
MOJOプロジェクト(Musicals of Japan Origin project)は、「日本発のオリジナルミュージカルを世界へ」をテーマに、ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一がタッグを組んで立ち上げたプロジェクト。
待望の第2弾となる『どろんぱ』は、日本固有の文化とされる“妖怪”を題材に物語を紡ぐ。古来より人々は、自然災害や疫病など人知を超えた出来事に直面するたび、愛する存在を理不尽に奪われ、恐れや不安を抱えながら、その苦しみの原因をどこかに求めてきた。そこには愛情や祈り、恐怖、嫉妬といったさまざまな感情が渦巻いているが、そうした「目には見えない想い」こそが、人が生き抜くための原動力でもある。その感情を“妖怪”という存在に託すことで、自らの心と折り合いをつけてきたのだ。
今作では、互いに孤独を埋め合うように出会った“妖怪”と“人間”の関わり合いを軸に、“親子の愛と絆”を描き出す。観る者をまるで異世界へと誘うような耽美で幻想的な世界を、末満ならではの演出で舞台上に立ち上げる。
作詞には、近年では海外ミュージカルの訳詞や劇団☆新感線の作詞など舞台での活躍も目覚ましい森雪之丞。作曲・編曲・音楽監督には、舞台『千と千尋の神隠し』の音楽監督・指揮を務めたことでも記憶に新しい、深澤恵梨香を迎える。
さらにこの度、本作の根底を表現する重要なミュージカルナンバーの作曲を和田唱が手掛けることが決定。『のだめカンタービレ』で繊細かつドラマティックな作曲が高く評価された和田によって、『どろんぱ』が放つメッセージがさらに深く表現されることだろう。
主演は、ミュージカルをはじめ数々の話題作に出演する小池徹平。共演に、次世代のミュージカルスターとして頭角を現す屋比久知奈。小池が演じるのは、屋比久演じる人間の遠野爽子(とおのさわこ)に憑りつき「爽子の夫・遠野薫」だと思い込ませる煙の妖怪・烟々羅(えんえんら)。末満作品初参加の二人が、妖怪と人間という歪な夫婦をどのように演じるのか、注目したい。
そして、この度発表のキャストが演じるのは、年に一度の祈願祭《どろんぱ》に集まる個性豊かな妖怪たち。
憑いた家に繁栄をもたらす座敷童子を本作がミュージカル初出演の生駒里奈、人間を襲って食らう猫又を木内健人、日本全国に勢力を広げる河童を東島京、欲望のままに行動する犬神を加治将樹、さらに、混沌から生まれた妖怪・九尾狐(きゅうびこ)を土井ケイト、人の欲望をかき立てる天邪鬼を相葉裕樹、妖怪の総大将・滑瓢(ぬらりひょん)を吉野圭吾、そして、どんな願いも叶えるが代償に、死後、地獄に落とす妖怪人形神(ひんながみ)を真琴つばさが演じる。
<あらすじ>
煙の妖怪である烟々羅(えんえんら)(演・小池徹平)は人間の姿に化けて、爽子(さわこ)(演・屋比久知奈)というひとりの女性に憑りついていた。爽子に「自分の夫・遠野薫(とおのかおる)」だと思いこませた烟々羅は、彼女とともに神隠しの伝承が残る深い森へとやってくる。爽子は行方不明となった自分の娘をさがすうちに、その森へと足を踏み入れたのだ。
だが、そこは神隠しの森などではなかった。時代の流れとともに信仰や畏怖する心が失われた現世から追いやられた妖怪たちの吹き溜まりの森であった。
森の様子はなにやら慌ただしい。現世から《どろん》と消えてしまった妖怪たちが、再び現世に《ぱ》と現れるための年に一
度の祈願祭、《どろんぱ》がまもなく催されようとしていたのだ。
福の神である座敷童子(演・生駒里奈)、日本全国に伝承が残る河童(演・東島京)、ひねくれ者の猫又(演・木内健人)、欲望のままに行動する犬神(演・加治将樹)、神聖さすら漂わせる九(きゅう)尾(び)狐(こ)(演・土井ケイト)、得体の知れない天邪鬼(演・相葉裕樹)、墓場の土から生まれた人形(ひんな)神(がみ)(演・真琴つばさ)、そして妖怪たちの総大将である滑(ぬらり)瓢(ひょん)(演・吉野圭吾)。
烟々羅と爽子を待ち受ける運命とは。今宵、妖怪たちの百鬼夜行がはじまろうとしていた。
【末満健一 コメント】
