
日本をはじめ世界中に大きな影響を与えた名匠・黒澤明と、その多くの作品で主演を務めた三船敏郎。この二人が初めてタッグを組んだ映画「醉いどれ天使」は、戦後の混沌とした時代に生きる人々の葛藤をいきいきと描いた作品。
映画公開の約半年後に舞台作品として上演されたという記録があり、当時の舞台台本は長い間眠っていたが、近年偶然にも発見され、2021年に舞台化。大盛況のうちに幕を閉じた。そしてこの度、25年舞台版として『醉いどれ天使』の上演が決定。
21年版に続き脚本は、骨太な物語を生み出し人間を深く描き出す力に定評のある蓬莱竜太。演出はジャンルを超えて活躍の場を広げている深作健太が務める。
闇市を支配する若いやくざ・松永に挑むのは6年ぶりの主演舞台となる北山宏光。共演には渡辺大、横山由依(Wキャスト)、岡田結実(Wキャスト)、阪口珠美、佐藤仁美、大鶴義丹と、日本のエンターテインメントシーンを牽引する錚々たる顔ぶれが揃った。
北山は「この歴史ある作品に携われること、とても嬉しく思っておりますし、この令和にまた産み落とすことにとても意味を感じております。とても楽しい現場で、自分なりの松永を演じていけたら良いなと思いますし、観てくださった方に何か心に残るもの、そしてそこからまた咀嚼して、体に染み込んで、考えていただける作品を目指して作っております」と挨拶。
渡辺は「歴史ある作品に参加することができて、本当に光栄に思っています。伝統的な作品ではあると思うんですけど、深作さんがパンクにロックに色んな演出を入れてきて、令和版・新解釈『醉いどれ天使』になっているんじゃないかなと思います。稽古は追い込まれているところもあるんですけど、ここからどんどんパーツが繋ぎ合わさって、初日を迎えるんじゃないかと、その日を楽しみに、今、楽しく稽古させていただいています」と稽古の手応えを語る。
横山は「戦後すぐのお話ではあるんですけど、今の時代とリンクするところがあると、稽古をしながら感じています。主演の北山さんをはじめ、深作さんが稽古場の雰囲気をとても穏やかに明るく作ってくださっているので、稽古場に行く足取りがすごく軽いです。エネルギッシュな作品になると思いますので、皆さんにしっかりとエネルギーをお届けできるように。ぎんは舞台の中ではよりお客様と近くなれる存在なんじゃないかなと思っているので、そこをしっかり担って、努めていきたいなと思います」と意気込む。
岡田は「私ごとなんですけども、ずっと舞台に出させていただきたいと思っていたので、その時がやっと来て、初舞台でこんなに素敵なキャストの皆さんと、演出の深作さんと、脚本の蓬莱さんと、お芝居できるという日常を噛み締めております。素敵なものを届けられるように頑張ります」は力強く話す。
阪口は「日本映画史に残る名作で、こんなにも素敵な豪華なキャストの皆様とスタッフの皆様とやらせていただくということで、実は今もすごく緊張でいっぱいなんですけども、残りの稽古で緊張を自信に変えていけるように、奈々江の生きる力や強さをステージで出せるように一生懸命頑張りたいと思います」緊張の面持ちを見せる。
佐藤は「初めて脚本を読んだ時に、なんて男臭い作品だと。それで読み込んでいるうちに、なんて色気がある男たちだろう、なんて色気がある女たちだろう、なんて強い人間たちの生き様の作品なんだろうと思う中で、楽しめたら良いなと思っています」とコメント。
大鶴は「戦後、新しい人生に向かおうとする松永の元に、ある種戦前の任侠みたいな感じで邪魔をして、悪のラスボスみたいな感じなんですけど、松永を地獄に引き摺り込むように頑張って稽古しております」と話した。
闇市の界隈に住む人々を診る町医者で、北山演じる松永を診ることとなる真田を演じる渡辺は「映画や前の舞台では(松永と真田は)親子のような感じだったんですけど、僕と北山くんは歳が1個しか違わないので、どちらかというと歳の離れた兄貴ぐらいな感じで関係性を作っていこうと思っています。真田が持っているファミリーの中に、松永も入ってこいよと、天使になれるんじゃないかなというようなことを意識して。エネルギッシュな真田に方向性を持っていって、それが非常にフィットしながら、ここ数日やっと光が見えてきて、この光で出口が見えるのか、模索しながらこれからやっていくんじゃないかなと思います」と、本作ならではの関係性を築きながら演じようとしており、北山の印象は「非常にクールでかっこいい松永をやっているところがあって、それは大病を患っている怖さの裏返しというところもあるので。明と暗がこの作品には出てくるので、僕はとびきりの明で引き摺り込んでやろうと、常に意識しています」と語る。
居酒屋で働く、松永と同郷の幼馴染・ぎんは、横山と岡田のWキャストとなる。横山は「自分のことだけではなく、相手に対しても温かい気持ちを生み出せる人だと思うので、そういった部分を演じられたらと思います。映画を見させていただいて、舞台の脚本を読んでぎんの印象が自分の中でだいぶ変わったんですね。舞台版では深く掘り下げられているので、松永に対する思いや松永の気持ちをどう動かせるかが、そこを作っていくのが楽しい部分ではあります」と話し、岡田も「ぎんの夢や愛情、思いの深さを感じて、自分が追いかけているものに向き合う力はそう簡単に真似できないなと思うんですよね。私は結構諦めちゃう部分があるので、今回の舞台は諦めず、ぎんみたいにとことん向き合えるように、松永や自分を変えていける人になっていくのを表現できたらと思っています」と役について語る。
物語にちなみ、松永を演じる北山の心をどうやって動かしていくかを聞かれると、岡田が「稽古場でパリパリするお菓子を食べていらっしゃるんですよ。『このお菓子良いな!』って。そのお菓子を与えておけば良いのかなと(笑)」と、稽古場での様子を明かし、北山が「餌付けじゃん!(笑)」とツッコミを入れる場面があった。
舞台『醉いどれ天使』は、11月7日(金)から23日(日)まで東京・明治座、11月28日(金)から30日(日)まで名古屋・御園座、12月5日(金)から14日(日)まで大阪・新歌舞伎座にて上演。