映画『死んでもいい』は、92年に劇場公開され、『GONIN』『ヌードの夜』などと共に石井隆監督の代表作の1本とされ、今なお多くのファンから根強く支持されている作品。特集上映にて、HDリマスター版で蘇る。
この度、特集上映の開催を記念し、HDリマスター版による『死んでもいい』の冒頭映像(300秒)を、特別公開することとなった。

人があまり乗っていない電車の中で、一人の少年が母親の元に駆け寄ってくる。「お母さん、雨だよ、雨が降ってきたよ!当たったろ!ねえ、どしゃ降りになるよ」と言って、興奮気味に車中を走りまわる少年に対し、「まこちゃん、そんなに走ると、また喘息が…」と心配する母親。そのふたりの親子の向かいの座席シートに、イヤホンが外れたまま寝ている青年・信(永瀬正敏)へ、カメラはクローズアップする。(実は、この母親と一緒に電車に乗っている少年は、青年・信の少年時代である、とも言われている)
終着駅の「大月駅」で降りた信は、飲み終わった空き缶を投げて、入れば左、外れれば右へ進もうと、特に行くアテもなく、行き当たりばったりの様子。投げた空き缶はゴミ箱から外れてしまったため、右の改札へ。
 大月駅の改札を抜けた瞬間、先ほどから降っていた雨は、急にどしゃぶりに。たまらずバックして駅に戻ろうといた瞬間、赤い傘を広げ、前に進んできた人妻・名美(大竹しのぶ)と激突!「キャ!」と声を出し、よろめく名美。激突した衝撃でイヤホンが外れた信は、その名美の美しさに惹かれてしまうー。この“一目ぼれ”の瞬間が、素早いカット割りと、スローモーションで表現され、その後に、本作のタイトルの「死んでもいい」が、ゆっくりと登場。この名美と信との運命的な出会いから、映画『死んでもいい』は始まる。
石井隆監督は本作のテーマについて「女と男の愛のありか(在り所)を三角関係という愛の形の中で探ろうとするものです」とコメント。純愛としての三角関係が招いた悲劇を描く。劇画家、脚本家、そして映画監督の石井隆が、幾度となく描き続けてきた、男と女の運命的な捻(ねじ)れた純愛。彼らの運命の行方はいかにー。この続きは、ぜひ、大きなスクリーンでご覧ください。

そして、『死んでもいい』主演を務めた大竹しのぶ、『天使のはらわた 赤い閃光』主演の川上麻衣子、俳優の鶴見慎吾伊藤洋三郎と、石井隆監督作品を愛した方々からのメッセージが到着。

【大竹しのぶ メッセージ】
好きな映画は?と聞かれる度に、私はいつも『死んでもいい』と答えていました。
石井隆監督にしか出せない、あの世界観がたまらなく好きでした。
美しく悲しく、淫らで、それでいて純粋で。
小さな声でボソボソと言う細やかな演出も忘れることが出来ません。
もう一度、もう一度、石井組で演技をして、監督を「ニッ」と笑わせたかった。
淋しいな。

【川上麻衣子 メッセージ】
徹夜が続く過酷な現場で、石井監督とどちらが先に睡魔に負けるか密かに戦っていたのが、つい昨日のようです。
その反面、あの頃は若かったんだなぁーと、自分の体力と精神力を懐かしくも感じます。
10日間ほどの撮影中はどこか興奮状態にあり、深夜何度も血糊を浴びては、監督の納得のいくまで撮り直したことを覚えています。
ギリギリの精神状態だからこそ、乗り越えられたのかもしれません。
少し恥ずかしがり屋の監督と、名美の魅力を語り合いながら挑んだこの作品は、激しい内容ではありますが、私にとって愛しい作品です。

【鶴見慎吾 メッセージ】
30代になりかける頃、仕事にフラストレーションを抱えていた私は、根津甚八さんの紹介で石井隆監督に出会い、『天使のはらわた 赤い閃光』の出演が叶った。
それから私はしばらく、石井ワールドの沼に嵌っていった。その沼は、雨、血、夜に満ちている。もっともっと映画を作って欲しかった。
石井隆Returnsで、新たに命を吹き込まれた過去の作品から、再び石井隆の魂を感じることができるだろう。
きっと客席の後ろの方に座っているはずだ。

【伊藤洋三郎 メッセージ】
無邪気でシニカルで天の邪鬼で饒舌で孤独で常識的で我儘で反体制で笑顔が良くて優しくて情があって頑固で、、女々しくて漢気があって、、本当はもっと映画を撮りたかったのに、、でも愛すべき人で、、何より僕達を楽しませてくれた石井隆とその映画は、、、今も生きている。

特集上映『石井隆Returns』は、6月6日(金)より、シネマート新宿、池袋HUMAXシネマズ他にて上映がスタート。
※各劇場の公式サイトにて、それぞれ上映のタイムテーブルが異なるため、公式サイトをチェックして下さい。
以下の日時、劇場にて、石井隆監督作品にゆかりのあるゲストを迎えたトークショーも開催が決定。開催期間中のトークショーには、川上麻衣子、松崎健夫、松崎まことが参加決定。新宿オールナイトには、伊藤洋三郎、 桝田幸希、屋敷紘子が登壇する。

➤ゲスト(予定):川上麻衣子
・上映作品:『天使のはらわた 赤い閃光』
・日時:6月8日(日)18:00の回
・劇場:池袋HUMAXシネマズ

➤ゲスト(予定):松崎健夫(映画評論家)、松崎まこと(放送作家・映画活動家)
・上映作品:『ヌードの夜』
・日時:6月7日(土)13:10の回
・劇場:シネマート新宿

➤ゲスト(予定):伊藤洋三郎、桝田幸希、屋敷紘子
・イベント名:特集上映「石井隆Returns」 新宿オールナイト
『GONIN』『月下の蘭』『フリーズ・ミー』上映+スペシャルトークショー
・日時:6月14日(土)22:30~翌4:40頃
・場所:シネマート新宿 スクリーン1
・作品:『フリーズ・ミー』 『月下の蘭』 『GONIN』(上映順)
・販売:劇場オンラインにて販売中 ※残席ある場合、翌日オープン時より窓口も販売