歌や踊りなどの表現は人類が言葉を獲得する以前の古代からあったとされています。近代的なミュージカルの原点は1927年にブロードウェイで上演された『Show Boat』とする説があります。日本においてブロードウェイ産ミュージカルが初めて上演されたのは1963年の『マイ・フェア・レディ』。そして今日に至るまで、日本中のあらゆる劇場でミュージカルが上演され続けています(戦時下やコロナ禍を除けばですが)。海外からの輸入ミュージカルだけではなく、日本オリジナルのミュージカルを製作するという機運も高まっているのを感じます。MOJO(Musicals of Japan Origin)プロジェクトもそのひとつです。第一弾である『イザボー』の上演後、この日本という国にいながら次にどんなミュージカルを創ればいいのか? 様々な人たちと意見交換をしながら、思案し続けました。そしてたどり着いたのが、原作なし、史実ベースでもなし、日本固有の題材で、日本人クリエイターで、「0」から「1」を立ち上げるミュージカル製作に取り組むという試みです。日本の神道に基づくアニミズムや民間伝承から生まれ出た「妖怪」という題材を胸躍るミュージカル・エンターテインメントとしてお届けしたい。そんな想いから『どろんぱ』は出発しました。素晴らしいキャストやスタッフと共に、『どろんぱ』なる妖怪絵巻が蠢きはじめています。どうぞご期待ください。
【森雪之丞 コメント】
「世界にも通用する日本発のオリジナル・ミュージカルを!」という渡辺ミキさんの心意気に打たれ、参加させていただくことになりました。
僕自身オリジナル作品を5本立ち上げてきましたが、楽曲の打ち合わせに毎回プロデューサー自らが立ち会うという熱い創作現場は、なかなかあるもんじゃありません。
末満さんが操る日本古来の妖怪たちが、自分のキャラソンを歌いながら、森に迷い込んだ人間との不思議な物語を進めていく。妖怪たちに暴かれた人間の哀しみと愛おしさを映しながら、深澤さん、和田さんのメロディーにのせて、僕の言葉の旅も続きます。
【深澤恵梨香 コメント】
古くから伝わり、人々の想いが多種多様な姿を持った「妖怪」。私たちにとって身近な存在でありながらも実際に存在はしない「妖怪」に音楽を書くだなんて!
台本を初めて拝読した時の興奮、衝撃は忘れられません。
末満さんが長年したためてきたこの作品を音楽で彩る事ができる事をとても光栄に感じましたし、そして森雪之丞さんとのコラボレーション!ひとつひとつの言葉から想いが紡ぎ出され、メロディーと重なり、楽曲に命が吹き込まれていく瞬間はいつも、この作品を早く皆さまに観ていただきたい気持ちでいっぱいになります。
「妖怪」という日本独自の文化を、オリジナルミュージカルとしてお届け出来る事は、誇らしくもあり、もちろん、責任も感じます。身の回りで起きる不可思議な出来事、不安、恐怖、などの気持ちから生まれ、今も生き続ける「妖怪」の想い、「どろんぱ」の世界を存分に味わっていただけます。是非劇場でお楽しみください!
【和田唱 コメント】
今回、この作品の重要な位置を担うという2曲の作曲依頼を頂きました。はじめは他の曲との馴染み方を心配しましたが、今作の全体の作曲を手がけるのが、僕が作曲を担当したミュージカル『のだめカンタービレ』でオーケストレーションを務めてくださった深澤恵梨香さんということで、安心感もあり、引き受けさせて頂く運びとなりました。
そして作・演出の末満健一さんとお会いし、物語に込められた真意を伺うと、とても共感するものがありました。日本人の誰もがかつては持っていた、見えない存在を信じ、敬う心。それが現代では…
そんなところをベースにファンタジーを織り交ぜて展開されるストーリーは、日本発のミュージカルとして非常に相応しい内容だと感じました。
2曲とはいえ、自分にとって2度目となるミュージカルの大切な仕事となります。心を込めて作りました。キャストの皆さんの声が乗ることで、どんな魔法がかかるのか、今からとても楽しみにしています。
【遠野薫(とおのかおる)役/実は烟々羅(えんえんら) 役 小池徹平 コメント】
このたび新作ミュージカル『どろんぱ』に参加させていただくことになり、大変光栄に思っております。
物語の細部はこれから広がっていく段階ですが、素敵なキャスト、スタッフの皆さんと共に新しい世界観を創り上げ、お客様にワクワクと感動を届けられるよう全力で臨みたいと思います。
ぜひ劇場で体感していただけたら嬉しいです。
【遠野爽子(とおのさわこ) 役 屋比久知奈 コメント】
『どろんぱ』というタイトルを聴いた時、どんな話になるんだろうと純粋に心がくすぐられて、惹きつけられました。小さい頃、妖怪が出てくる物語を好きで読んでいたのを思い出して、その不思議な世界に自分も仲間入り出来ることにわくわくしています。オリジナルミュージカル初演ということで、きっとクリエイティブな現場になるんだろうなと。個性と実力あふれるキャストとクリエイターの皆さんとの時間がとても楽しみですし、そこに私自身も沢山アイデアを持っていけるように、引き出しをいっぱい作って臨みたいと思います!!