本作は、特撮番組の脚本執筆やUMA(未確認生物)研究家としても活躍している中沢健の作家デビュー作で、大槻ケンヂ、切通理作、枡野浩一など多くのサブカル関係者ほか、児童文化作家の那須正幹や直木賞重受賞作家の朱川湊人からも絶賛され、2016年にはテレビドラマ化。さらに、2025年8月から小学館のオリジナルコミックアプリ「マンガワン」でもこやま仁によるコミカライズの連載がスタートした異色の恋愛小説『初恋芸人』が映画化。

売れないピン芸人・佐藤賢治は、怪獣ネタで舞台に立ちながらも鳴かず飛ばず。彼女いない歴=年齢で、妄想の世界にだけ居場所を見つけていた。嫌な相手を怪獣に見立て、自分をヒーローとして戦わせることで心を保ってきたのだ。そんな彼の前に現れたのが、市川理沙。佐藤を「面白い」と言ってくれる彼女との時間は、初めての恋のときめきに満ちていた。しかし、不器用な佐藤は想いを伝えられないまま、市川から距離を置かれてしまう。やがて明かされる市川の秘密――これは、何かになりたかった人たちに捧げる、「何者でもないもの」の物語。

初主演作が公開となり、今の心境を原は「撮影したのが1年半前ぐらいなので、ここまで長かったなという感じです。今日から皆さんに全国で見ていただけると思うと、もうワクワクが止まりません。皆さんの力をお借りして、ぜひ盛り上げてくださると嬉しいです!」と呼びかける。

印象に残っているシーンを聞かれると、「サブスクとかが出たら確認してほしいんですけど、43分20秒からの長回しのシーンがあるんですよ!」と細かい時間指定が。「僕も見直して久しぶりに思い出したんですけど、カフェのシーンが5分弱の長回しなんですけど、ゆっくりアップになっているそれだけのシーンで、一発OK出ちゃって、監督に『本当に大丈夫ですか!?』って」と、心配になった原と沢口が監督を呼び出したことが明かされ、夏目監督は「初めはカット割りする予定だったんですけど、お二人の緊張感が続いて、これは一発で見せた方がいいんじゃないかと」と、二人の演技に引き込まれた故の長回しだったことが語られる。原自身も「二人の間とか声の使い方、緊張感がすごい伝わるシーンに結果的になって、良いシーンになったなと思いました」と手応えを感じており、「一発OKだったんですから!」と再度観客にアピールし、拍手をもらっていた。

原が演じる賢治の同期で、漫才相手役でもあったハニトラ梅木は賢治との漫才シーンをあげ、「何回もネタ合わせもしました。だんだんやっていると、原さんもものすごく“お笑い感”が良いので、アドリブを入れてくるようになって、それに合わせて僕もちょっとつっこんだりするのが、本当の漫才と同じで」と、本当の芸人さながらの漫才が繰り広げられたそう。原は「撮影日以外に稽古の時間も取って、空き時間には練習させていただいて、役を通り越したコンビネーションが生まれました。自然とアドリブをしちゃったり、それを受け入れて拾ってつっこんでくれたりというのが、関係性がすごくできた撮影期間だったなと思います」と振り返る。
さらにハニトラ梅木から「ちょっと注意していたのが、本当にお笑い感が良いので、面白くなりすぎるなよと。売れてない芸人ですから。最初の頃はどうしてもリズムが面白くなっちゃうからダメですよと」と、売れてない感じを出すアドバイス受けていたそうで、原も「一言一句細かくチェックしてもらって、『この言い方だとちょっと面白くなっちゃいますよ』『もっと間を取ってみましょう』とか」と気をつけていた様子。そんな原に「みるみる面白くなくなっていくんで、すごいなと思いました」と感心するハニトラ梅木だった。

舞台挨拶の最後に、代表して原から「佐藤賢治が中心で回っていくストーリーなんですけど、心情がリアルで、芸人が売れたいって思っていながらも、本気じゃないじゃんってむずむずする映画なんですけど、それってすごく日常のリアルじゃないですか。リアルなスピードで進んでいく物語が、逆に、今立ち止まっている人がいたとすれば、すごく気付かされることが多いんじゃないかなと、そんな作品になっていると思います。少しでも多くの方にこの物語が届いてくれれば良いなと心から願っております」とメッセージが送られ、「たくさんエゴサするんで、“#初恋芸人みた”で、ぜひ盛り上げていただけたらと思います!」とハッシュタグをアピールした。