本作は、長年ブロードウェイの第一線で活躍したコメディ作家、ニール・サイモンが残した“B・B三部作”と呼ばれる自伝的作品。第二次世界大戦を経て青年となった主人公・ユージンが、家族への愛情と失望の狭間で揺れ動きながらも夢に向かう姿を描いた三部作の完結編『ブロードウェイ・バウンド』を、PARCO劇場では36年ぶりに上演。

本作の演出は、数々の賞を受賞し今最も注目を集める演出家・小山ゆうな
主演は、アーティストとしてはもちろんのこと、舞台作品にもコンスタントに出演する佐藤勝利。2021年上演のB・B三部作『ブライトン・ビーチ回顧録』(東京芸術劇場プレイハウス)に続き、再びのタッグとなる。
佐藤勝利演じるユージンの母親・ケイトに松下由樹、父親・ジャックには神保悟志、兄・スタンリーには入野自由、とユージンの家族が前作より続投。叔母・ブランチには小島聖、祖父・ベンには浅野和之と実力派が新たに加わる。

公演初日を翌日に控え、行われた開幕前会見に登壇した佐藤は、「明日、初日の幕が開きます。緊張感もあるんですけれど、お客様に楽しんでもらえるようにエネルギッシュにいきたいなと。4年ぶりに家族でまた再集結して、温かい現場で楽しくやらせていただいていますし、今回から浅野さんと小島さんに参加していただいて、すごく刺激をいただきながら、一緒に舞台ができること、すごく楽しみだなという思いがあります」と意気込む。

本作の魅力を、演出を務める小山は「3作品とも本当にとても素晴らしい戯曲なんですけども、それぞれに持っているカラーが違って。この作品はニール・サイモンが59歳の時に書いた作品なので、幼少期の自分を振り返っていた最初の作品から比べて、仕事をし始めたユージンという佐藤勝利さんが演じるニール・サイモン自身の役を俯瞰してみながら、あとはお父さんもおそらく自分の今の年齢に近く、そこでニール・サイモン自身がこんなふうにお父さんを思っていたのかなという発見もある、大人の作品というところが一つ魅力としてあります」としながら、「あとは、第二次世界大戦を経ての作品なので、ブライトンビーチの時は結束していた家族だったんですけど、そこで家族の価値観がちょっとずつ変わって、揺らいで、バラバラになって、家族内でちょっとした戦争みたいなものが起こっていて。でもそれをユージンは常にユーモアを持って見ているので、結構辛いシーンもいっぱいあるんですけど、そこに必ずユーモアがあるところがとても魅力的だと思うんです。その作品を本当に素晴らしい俳優さんたちが集結して作っているのが、稽古場でも毎回楽しかったです」と語った。

4年ぶりに家族が集結したことについて、佐藤は「4年ぶりに同じ家族を演じさせていただいたので、稽古初日の独特な緊張感とか初めましての感じは今回全くなかったので、すごくありがたいなというか、良い空気感で稽古をさせていただきました。特に自由くんとは兄弟役で、最初に台詞を合わせる時から、ああこんな感じだったなと、すぐ兄弟が出てくる感じがして嬉しいです。4年経ってまた同じ家族が集まれるということも、奇跡と言ってもいいかもしれないので、ご一緒できることが本当に嬉しいです」と、喜びを滲ませる。

続く松下も「また皆に会えるんだという思いで、本当に嬉しかったです。当時はコロナ禍だったので、普段のコミュニケーションがなかなか取れなかったのですが、今回は舞台上以外もコミュニケーションを取れる環境だったので、さらに結束が強くなって、皆とも距離が近づいて、すごく良い現場に居させてもらえているなという安心感と、さらにお芝居がしやすくなったのが何よりありがたかったです」とコメント。

入野は「また家族として集まった時に、変な緊張感がなく、前ってこうだったよね、なんて思い出話や、こんなんだったっけ?なんて、4年前の話とかをしながら作れたので、どういう家族なのかという最初の段階をスキップしてできて、より深めることができたのが一番大きいのかなと思っています。作品が終わった後もテレビや色んな場所で皆さんを見て、家族としての絆をずっと感じていた部分があったので、またこうやって集まれて、一緒にお芝居ができるというのは本当に幸せなことだなと思っています」と、家族の繋がりを感じていたことを明かす。

そして神保は「また同じメンバーで同じ役ができるのは奇跡みたいな感じで、一番最初に小山さんにお話をいただいた時に飛び上がって喜びました。しかも続編ということで時間経過もあり、勝利くんと入野くんのリアルな成長に大変驚いていて、大人になったなと感じました」と息子たちの成長を実感し、「今回はそこに浅野さんと聖さんを迎えて、本当の家族のように稽古も進みましたし、これが明日からの本番でどういう風に開花するのか、僕自身も楽しみにしています」と期待を寄せる。

本作からの参加となった小島は「あまりにも家族の結束力が強いと、そこに入っていくのが大変だなと、ちょっと疎外感を感じていたんですが、全くそんなことはなく、居心地の良い、すごく良い現場でした。初日の挨拶で浅野さんが『俺がいなかったらこの家族は生まれていない』という話をされて、まさにそうだなと。稽古場でも浅野さんがコミュニケーションを取ってくださって、助かっています」と感謝を伝え、続けて浅野が「皆さんが今まで培ってきた中に入っていくのはそんなに難しいことではありませんでした。本当に仲が良くて、すごく受け入れてくれて、楽しくお仕事できました」と話した。

テレビ番組の占いで“相性が良い”と言われていた佐藤と松下。稽古を通して、佐藤は「4年前も相性良いなと思いながら、今回は特にお母さんとのダンスのシーンがあって、そこは文字通り息が合わないと素敵なシーンにならないので、慣れないジャンルではありますが、息の合うシーンになっているかと思いますので、ぜひ見ていただきたいです」とアピール。
その言葉に松下も「4年前にまだ子どもだったユージンが大人になってて、その成長の度合いと、今回は時代も変わって家族の関係性も変わっていくんですけど、唯一ユージンに母親が昔の話をしたり、というところもまた見せ場になるんですね。そこのダンスシーンで、勝利くんと稽古を重ねていって、変な緊張感とかもなく素直にお互いできているので、私もちゃんと委ねられてすごくやりやすいなと思っていました」と明かした。

会見の最後に、代表した佐藤が「4年前の『ブライトン・ビーチ回顧録』から三部作目の『ブロードウェイ・バウンド』、前回見ていただいた方にとっては同じ家族で見れるというのはなかなかない演劇体験になるかなと思いますし、初めて見ていただく方にも、ニール・サイモンの作品を、少し毛色の違った人間深い部分が見られる、舞台って面白いものだなと作品だと思うので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います」とメッセージを送った。

PARCO PRODUCE 2025『ブロードウェイ・バウンド』は、9月4日(木)~28日(日)まで東京・PARCO劇場、10月2日(木)〜13日(月祝)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールにて、上演される。