
「孤狼の血」の柚月裕子による同名小説「盤上の向日葵」を原作に、坂口健太郎と渡辺謙の魂の演技バトルで魅せるヒューマンミステリー『盤上の向日葵』は、とある山中で発見された身元不明の白骨死体。手掛かりは死体とともに発見された高価な将棋の駒。捜査の末、その駒の持ち主は、将棋界に彗星のごとく現れ時代の寵児となった天才棋士、上条桂介だと判明する。さらに捜査の過程で、桂介の過去を知る重要人物として、<賭け将棋>で圧倒的な実力を持ちながら裏社会に生きた男、東明重慶の存在が浮かび上がるー。
公開に先駆けて行われたジャパンプレミア。レッドカーペットイベント後の舞台挨拶に登場した坂口は「日本の方々に見ていただくのが初めてなので、ちょっと緊張していて、ふわふわした感じもありますが、今作は登場人物たちの生き様を丁寧に切り取った作品だと思っています」と語る。アマチュアからプロ棋士へと異例の昇進を遂げた天才棋士・上条桂介の役どころについては「壮絶な生い立ちと、この作品の中で降りかかってくる悲しい出来事、苦しい出来事があるんですけど、桂介が能動的に自分からアクションを起こすというより、巻き込まれていく人間だったんですね。だから、役として生きている間は、その空間の中で役として生きることはすごく大事にしながら演じさせていただきました」と振り返る。
将棋指しとしては超一流だが人間として最低な伝説の賭け将棋の真剣師・東明重慶を演じた渡辺は、「久々にいい加減でめちゃくちゃな男をやらせていただきました。多分、あんまり好きにはなれない役だと思います。一貫性のないことこの上ないので、こいつ、本当のこと言ってるのかな?みたいな。信用しなくていいです。僕の役のことは」と客席に呼びかけながら「1番向こうの人(音尾)が1番嫌な奴で、僕は2番目ぐらいに嫌な奴です。本当に一貫性がないので、結構楽しんでやっていました」とやりがいを感じていた様子。
そんな坂口と渡辺は本作が初共演となるが、お互いの印象を聞かれると、坂口について渡辺は「割と似ている部分が多いんですよ。すごくオープンマインドで、現場が好きだし、作品が好きだし、スタッフのことも好きだから現場に行くのが楽しいと。だから僕も、一緒に現場に行きたくなるんです。そういう感覚を持った、すごい稀有な俳優」と話すと、隣の坂口が「これは嬉しいですね!」と笑みを隠しきれない様子。
対する坂口は「すごく軽やかな方なんだなというのは、お会いして改めて思いました。本読みでお会いする前までは“ケン・ワタナベだ”という認識もあったので、実際にお会いしてお芝居をさせていただいた時に、飄々とされている瞬間もあるし、そこにどっしりといてくれる感覚も感じたので、今まで思っていたことを、良い意味で『謙さんってこんな方なんだ』と改めて思い直される瞬間はありました」と返していた。
本作は、先月開催された釜山国際映画祭のワールドプレミアでもひときわ大きな歓声を浴び、屋外メイン会場に集まった4,500人もの観客を魅了しスタンディングオベーションを受けたが、坂口は「熱気がすごかったし、4,500人の方達と一緒に自分の映画を見るのは経験がないので、ちょっと恥ずかしいです」と振り返り、渡辺も「釜山は3回目なんですけど、映画をメイン会場で見させてもらったのは初めてだったんです。舞台で2000ぐらいの劇場で演じるのと、スクリーンで4,500人のお客さんがいるのを一緒に見るのは、どういうリアクションになるんだろうと、ちょっとドキドキしました。壮観でした」と感想を述べた。
舞台挨拶では、“これ無しでは生きていけない、イチ推しのもの”をテーマにフリップトークも行われた。
ジャパンプレミアには、坂口健太郎、渡辺謙のほかに、佐々木蔵之介、土屋太鳳、高杉真宙、音尾琢真、小日向文世、熊澤尚人監督が登場。