2011年の初演以降世界中で上演され続け<現代戯曲の最高傑作>との呼び声も高い本作は、2019年には作者ダンカン・マクミランがさらに戯曲をブラッシュアップし、ロンドンのオールドヴィック・シアターにて、マット・スミス、クレア・フォイというスターキャストにより上演され大きな話題を呼んだ。

本作は、舞台セットや音響、照明などに頼らず、二人の俳優、演出家をはじめとするクリエーションチームの想像力、そして観客の想像力のもとに創り上げられる。
若いカップルが“子供を持つべきか”という問題に直面することを発端に、人生を変えてしまうような大きなできごとから、日常のほんの些細なことまで、人は何を想い、考え、立ち止まり、そしてまた前に進もうとするのか。自分たちの物語として、誰しもの心に強く響く特別な作品が、いよいよ東京での上演が始まる。

日本初上陸となる本作の演出を務めるのは谷 賢一。

主演は、今作が初の単独主演となるジャニーズWESTの神山智洋。共演は、舞台だけでなく映像でも幅広く活躍し、作品ごとに様々な表情を魅せる奥村佳恵。

公開ゲネプロ後の取材会には、神山、奥村、谷が登壇した。

まず、ゲネプロを終えた感想を聞かれ、「11月の初めに大阪で板を踏まさせていただいて、そこから約1ヶ月空いて東京グローブ座での公演が始まるんですけれども、なかなか舞台で1ヶ月空くって無いんですよ本当に。やっぱ稽古しながら、今日のさっきのゲネプロとかも結構思い出しながらやってたところもあるんですけれども。でもこの舞台を出来ることの喜びであったり、誇らしさであったりを噛みしめながらゲネプロをやっていたんですけど、東京の全23公演を見てくださった皆様に何か届けられるもの、考えさせてあげられるきっかけをたくさん与えていけたらなと思っております」と語る神山。

奥村は、「大阪公演で10ステージ踏んだんですけど、未だにうねり続けているというか、安定しているものではなくて、むしろどんどん振れ幅が大きくなっている感覚があって、振り落とされないように必死なんですけど、神山さんが安定感と安心感をもたらしてくださっているので、私は大暴れ出来たら良いなと思ってます」と、コメント。

演出の谷からは、「私は夜のステージの前にちゃんとダメ出しをしようってところで。大阪で初日2日目だけ見て離脱してしまったんですけど、本当に変化や成長が見られたし、東京で稽古を重ねる中でも日々見違えて変わっていく作品なんですね。今日のゲネプロと本番でまだ伸びしろがきっとあると思いましたから、まだ完成と思わずに、しっかり最後の仕上げを頑張ろうと思っております」と、作品の成長に期待を寄せる。

100分間、休憩もなく喋り続ける神山と奥村の姿があり、演じている側として相当しんどいのでは?と記者からの質問に、神山は「出演者が2人しかいない舞台ですし、照明であったり、音響であったりで時間経過の表現も一切無し、セットもこの円形のステージだけっていう、色んなものを削ぎ落とした本当にシンプルな舞台になっているので、どっちかのセリフが止まれば舞台も止まるっていうすごいドキドキしながら僕ら2人ともやってて」と、本作の特徴に触れながら、「でも大阪で本番をやらせていただいて、そこから稽古期間も合わせたら2ヶ月以上一緒に力を合わせてこの作品を作り上げてきているので、もう反射的にセリフが出るぐらいまでになってきてます。人間らしさというか、男女のカップルの痴話喧嘩がベースになっているのを、お客様にこの世界観に入って来てもらって、覗き見てもらう感じです。ここの舞台の上は二人だけの世界っていうのもあるので、僕たちもドキドキワクワクハラハラしながら100分を走り抜けている感じですかね」と話す。

奥村の方がセリフ量が多くて大変ではないか?と聞かれると、神山が「舞台終わった後はプール入ったぐらい疲れるって言っていました」と明かし、そんな奥村は「なんか眠たくなるんですよ。プール入った後って眠たくなるじゃないですか?まるでそのように、終わった後は本当に眠くなるんですよね……。」と、かなり体力が消耗することが伝わってきた。

台本を初めて見た時を振り返り、神山は「2つ前にシェイクスピアの『オセロー』って舞台でイアーゴーという役をやらせていただいて、その役がシェイクスピアの中でも1,2を争うぐらいセリフが多いっていう風に言われていて、そのセリフをちゃんと覚えて、実際1か月間やり切ったので、もうこれが出来たから怖いものないやろ!と思ったら、全然違うタイプの怖いものが来ちゃって」と、そのセリフ量に圧倒されたようで、「一人語りと二人でやり取りするって全然感覚が違うんですよ。どっちかと言うと一人でワーって喋ってる方が自分で物語を進めていけるし、整理出来るので、喋りやすいところが正直あるんですけど、会話となると相手の会話を聞いた上で自分の会話を発信するっていうやり取りが成立しないといけないので、自分だけのセリフじゃなくて、本1冊覚えるくらいの感じで僕はやってたんですけど。最初見た時は「なんじゃこれ」って思いました。「すげー本来ちゃったな、おい」って」と、当時を振り返る。

