Ⓒ2025『恋に至る病』製作委員会

現在全国公開中の映画『恋に至る病』。内気な男子高校生・宮嶺(長尾謙杜)と、学校中の人気者・景(山田杏奈)という正反対のふたりが惹かれ合い、初恋のように純粋で危うい関係を深めていく物語。「この恋は、純愛か、洗脳か――」というセンセーショナルなコピーが象徴するように、物語の奥に潜む“純愛”と”洗脳”の境界線が観る者の心を強く揺さぶっている。公開後はSNSを中心に反響が拡大。「初めは洗脳だと思っていたのに、観終わったら純愛にしか見えなかった」「青春の中に潜む違和感と恐怖がリアル」「観るたびに解釈が変わって色んな感情が生まれる」など、若い世代を中心に考察が相次ぎ、この秋、最もピュアで刺激的なラブストーリーとして、熱い支持が広がっている。
「純愛か、洗脳か――」その二面性をより際立たせているのが、劇中に登場する“ブルーモルフォ”というゲームサイトの存在だ。ブルーモルフォとは、ゲームマスターから送られてくるミッションをプレイヤーが一つずつこなしていくというもの。徐々に内容は過激化し、最終的には死に至らしめる自殺教唆ゲームである。このゲームに景が関与しているのではないかという疑念を抱きながらも、それでも好きな人を信じたい――。そんな宮嶺の揺れる想いが、物語をより痛切なものにしていく。

そして今回解禁された本編映像は、宮嶺が景に対して発した“唯一のわがまま”――「美玖利先輩(中井友望)の自殺を止めてほしい」という願いを叶えるため、景が学校の屋上に向かうシーンから始まる。屋上の淵に立ち、今にも飛び降りそうな美玖利に対し、景は「先輩」と声をかける。「どうして来たの? 私が死ぬって知ってるの?」と驚き、「どうしよう。ここから飛び降りなきゃいけないのに、景の顔を見たら死にたくなくなっちゃった」と揺れる心を吐露する美玖利に、景は静かに「だったら死ななくていいじゃないですか」と答える。一度は自殺を止められた経験のある美玖利は、屋上の淵から降りて景に静かに歩み寄り、「私を助けて、またみんなにチヤホヤされたいんでしょ。あんたのことなんか大っ嫌い!」と吐き捨てる。その瞬間、場の空気が一変し、映像は不穏な緊張の中で終わる。

Ⓒ2025『恋に至る病』製作委員会

この屋上シーンは、解禁となった会話シーンの後にいくつもの衝撃展開が続き、約5分におよぶ長回しで撮影された。撮影直前まで雨が降っていたが撮影直前には雨が止むという奇跡も起こり、山田は「地面の水たまりを制作部の方々が総出でスポンジで吸い上げてくださって、映画作りは地道な作業の積み重ねで成り立っているんだなとあらためて思いました」と感謝を語る。複雑なシーンを描き切ったこの長回しは、なんとわずか2テイクでOKが出たそうで、廣木監督の演出のもと、キャスト・スタッフ全員の集中力が極限まで高まった撮影現場の臨場感が、スクリーンからも伝わってくる。
そして、このあとふたりの運命を決定づける“ある瞬間”が訪れる。そこから先に待ち受けるのは、観客の想像を超える〈切なすぎるラスト4分〉。果たして、その先にあるのは“純愛”なのか、“洗脳”なのか―。ふたりがたどり着いた結末の先にある真実を、ぜひ劇場で確かめてほしい。