
宮沢りえ主演『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞・報知映画賞など多くの映画賞を席捲、二宮和也主演『浅田家!』では、国内の大ヒットのみならずフランスでも大ヒットを記録した中野量太監督が5年ぶりにメガホンを執り、脚本・監督を務めた最新作は、作家・村井理子氏が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ「兄の終い」をもとに映画化した『兄を持ち運べるサイズに』。絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる家族のてんてこまいな4日間の物語を描いている。
マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公の理子を演じる、柴咲コウ。家族を振り回す原因となる、映画史上稀にみるダメな兄ちゃんを演じるのは、オダギリジョー。兄と一時は夫婦でありながらも、ある理由で離婚した元嫁・加奈子を演じるのは、満島ひかり。兄と加奈子の娘で両親離婚後は母と暮らす満里奈を演じるのは、青山姫乃。二人のもう一人の子供で最後まで兄と暮らした息子・良一を演じるのは、味元耀大。
公開に先立ち、完成披露試写会に登場した柴咲。公開の約4ヶ月前に完成披露上映会が行われるのは異例と言われているが、初披露の場を迎え、「いつもだったら色んな細かいところが気になって客観的に見られないんですけど、今回はそういうのが全くなくて。村井理子さんを演じているんだけど、ある意味自分と切り離して見られて、1つの家族のことで色々悩んだりしている1人の人物を演じられたんだと、不思議な感覚です」と、自身が作品を見た感想を話し、「それは、自分も家族がいて、家族に対する思いがあって、形や家族構成、立場は違うんだけど、そういうのをぼんやりと思い浮かべながら見たっちゃったのかなって。皆さんもそういったところに思いを馳せながらご覧いただけるんじゃないかと思います」と語る。
また、脚本を読んだ際の心境を「その役をまとって自分が動いている姿が想像できるかというところで、自然とできちゃったんですよね。あとは、自分が持っている家族像と現実の家族との折り合いだったりを思い返せる、すごく素敵な脚本だったなと覚えています」と振り返る。
この作品を通して家族の在り方も考えさせられたとし、「昨年ぐらいから自分の撮影スタイルや環境づくりを再構築していて、そういう時に自分の家族の想いも入り込んできて、撮影しているのに自分のプライバシーの部分が織り混ざって、マーブルになっていったなと思います」と述べ、「自分の仕事のスタイルもそうだけど、自分の本音や家族との在り方が浮き彫りになってきたというか、直視できていなかったんだなと気づかされました。家族もこの映画を見るので、見てもらってからちょっと家族会議したいです」と微笑んだ。さらに、「この映画に関わらせていただいて、自分の不器用さ、口下手なところに目につくようになったんです。この作品を通じて学んだ点なのかなと思います」と、自分を見つめ直すきっかけにもなったようだった。
完成披露上映会には、柴咲のほか、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、中野量太監督が登壇した。