
本作は、1989年にイギリス最高の文学賞であるブッカー賞、2017年にノーベル文学賞を受賞し、二つの世紀を代表する小説家となったカズオ・イシグロの鮮烈な長編デビュー作「遠い山なみの光」を、『ある男』(22)で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞含む最多8部門受賞を果たした石川慶監督が映画化。
戦後80周年となる2025年の夏にスクリーンに描かれるこの物語は、終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない「傷跡」と、未来を夢見る圧倒的な「生」のパワーが渦巻いていた時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描き出す。先の見えない時代を生きる私たちに前へ進む勇気をくれる、感動のヒューマンミステリーだ。
この日のイベントには、1950年代長崎時代の悦子を演じた広瀬すず、悦子が長崎で出会った不思議な女性・佐知子役を演じた二階堂ふみ、1980年代のイギリスで暮らす悦子を演じた吉田羊、長崎時代の悦子の夫・二郎役を演じた松下洸平、二郎の父・緒方役を演じた三浦友和、石川慶監督が出席した。
会場からの割れんばかりの拍手で登場した広瀬、完成した作品の感想を聞かれると「なかなか言葉がすっと出てこなくて、だんだん紐が緩んでいく感じというか、急にキュって縛られるような姿もありました」と話し、特に印象的だったシーンについて「登場人物に出てくる女性たちの顔がこどんどん重なって見えてくる、すごく不思議な感覚で…見ていただいたら言いたいことがわかってもらえるような気がするんですけど、ずっしりと受け止めるものがたくさんありました」と作品への思いを明かした。
また本作で10年ぶり2度目のカンヌ国際映画祭に参加した広瀬だったが感想を聞かれると「すごい今回言っていただけるんですけど、あんまり10年前の記憶がなくてですね、この世界に入ったばっかりだったので、カンヌ国際映画祭という大きさとかすごさみたいなものの全然わからないまま遠い海外でできるみたいなテンションでいたんですよ」と苦笑いしつつ「今思えばあの時の自分殴ってやりたいくらい贅沢な経験だったんですけど、10年前も覚えてる記憶として街ごと映画愛に溢れてる。そしてすごく素直な方が多いから、悪いものは悪い、良いものは良いって評価をちゃんとその場で感じれるっていうのを覚えていて、だからこそカンヌって映画愛に溢れてる街だなと思いつつ、とても素敵な反応をいただけた姿をその場で見てすごい夢のような時間だったなと時間が経って今改めてそう思えるので、ほんと素敵な経験をさせていただきました」とカンヌでの思い出を振り返っていた。