか、自然に持たされてる意識みたいなことが映画に落とし込まれた」と回顧。『あんのこと』では、実在の人物が主人公ということに「数年前まで本当に生きていた人のことを私たちは話すこともできないし、声かけることもできないし、そういう人のことを映画にして皆さんに届けるってことは果たしていいことなのかなってハードルを自分の中で乗り越えることが1番大変でした」と当時の心境を告白していた。
【第98回キネマ旬報ベスト・テン 受賞一覧】
<作品賞>
日本映画ベスト・テン第1位『夜明けのすべて』
(監督:三宅唱/配給:バンダイナムコフィルムワークス、アスミック・エース)
外国映画ベスト・テン第1位『オッペンハイマー』
(監督:クリストファー・ノーラン/配給:ビターズ・エンド、ユニバーサル映画)
文化映画ベスト・テン第1位『正義の行方』
(監督:木寺一孝/配給:東風)
<個人賞>
日本映画監督賞 三宅唱『夜明けのすべて』
日本映画脚本賞 野木亜紀子『ラストマイル』
外国映画監督賞 クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』
主演女優賞 河合優実『ナミビアの砂漠』『あんのこと』
主演男優賞 松村北斗『夜明けのすべて』
助演女優賞 忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
助演男優賞 池松壮亮『ぼくのお日さま』『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
新人女優賞 中西希亜良『ぼくのお日さま』
新人男優賞 越山敬達『ぼくのお日さま』
読者選出日本映画監督賞 三宅唱『夜明けのすべて』
読者選出外国映画監督賞 クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』
読者賞 斎藤環『映画のまなざし転移』