
今回解禁されたのは、山田杏奈演じる寄河景の清廉さと危うさの二面性を切り取った場面写真4点。
普段の景は誰とでも明るく接する学校のヒロイン的存在で、転校してきた宮嶺(長尾謙杜)とは正反対の性格。だからこそ自身には無い魅力を感じ、興味を持ち、「どんな私でも守ってくれる?」という約束を交わして恋が始まる。一途に関係を育んでいたふたりだが、同級生の不審死をきっかけに、宮嶺の心に“景が殺人犯かもしれない”という疑念が生まれる。
教室で宮嶺に対して優しい眼差しを向ける景のカットと、打って変わって印象ががらりと変わる陰りを帯びた横顔のカットからは、内面を簡単に明かさない景の純粋な恋心と疑念への余白がそのまま表情に現れ、ただ佇むだけで強い存在感を放っている。
教室から離れた場所でクラスメイトとふたりきりの空間でじっと手を見つめる景のカットは、淡々とした冷静さと、支配するような不穏な雰囲気が漂う。“景の本心は一体どこにあるのか?”と観客に思わせるようなミステリアスさが、この瞬間の視線に凝縮されている。
宮嶺を見据えるカットでは、景に対して疑念とわずかな恐怖を抱く宮嶺に対して「好きだからこそ信じてほしい」と言わんばかりの景の凛とした強さが眼差しから感じられ、瞳の奥に悲しみが見え隠れする表情から宮嶺への純粋な恋心も汲み取れる。

そんな景を演じる山田は、『ミスミソウ』(2018)で映画初主演に抜擢、『樹海村』(2021)や『ひらいて』(2021)などで、揺れ動く10代の複雑な感情を振れ幅豊かにむき出しにする演技で映画ファンを惹き付けた。一方、本作では見せないことによって観客を惹き込む演技を披露。“可愛らしさ”と“危うさ”という要素を両立し、台詞に頼らない目線や表情の揺らぎを繊細にコントロールし、独特の存在感を放っている。第48回日本アカデミー賞では優秀助演女優賞・新人俳優賞をW受賞し、俳優としての確かな評価を確立した山田は、巧みな“余白”に意味をもたせる演技で、観客を惹きつけて離さない。真っ直ぐな視線と、どこか触れるのが怖くなるような透明さを持つ景というキャラクターは、山田自身がこれまで積み上げてきた“静かな強さ”を軸にしながらも、これまで以上に複雑な感情が必要になる。この演技が成り立つのは、観客に“考えさせる間”を与えられる俳優だからこそ。本作の監督の廣木隆一も「不安定さと強さを併せ持つ景という役を、自然に演じている。本当に今の映画界が求める役者さんだと思います」とコメント。本作での映画ファン待望の二面性のある役柄は、さらに進化した山田の演技と魅力が最大限に引き出されている。恋と疑念が交差する物語がたどり着く“切なすぎるラスト4分”とは?山田が演じる景の“本心”とは?観る者の心を揺さぶる、山田の俳優としての新境地に注目だ。