この量のセリフの覚え方について、神山は「色々ネットで調べて、例えば勉強する時とかって蛍光マーカーで線引くじゃないですか?どの色が記憶に適しているのかっていうのを調べて、赤とか引く方多いんですけど、赤って興奮する色やからやる気が出るけど記憶にはならないんですって。青が集中する、落ち着く色だってことで、僕の台本真っ青です。」と、明かす。
さらに奥村も覚え方を共有し、二人とも台本が真っ青なことが判明したが、奥村は「その方法を教えてもらって、私も用いて蛍光ペンで台本にラインを引いたんですけど、途中でインクが無くなって、絶望しました。買いに行く道でもハァ……って思いながら新しい蛍光ペンを買いに行きました」と苦労を語った。

また、本作は海外の作品ということで、二人同時に喋るシーンもあり、その難しさを聞かれると「そこは日本人とはちょっと違う感覚はありますよね。日本人って例えば僕が喋ってて、佳恵ちゃんがパって喋りだしたら多分僕止めると思うんですけど、(『LUNGS』は)海外の作品なので、海外の作品とか見てたら、俳優さん同士が一緒に喋ってるみたいな、そういうイメージなのかなっていうのは『ジュラシックパーク』見てて思いました。ちょうど覚えてる時期に金曜ロードショーでやってたんですよ!それ見て、あ、こういうことか!って」と、意外なところで作品の理解が深まったようだ。

神山にとって本作が舞台単独初主演。座長らしさは出ているのかという質問に、谷からは「現場に対する気遣いっていうものはすごいある方だと思うんですけど、気を遣ってる感じを見せないように気を遣ってくれるので、恩着せがましくないというか。全然意識してないけど頑張ってるんだろうなっていうところがありました。当然のように努力して結果を出してくるんですけど、裏でやっぱり自分がしっかりしなくちゃって思って、それを出さずにやっているのはすごいなと思いました」という言葉が。

奥村からは「私が初めましてで本読みした段階で、本読みなのに台本を閉じたままセリフを言っていて余計絶望したんですけど(笑)。正直役作りに関しても私が参加したその日にはもうほぼこの状態でいらっしゃって、相当こんな脚本なので、私もすごいうろたえたんですけど、万全な状態で常にそこにいてくださったので、あり方自体がこの作品の精神的支柱です」と言われると、「ありがとうございます!」と嬉しそうな神山。

神山自身も「あまり周りに気遣うとかは意識はしてなくて」と話し、「やっぱ楽しく仕事したいんですよね。あまりピリピリした現場が個人的にそんなに得意じゃなくて、やっぱ関西人として培ってきたものを開放しないとダメだなと、やっぱジャニーズWESTでいると時は他の6人もめっちゃおもろいので任せちゃうんですけど、そのグループから飛び出して培ったものがちゃんとあるなら、それは生かすべきだろうっていうのはどこかであるかもしれないです」という、関西人ならではの想いを語る。

ジャニーズWESTのメンバーは見に来るか問われ、「桐山(照史)はすごく楽しみにしてくれてて、「早く見たい、楽しみ」って言ってくれました。あと、小瀧(望)が大阪までわざわざ見に来てくれて。すごい興奮してて、公演終わったその日の夜中にメールで「やばい、喋りだしたら止まらへん。興奮してる」みたいなことが来て。実際会った時に感想聞いて「素晴らしかった」って言ってくれたので……。やっぱメンバーにも頑張ってる姿は見せたいっていうのもあるので……メンバーに褒められたいです!」と、メンバーからのリアクションに期待する姿が。

そして、この一年を漢字で一文字で表すなら?という質問には、「個人的にもそうなんですけど、グループとしても、エンタメ業界っていうのも含めて僕は”前”って字がふさわしいんじゃないかと思って」と答えた神山。
理由として、「去年はフルキャパでエンタメをお届け出来るのがなかなか難しくて色々制限もあったんですけど、今フルキャパで入れられるっていうのもそうですし、舞台やライブも、テレビも元も形を取り戻してきてて、どんどん前に進んでるな、良い方向に向かっているんじゃないかなっていうのはすごく感じてますし、今年はジャニーズWESTとして上半期はライブツアーをやらせていただいて、そこで全員でソロ曲やってみたり色々挑戦して、下半期はドラマとか舞台とかバラエティー、色んな方面で個々が活動させていただいて、一年通して走り抜けた7周年やったなと思うので、僕は”前”と言う字がふさわしい、前進した一年でした」とまとめた。

最後に公演への意気込みを聞かれ、神山は「『LUNGS』という舞台が日本初上陸で、その初演キャストに選んでいただけたことがすごい誇らしく光栄であります。この舞台って社会派なテーマを持った舞台なので、今回の初演以降も僕は絶対に日本で上演され続けるべきだと思ってますし、色んな方にこの作品に触れていただいて、色んなことを考えて、色んなことを思って、生きてほしいです。僕たちなりの『LUNGS』を23日の千秋楽まで試行錯誤していきながら、どんどん精度を上げて、皆さんにお届けしたいなと思ってますので、この『LUNGS』に触れて、いろんなことを感じていただけたらなと思います」と語った。

東京公演は、12月23日(木)まで東京グローブ座にて上演される。