
たった80年前、平和な海が戦場だった時代、数々の激戦を最前線で戦い抜いた駆逐艦「雪風」は、僚艦が大破炎上していく中、絶えず不死身ともいえる戦いぶりを見せ、主力である甲型駆逐艦38隻のうち、ほぼ無傷で終戦を迎えたのは「雪風」ただ一艦のみだった。映画『雪風 YUKIKAZE』は、その知られざる史実を背景に、太平洋戦争の渦中から戦後、さらに現代へと繋がる激動の時代を懸命に生き抜いた人々の姿を、壮大なスケールで描き出す。
「雪風」艦長・寺澤一利役の竹野内豊、先任伍長・早瀬幸平役の玉木宏、若き水雷員・井上壮太役の奥平大兼ほか、戦火に立ち向かう乗員たち。早瀬の妹・サチ役の當真あみ、寺澤の妻・志津役の田中麗奈、志津の父・葛原芳雄役の益岡徹、帝国海軍軍令部作戦課長・古庄俊之役の石丸幹二、そして、実在した第二艦隊司令長官・伊藤整一役の中井貴一ら豪華俳優陣が、今を生きる私たちへとメッセージを繋ぐ、この夏に全国公開される最大級の感動巨編。
この度、行われた完成報告イベントには、主演の竹野内豊、玉木宏、奥平大兼が登壇。
役を演じる上で竹野内は「現代を生きる中でふと命の尊さを感じることはあっても、自国を守る駆逐艦の艦長として乗務員だけでなく、関わる全ての大切な人たちの命を守らなければいけないと、その重責というのは容易に想像できるものではなかったです」とし、「実際に始まって、一人一人船員のキャストの方々と一緒にお芝居をする中で、一致団結した姿に支えられて、いつの間にか皆に艦長にしていただけたような感じです」と語る。
「撮影が始まる前に横須賀基地にスタッフの皆さんと行きまして、そこで停泊しているやまぎりの内部を見学させていただいて、その時に操縦室の中で実践さながらの模擬戦闘の模様を拝見させていただきました。その時に、号令をかける時の口調やイントネーションは戦時中から今も受け継がれていて何も変わらないと。それは非常に演じる上でとても大きい参考になりました」と役作りに向け、実際に海上自衛隊に見学に行ったことを明かした。
先任伍長という役どころについて玉木は「船のことを知り尽くしているので、現場の人間観を大事に演じたつもりではあります」と話し、完成した作品を見て「戦争がテーマなので命の尊さは伝えたいことではありますが、中盤の艦長とのシーンで『普通が良いな』とおっしゃられるのですが、その普通というのは、僕らが日常を生きているとそんなに危険な目に遭うこともないですが、人によっては普通のレベルは違うと思います。今、目の前にあることのありがたみや幸せがしっかり伝わると嬉しいなと思います」と述べた。
若き水雷員を演じた奥平は「台本を読ませていただいて、本当に知らないことだらけで。学生時代に戦争のことを勉強してはいましたが、正直学校のテストのために覚えていることが大きくて。そういうふうに覚えたことが、台本では当時のことが詳細に書かれていて、若い人の視線として、この映画を通して若い人に届けられたら良いなと思いながら撮影に挑んでいました」と撮影への姿勢を話す。また、本作のナレーションも担当しており、「僕で良いのかなと思っていましたが、後半に艦長と先任伍長に向けてメッセージがありますが、僕が読めて良かったなと思えて。井上としてちゃんと船の上にいれた証拠でもあると思いますし、井上が言うことで先の未来の人に繋げている意識が持てたので、僕に任せてくださってすごくありがたかったですし、その意味に添うことができたら良いなと思っていました」と、思い入れを語った。
本作が初共演となる竹野内と玉木。お互いの印象について聞かれ、竹野内は「役柄の設定上、現場で多くを語ることはなかったんですけど、第一印象としては鍛えられた肉体と、現場で響き渡る声、その全てから風格が滲み出ていたので、初めから先任伍長としてそこに存在している印象でした」と語る。対する玉木は「イメージは大きく変わらなかったですが、非常に物腰が柔らかく穏やかで、本当に繊細な優しさを持った方だなと思って」と話し「ここに来る時、車のエアコンの吹き出し口を1個ずつ触って、ちゃんと後ろに届くように調整してくださって、そう言う優しさを持たれた、すごく接しやすくて穏やかにお話ができる先輩だなと思います」と具体的なエピソードも披露。
また、奥平も二人とは初共演となり、玉木とは上司と部下の関係性でもあったことで、印象的なシーンを聞かれると「夜中に船の点検で初めて先任伍長と二人きりでプライベートのことを話すシーンがあって、すごく居心地が良かったのを覚えています。あのシーンがあったおかげで、上司であり兄貴的存在ではありますが、言葉にするのは難しい不思議な絆を感じて、だからこそ井上は先任伍長をよく見ていたり、先任伍長への想いが強かったと思います」と振り返る。
玉木も同じシーンが印象に残っているとしながら、「その関係値を作る上で、冒頭に彼が命を落としそうになっているところを手に取って救うところから始まっているので、それから雪風に乗り、彼の心の変化をすごく感じられる作品かなと思います。奥平くんが演じることで彼のまっすぐさと相まって、本当に素晴らしい演者です」と演技を賞賛した。
艦長の立場から竹野内は「雪風の船員たちはたとえ上官であろうと意見を言えたり、冗談も言い合える、当時自由が許されなかった時代にしては珍しい、良い関係性だったと思います。それはお互いが強い信頼があったからこそできることであって、それぞれ日頃から相手に対して敬意を持ちながら自分自身も信念を持っているという、そういったことは現代に置き換えてもものすごく大切なことなんじゃないかなと思います」と語った。
最後に、一人ずつメッセージ。
奥平は「色んな方に見ていただきたいのはもちろん、僕としては特に若い人たちにも興味を持っていただきたく、僕が知らなかったことがたくさんあって、色んなことを知ることができて良かったと心の底から思えるので、見てくださる若い人たちにも思ってほしいです。今回は雪風のお話ですが、当時は色んな船であったり、海の上だけではなく空や陸、色んな人たちが必死に生きた結果が今の日本だと思うので、その人たちが今の日本を見て良かったなと思えるような世の中であってほしいと思うので、そのためには色んな人に見ていただいて、そういう世の中になっていけるような考え方に慣れればすごく嬉しいです」と若者へ言葉を送る。
玉木は「たった戦後80年、という言葉があるように、まだ80年しか経ってないというところで、戦争を知らない世代に届いたら良いなというところと、戦争は繰り返してほしくないですが、今を一生懸命楽しく生きて、この映画を通してまた未来に繋がっていけば良いなと思っています」と述べる。
最後に竹野内は「今となっては少し遠い昔のような話ですが、決して単なる歴史の1ページとして終わらせてはいけないような気がしています。私たちは資料や体験談から学ぶことがあったとしても、絶対に本当の戦争の恐ろしさを知り得ることはできないと思います。当時の生きた人々の心情を皆さんと一緒に体感することによって、より深く皆さんの心の中に情景として記憶に残せるんじゃないかなという思いを込めて、スタッフ・キャスト一同でこの作品を作りました。多くの方々に広く届くことを願っています」と締め括った。