2019年12月に中国の湖北省武漢市で初めて発生が確認され、2020年に入ってから世界的流行(パンデミック)を引き起こした新型コロナウイルス。世界規模で人類が経験した新型コロナウイルスを事実に基づく物語としてオリジナル脚本で映画化した日本で初めての作品である本作。

この度、日本体育大学にて約350名が在籍する保健医療学部 救急医療学科の生徒を対象に、映画『フロントライン』キックオフイベントと題し、特別試写会が開催。試写後には小栗旬と窪塚洋介演じるDMAT隊員のモデルとなった阿南英明医師と近藤久禎医師、増本淳プロデューサーによるトークの後、生徒たちには内緒で小栗と窪塚がサプライズ登壇すると、驚きの声が上がり、拍手に包まれた。

窪塚の出演は小栗からの直接オファーだったそうで、「正直、色んなコロナにまつわる話があったりするので、一瞬警戒したところもあったんですけど、まるでドキュメンタリーのような、リアリティのある脚本であったということで、ぜひやらせていただきたいなと思いました」と当時の率直な思いを明かしながら、「ちょっと脱線するんですけど、初日のダイヤモンドプリンセス号に入っていくときのシーンで、キッチングローブが準備されていたんですよ。『これ、まずくないですか？医療用のグローブじゃないんですか？』とスタッフに聞いたら、『初日は本当にこれが間違って届いちゃって、皆キッチングローブをつけて入っていったんです」と言う話を聞いて、あそこまで徹底してリアリティを追求してやる作品なんだと安心して、そこは背中を任せて、自分がやるべきことをやれば良いなと思えたぐらい」と、とにかくリアリティを追求した脚本になっていたことを語った。

増本プロデューサーからは「二人じゃなきゃ成立しなかった」と言う言葉もあり、「小栗さんからの提案で、窪塚さんはどうでしょうというふうに言われて。芝居も心配なく、存在感も素晴らしいし、ただ、やんちゃじゃないですか(笑)」と笑いを誘いながら、「どう受け止められるのかなと思ったんですけど、脚本をお届けした時に伝えられたことは『現場へのリスペクトを非常に強く感じた。なのでやらせていただきたい』と言っていただけた。強く心を打たれて、この方々にお願いして本当に良かった」とコメントがあった。

窪塚演じる仙道行義は、近藤医師がモデルとなっている。近藤医師との会話で印象に残っていることについて、「『クラスターの現場でこういう風に座ることってありえますか？』と細かいことも聞いていて、些細なことも含めてリアリティを追求したいと思っていたんですけど、『そんなのはどうとでもしてください』『僕らも終わったらお酒を飲むこともあるし』と。真剣に命をかけて、人生をかけえてDMATに向かい合っているから、芯を食っているけど、それ以外のところが自由だったりそれぞれ個性があったりするところがとてもかっこいいと思って。お二人の生き様、生き方というのが現場での僕らのお守りというか、後押しになってくれました」と、心強い存在となっていたよう。

生徒たちからの質疑応答コーナーでは、演じる上で大事にされていた想いを聞かれ、結城へ激昂するシーンに触れ「どれぐらい激昂して良いのか、こんなにも激昂しないのかとか、そういう微調整をしながら仙道という役を作りました」と、結城とのバディ感を大事にしていたことを語りながら、「ちょっと話が脱線するんだけど、質問してくれた時に、こんなにたくさんの未来のヒーローたちが真っ直ぐ生きているんだなという思いに息を飲んだというか、いつもは劇場でお客さんに喋ることが多いんだけど、皆そうなんだと思ったら胸が詰まる思いがあります。だから本当に心から応援しますので、一緒に頑張りましょう」と、生徒からの真っ直ぐな質問に心打たれたよう。そんな窪塚の言葉に小栗が「さっきから脱線するたびに良いこと言うね」とツッコむと、ガッツポーズを見せる窪塚の姿もあった。

また、「新しいことにチャレンジするときに大事にしていること、心構えは？」という質問には「20代の頃に『俳優は俳優だけやってれば良いんですよ』ってインタビューで言ってたんですよ。今、46になるんですけど、俳優やってるでしょ。レゲエミュージックもやって、日本酒も作って、ゴルフのアパレルブランドやって、グラスを作って陶芸もやっているんです。それが全部仕事になっているんですけど、全部自分が本当にやりたくてやっていることなんですよ。こうしなきゃいけないとかじゃなくて、こうしたいからこうするっていう基準や正解を自分の中に持っていて自分軸で歩いてきたなと思うんですけど、46年生きてきた中で今が一番幸せだなと思って、そこが大事なんじゃないかなと自分なりに思っています」と笑顔を見せた。

「チラシやパンフレットでは小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介という4人がフィーチャーされている映画ではありますけど、出てくる全ての人が素晴らしくて、名もなきヒーローというか、こういう人たちが我々の生きている世界を支えてくれて、守ってくれているんだなということをたくさん感じましたし、誰も登場していないシーンで扉にメッセージが貼っていたりとか、あれですごく胸が熱くなって、目頭が熱くなってというような。人の想いであったり、細やかな優しさや思いやりで世界が満たされていったら良いなと思える作品でした」と、作品について熱く語った。