©2025映画「TOKYO タクシー」製作委員会

解禁されたメイキング写真には、倍賞と木村、山田監督がロケ撮影中に楽しそうに談笑する様子や、木村がタクシーを運転する様子、蒼井優とイ・ジュニョンがダンスホールで踊る様子、そしてクランクアップを迎えた山田監督が倍賞と熱いハグを交わす様子など、熱い想いをもって撮影に臨むキャスト陣の姿が映し出されている。
2025年2月にクランクインを迎えた本作では、柴又や横浜でのロケ撮影に加え、本編の大半を占める走行中のタクシー車内でのシーンの撮影には“バーチャルプロダクション”(セットの中に置かれたタクシーの周りを取り囲むように立つLEDパネルに車窓の風景を映し出しながら撮影する技法)という山田組にとって初となる技術も活用された。倍賞の初日となった2月5日には、すみれが高齢者施設に向かうために家を出てくるシーンから撮影がスタート。「どことなく謎めいたお金持ちのマダム」という、これまで山田組で演じてきた役柄とはまったく違った人物像を演じるとあって撮影前の打ち合わせ時点から強いこだわりを見せていた倍賞は、二度の衣装合わせの末に決まったという鮮やかな紫色のコートとサングラスを身にまとい、司法書士役の笹野高史との軽快なやり取りを繰り広げた。午後には木村も合流し、柴又帝釈天の山門前に着いた浩二のタクシーにすみれが乗り込むシーンが撮影された。クランクイン前に実際の個人タクシーの運転手から指導を受けて所作や運転の練習をしていた木村は、撮影当日に「最初のテスト撮影から運転してみてもいい?」と颯爽と車に乗り込むと、トランシーバーでやり取りしながら実際のコースを走行。テストの後にはスタート位置まで自分で運転して戻り、本番の撮影も見事一発OKを決めてみせた。

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2月17日からは、休みを挟みながら2週間ほどかけてバーチャルプロダクションスタジオでの撮影が行われた。木村はLEDウォールに流れる車窓の風景に合わせてウィンカーを出したり、ハンドルを回したりブレーキを踏んだりしながら、カメラが正面にあるときにはわずかな隙間から映っている道を見ながら運転するなど、慣れないバーチャルプロダクションによる運転シーンの撮影でも所作をなおざりにせずタクシー運転手役を見事に演じてのけた。制作発表会見で「木村くんの素の魅力を盗み撮りたい」と語っていた山田監督は、台本を書き直したり何度もテイクを重ねて撮ったりとタクシー車内での会話シーンに並々ならぬこだわりを詰め込み、木村と倍賞もそれに応えたことで、すみれと浩二が車内で会話
を繰り広げるシーンはとても印象的なものになった。撮影の待ち時間には倍賞と山田監督が昔の話を始め、木村も加わって3人で並んで話す姿がたびたび見られた。何日もセットに籠って続く撮影でも二人は大変そうな様子をまったく見せず、劇中ですみれと浩二の距離がだんだんと縮まっていったように、倍賞と木村も3月に入る頃にはおいしいお店を教え合ったりと、すっかり打ち解けていた。

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また、若き日のすみれの人生が描かれる過去パートの撮影は、日数こそ少ないものの密度の濃いものとなった。山田監督はすみれの夫・小川(演:迫田孝也)のキャラクター造形にかなり腐心し、知人の精神科医・名越康文に話を聞いたり、セットの飾りを何度も考え直したりと工夫を凝らしながら、現代パートとは画調も撮り方も変えて撮影が行われた。オールアップとなる最後の撮影は、若き日のすみれ(演:蒼井優)とキム(演:イ・ジュニョン)がダンスホールで踊るロマンチックなシーン。横浜の古いダンスホールを借りての撮影だ。蒼井とイ・ジュニョンは、ダンス指導の先生との練習日を本番前に1日だけ設けて、全体を合わせてから当日を迎えた。山田監督が「(蒼井)優ちゃんとのキスシーンもあるんだよ」とからかって言うと照れて恐縮していたイ・ジュニョンだが、撮影になると真剣そのもの。頼りがいのあるイ・ジュニョンとの撮影に蒼井も楽しそうな笑顔を見せていた。無事にオールアップを迎えた撮影現場にはサプライズで倍賞と迫田が現れ、クランクアップの花束が倍賞から山田監督へ渡された。50年以上の付き合いになる倍賞との熱いハグを交わした山田監督は、「今までいろんな映画を撮ってきたけど、今回はひとしおだね。無事にこの日を迎えられるか、クランクインの時は心配だった。だけど、スタッフの力でここまでたどり着くことが出来ました。どうもありがとう」と帽子を取って頭を下げた。全キャスト、スタッフが真剣に、かつ和やかに仕事をした2か月間だった。

<クランクアップコメント>
■倍賞千恵子
「もう撮影に来なくていいのか」という気持ちと、「終わってしまって寂しい」という複雑な気持ちで、わーい!という気持ちになかなかなれないのはとても不思議です。私はいつも、映画は照明さんやカメラマンさんなど全員が同じスタートラインに立って、「よーいスタート!」で一つの山を登っていくことだと思っています。久しぶりの手応えを感じる山田さんの演出で、素敵な山登りができたと思っています。こんな素敵なスタッフの皆さんに会えることはなかなか無いと思います。
■木村拓哉
今回の作品での撮影現場での自分の役割や責務はひとまず終わりました。『TOKYOタクシー』という駅伝のコースがあったとしたならば、宇佐美浩二というキャラクターの部分の区間を走りきって、次の走者にたすきを繋いだという気分です。他の作品はクランクアップの時に“終わった”という作品との決別のような、作業の終了をいつも感じるのですが、今回に関しては、たすきを繋げてよかったなという気持ちです。