
映画『美しい夏キリシマ』の脚本を手掛けた長崎出身の松田正隆による《読売文学賞 戯曲・シナリオ賞受賞》の傑作戯曲を気鋭の演出家・玉田真也の監督・脚本で映画化した映画『夏の砂の上』。本作は、息子を亡くした喪失感をきっかけに人生が止まってしまった主人公と、妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女…それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描く、切なさと温かさが交錯する物語。また、第27回上海国際映画祭コンペティション部門への正式出品が決まっている。
キャストには、主人公・小浦治を本作で共同プロデューサーも務めるオダギリジョー、治の姪・優子を髙石あかり、治の妻・小浦恵子を松たか子、優子の母で治の妹・阿佐子を満島ひかり、優子へ好意を寄せる・立山を高橋文哉、治が働いていた造船所の同僚・陣野をフォークシンガーの森山直太朗、同じく同僚・持田を光石研が演じている。
この度、痛みを抱えながらも小さな希望を見つけていく登場人物たちの関係性を描いた3種の特別映像が解禁。
治と優子の共同生活を切り取った「伯父と姪編」では、アルバイト先での人間関係がうまくいかず、思い悩む優子に「気に入らない人と話しても楽しくないだろ」と、不器用ながらも必死に父親代わりを務めようと優子に向き合う治の姿を描く。そんな治の不器用な優しさを受け、優子も次第に心を開いていく。未だ息子を亡くした深い悲しみから立ち直れずにいる治に寄り添う優子の姿も。痛みを抱えた2人の関係性が少しずつ変化していく様子を捉えている。
そして「夫婦編」は、治と別居中の妻・恵子の関係性を映したもの。恵子は、息子を亡くした悲しみからなんとか立ち上がり人生を歩き出したいが、同じ方向を向いて歩むことができない治に対し、苛立ちを募らせている。息子と3人で暮らした幸せな日々が記録されたアルバム。治は自問するかのように「自分たちに本当に子どもがいたのだろうか」と恵子に問いかける。修復がつかない所まできてしまった夫婦が辿り着く先とは――。
また、「恋編」では、優子と優子に思いを寄せるアルバイト先の先輩・立山との恋模様が描かれる。東京からやってきた年下の大人びた優子に惹かれる立山は、休日の度に優子を誘い、街に出かけるようになる。立山に被るようすすめられた麦わら帽子をかぶり、立山と並んで歩く優子。愛されることに慣れていない優子は、まっすぐに想いをぶつけてくる立山に対していつもどこか所在なげ。二人の恋の行方はーー。
夏の砂のように乾ききった心に沁み込む一筋の希望の物語、映画『夏の砂の上』は7月4日(金)全国公開。