世界的名作である「ピーターパン」の小説版を、ロンドンで注目の若手作家であり演出家のエラ・ヒクソンがウェンディの視点から翻案し2013年に英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの新作公演として上演され、台詞に加えてダンスやフライング、小道具、美術、映像などを駆使した“フィジカルシアター”のスタイルと、スペクタクルとマジカル満載の美しい舞台が話題となり、2015 年にはウエストエンドでの再演も果たした。
待望の日本初演となる今回、ロンドンでの初演・再演でも演出を務めたジョナサン・マンビィが演出を手掛け、世界的に有名な「ピーターパン」のファンタジックな世界観から現代社会に通ずるテーマを浮き彫りにしていく。

タイトルロールであるウェンディとピーターパンを演じるのは、今回が初共演となる黒木華とHey! Say! JUMPの中島裕翔。
さらに、ウェンディの弟・ジョンに平埜生成、マイケルに前原滉、ティンクに富田望生、タイガー・リリーに山崎紘菜、海賊・スミーに玉置孝匡、ミセス・ダーリングに石田ひかり、そしてフック船長とミスター・ダーリングの二役には堤真一と、若手からベテランまで多彩な魅力を持つ豪華なキャストが結集した。

東京公演初日に先駆けて取材会が開催され、黒木、中島、堤が出席。

今作が初共演となる黒木と中島。
お互いの印象を聞かれ、中島は黒木について「セリフに「かわいくて静かな顔」とあるんですけどそのまんまで、それでいてどこかも勇敢でたくましさもありながら、ちょっとお茶目なユーモアさもある。黒木さんが持っている全ての要素がウェンディにすごくぴったり」と称賛。
対する黒木も「中島さんは身体能力が高くて、ピーターパンの身軽さとかやんちゃさとかを兼ね備えているのですごく合っている」と返した。

配役を聞かされた時の心境を尋ねられると、中島は「誰もが知っているピーターパンの役をやらせてもらえると思っていなかったので、びっくりしました。Hey! Say! JUMPの中にいると割と子ども扱いされるので、そういった部分は合っているのかなと」と笑顔で話しながら、「28歳にもなってピーターパンを無邪気に演じられるか不安はあったんですけど、稽古をしていく中で色んな人とコミュニケーションを取ったり関係性を観察したり、話を聞いたりする中で、自分の感情が動いたことに気づきながら、ピーターパンに活かせたらなと思いました」と語る。

稽古中、”ジップザック”というゲームを通してカンパニーの仲を深めていったことを明かし、稽古場の雰囲気を聞かれた黒木が「年齢が近い人たちも多いですし、すごく和気あいあいとしていましたね」と話すと、「僕は一番年上で、ちょっと端っこにいました」という堤の発言に、中島が「そんなわけないじゃないですか!いつも笑いの中心ですよ!」とツッコミを入れる一幕も。

そして8月10日に誕生日を迎えた中島は当日のエピソードを聞かれ、演出家・ジョナサンが「今日は通し稽古が終わった日、そしてもう一つ特別な日です」と声をかけ、皆から祝福を受けたと語り、「8月の誕生日は、学生の頃は夏休みなので大勢の人に祝ってもらえなかった。より特別な感じられてすごく嬉しかったです」と嬉しそうに話した。

物語で注目されるのがフライングシーン。
普段、コンサート等でフライングをする機会がある中島は「歴史ある劇場で出来るのはまた違った景色ですし、アイドル活動より長く飛んでいるなっていう感じがします。久々に飛ぶと気持ちいいです」と微笑んだ。
黒木のフライングには、「男性が飛ぶ感じと女性の飛ぶ感じは全然違って、素敵です」と絶賛する中島に、黒木が「いやいやいや……」と照れる場面も。

そして、中島と堤による殺陣のシーンも見どころになっているが、「年齢的にも57歳ですので、立ち回りの手が覚えられない……」と苦戦したことを明かす堤。「昨日の稽古でも3か所ほど頭が真っ白になりまして……」と申し訳なさそうな堤に「戦ってて思いました。「あ、今忘れてるな」って(笑)」と告白する中島があった。

意気込みを聞かれ、黒木は「本当に素敵な舞台になっているので、こういう状況ではありますけれど、見に来てくださる方はこの時間だけでも心の底から楽しんで帰っていただけたらと思います。見どころがたくさんあるので、『ウェンディ&ピーターパン』に浸かりに来てください」、中島は「人を楽しませることとか、エンタメの力は皆さんに届くものがあると思っています。この舞台を見ていただいた方には、毎日どうなるか分からないというストレスを発散出来るような、色々な要素が詰まっている。純粋に楽しみに見に来てほしいです」(中島)と、それぞれコメント。

堤は「21、22歳の頃、『天守物語』という坂東玉三郎さんの舞台で黒子をやっていた時に、舞台の空間の美しさや自由さ、「こんなにぶっ飛んだ世界が出来るんだ」ということを感じて役者として舞台に関わろうと決めました。『ウェンディ&ピーターパン』はそのときを思い出すぐらい素敵な舞台で、見るたびに涙が出るんです。ピーターパンと聞くと子どもの作品と思うかもしれませんが、女性の自立というテーマもありますし、多くの人に見ていただきたいです」と舞台の魅力を語った。

本作は8月13日から9月5日まで東京・Bunkamuraオーチャードホールにて上演される。

取材会写真撮影:引地信彦
舞台写真撮影:細野晋司