直木賞作家・朝井リョウの連作短編小説『少女は卒業しない』で商業長編映画デビューを果たし、『か「」く「」し「」ご「」と「』でも高く評価された新進気鋭の監督・中川駿渾身のオリジナル企画を映画化。母親を看病した経験を持つ監督が、自身と自身の母を重ね合わせてキャラクターを作り上げ、半自伝的映画を生み出した。
難病の母と2人で暮らす高校生・藤村佑役を演じた山時聡真は、スタジオジブリの『君たちはどう生きるか』で主人公声優の座を射止め、ドラマ「ちはやふるーめぐりー」など話題作への出演で注目を集めている。そして難病の母・美咲を演じるのは、『ディア・ファミリー』、『近畿地方のある場所について』と母親役が続く菅野美穂。さらに、美咲が利用する介護施設のケアマネジャー・下村香織役を西野七瀬、佑が所属するバスケ部のマネージャー・松田杏花役を南琴奈、バスケ部員・大平翔太役、田中偉登が出演。主題歌は大森元貴書き下ろし楽曲「0.2mm」。大森元貴の優しい歌声が添えられ、日本中を涙に染める感動物語の公開に期待がかかる。

主人公の佑について、山時は「佑とは年齢が近くて、僕も中高バスケ部に所属していて、進路に悩んだ瞬間もあったんです。なので、共感できる部分はたくさんあって、最初はそういう意識で挑んだんですけど、全てを理解し切れているかと言われたらそうではなく、監督とディスカッションしたり、菅野さんと西野さんとお芝居をしていく中で掴んでいきました」と役をどのように捉えていったかを振り返る。

そんな佑の母親で難病を抱えるシングルマザーの美咲を演じた菅野は、「美咲の役を私にと思っていただいたことに、すごく光栄に思う気持ちと、覚悟して臨まねばならぬという決心がありました」と話し、「病気のことを勉強して、自分で深めていくのは大切だったんですけど、息子を思う気持ちを一番に考えて臨みたいと思いましたし、監督や山時くん、西野さんと目を合わせているだけで、台本で読んでいた時以上の気持ちがわかるようで、現場でのやり取りの中でこういう役になっていったと思います」と語る。

本作は、中川監督にとって初のオリジナル作品で、実体験を踏まえた書かれた作品だが、「オリジナル作品になると、僕の好みが色濃く出るんです。特に好きな映画のタイプは、繊細で静かで押し付けがましくなく、優しく何かを気づかせてくれるようなそんな作品が大好きなので、この作品もそんなふうになれば良いなと思って脚本を書き進めました。ただ、そういうのってあまり説明的じゃなかったりするんですよね。ちょっと分かりづらかったりするんですけど、お客さんはきっと分かってくれるだろうと、信じる気持ちのもと、作った作品でした」と作品に込めた想いを語り、「僕、めちゃくちゃエゴサーチするんですね。皆さん、本当にびっくりしちゃうと思いますが、上映後1分以内にいいねするんです」と口にすると、会場からは笑いが。「たくさん喜んでいただけて、皆さんのことを信じてよかったなと思えたのがこの作品だったので、今後の僕の名刺がわりの一作になっていくんだろうなと思います」と会場を見渡した。

また、“節目”を感じた瞬間を聞かれた山時は「この作品を撮っている時、そして今が人生の節目なのかなと。この作品は僕が10代最後に撮った映画で、あの時にしか演じられなかったし、覚悟を持って演じていました。20歳になって、取材をさせていただく中で、かけがえの時間をたくさん過ごさせてもらったので、人生の節目は『90メートル』かなと思います」と、この作品がかけがえのないものになったと話す。
菅野は「4回目の年女が終わりまして、もうすぐ50歳なんです。私の節目は50歳だと思うことにして、ここから頑張ろうと思います!」と宣言しながら、「いつが節目だったんだろう?それで言うと、『イグアナの娘』が19歳だったんです。そう思うと、19歳から20歳の境目は大事な時期で。だから、撮影の期間、毎日役に向き合って、何かを掴んでいるんだろうな、毎日違う山時くんなんだろうなと、その時期に共演させていただけたのは私としても貴重な時間でした。伸び代しかないからね、羨ましい!」と笑顔を向けた。

さらに、劇中で人生の岐路に立つ主人公・佑と旅立ちのシーズンにちなみ、作品の旅立ちと山時にとって10代最後に撮影した“節目”となる作品であることを重ねて、卒業証書授与式が行われ、菅野から山時へ卒業証書が手渡された。
卒業証書を手に、山時は「この『90メートル』に出会って、菅野山谷西野さん、監督とも出会って、毎日素敵な時間を過ごさせていただきました。試写が終わった後に、皆でご飯を食べに行ったんです。その時に誕生日プレゼントをもらったりしながら、なんて幸せな日なんだっていう気持ちでいっぱいで、いつになっても忘れられない時間だなと思います」と述べる。

そんな山時のしっかりした姿に、菅野は「撮影の日々、役に向き合って毎日何かを掴んだり、どうしたら頑張れるか悩んでいる姿は見ていて清々しく、応援していました。撮影を終えて、初号も見れて、乾杯もできたし、取材で再会した時にも、お会いする回数が重なるたびに、この作品の良いところをどうやったらうまく伝えられるかがどんどん進化していて、作品を送り出しているんですけど、今もなお作品と真摯に向き合っていて、えらいえらい!」と空中で山時の頭を撫で回し、褒め称える時間が。山時も「第二の母みたいな存在なので、じんわりきました」と微笑む山時は「僕も自分で言葉を考えて、勉強していきましたし、菅野さんや西野さん、そして監督と取材をさせていただく中で、その背中を見て学ばせてもらったこともたくさんあるので、皆さんには感謝しかないです」と語った。
この度立ち会った西野も「こういう人生の節目である瞬間を一緒に過ごさせてもらって、見守らせていただいたので、これからも山時くんのことをずっと見守っています」と微笑んだ。

最後に、菅野から「お母さんが病気なんでしょ?息子が大変な状況になるんでしょ?悲しいお話なんでしょ?って匂いがするかもしれないですけど、実は私の役は死にませんし、希望のある終わり方です。皆さんの背中をそっとそよ風で押してくれるような映画になったと思います」とメッセージが送られ、そして山時は「『90メートル』という作品を通してたくさん取材やメディアに出演させていただいて、これまでにない経験をたくさんさせていただきました。日々学ばせてもらう毎日で、映画って一人じゃ絶対完成できないものですし、たくさんの力があったからこそ、今、皆さんに届けることができているんだなと思います」と、作品に関わったすべての方へ感謝を伝え、「先日の舞台挨拶で、母から“恩送り”と言う言葉をもらって、皆さんからいただいた恩は絶対に誰かに送りたいと、そういう人間でありたいと思っています。これからもたくさんご協力いただくことはあるかと思いますが、応援よろしくお願いします」と立派な挨拶に、隣の菅野が目を潤ませていた。