ゲキ×シネ『狐晴明九尾狩』は中島かずき描き下ろしによる伝奇時代劇。
これまで小説、漫画、映画、ゲームと数多くの作品が生み出されてきた安倍晴明ですが、“劇団☆新感線”では、晴明伝説にひと味もふた味もスパイスを加え、新感線らしいアクション、歌、ダンス、笑いを盛り込み、演出のいのうえひでのりが伝奇ファンタジーとして創り上げた。

全国公開となった6月24日(金)、初日舞台挨拶には、主人公の安倍晴明を演じた中村倫也、狐霊のタオ役の吉岡里帆、陰陽師宗家の跡取り、賀茂利風役の向井理の3名が登壇。さらに、この模様は全国上映館(一部)への衛星生中継が行われた。

いのうえが”中村倫也を主演で、劇団☆新感線で何かをやりたい”というところからスタートし、中島かずきが元々書きたかったという”陰陽師”が組み合わさって生まれたのが『狐晴明九尾狩』となっている。
実際に安倍晴明を演じた感想を問われた中村は、「井上さんとはお仕事を何回かさせてもらってて、かずきさんとは初めてだったんですよ。そんなに裏でご飯に行って深い話をしたとかもなく、そんな中で書いてくれた晴明なんですけど、なんでこんな俺のことが分かるのかなってぐらい、読んでてすぐに腑に落ちるセリフとか行動が多かったです」と、振り返った。
さらに、久しぶりの劇団☆新感線作品への出演については、「新感線って新幹線って劇団員の方々が客演を迎え入れるのに本当に慣れてる人たちなので、稽古入ってすぐに『スタッフさんの名前分からない人とかいたらこそっと聞きにきてね』みたいなことを粟根(まこと)さんが言ってくださったり、劇団の中でも持ち回りみたいなのが何となく出来上がってきていて、全体を見る人たちと裏で支える人、とにかくふざける人と、みたいな頼もしい先輩たちで、場を与えられて「ふざけて」って言ったらもう誰よりも面白いし、育った場所ではないですけど、妙に安心感と信頼感とある、全力で甘えられる人たちって感じでした」と、劇団員の頼もしさを語った。

一方吉岡は、今作が劇団☆新感線初参加となったが、「全てが初めてだったんですけど、劇団員の皆さんもすぐに仲間に入れてくださって、稽古も本当に楽しかったですし、本番を迎えてから劇団新感線をずっと追いかけてこられたファンの皆さんの温かさも劇場で感じて、参加出来て本当に光栄な仕事だったなと思いました」とコメント。

吉岡が演じた狐霊・タオは狐耳とモフモフの尻尾とブーツが印象的だったが「想像してた狐とちょっと違いまして」と話す吉岡は、「尻尾と耳がめっちゃ大きくて、その重さに殺陣の動きがついて行かない時があって。稽古の時は軽い発泡スチロールみたいな尻尾をつけてやっていたんで、そのぐらいの重さの重心で殺陣とかをやってて、本番用のを付けた瞬間に急に難易度があがって」と苦労を明かした。

安倍晴明の幼馴染にあたる賀茂利風を演じた向井は、公演の思い出を聞かれ、「僕も劇団☆新感線は2回目だったんですが、初めましての劇団員の方もいて、もう一回やってみたいと思っていたからすごく楽しかったです」と話し、「本当にチームとして成熟してるんですよね。(高田)聖子さんが言ってましたけど、『私たちもスパイスだから。スパイスだけじゃ何も出来ないから』と、客演をアレンジしてくれる存在だったので、一生懸命やってるだけでその色に染まっていくような劇団だなと思います」と、語った。

司会からそれぞれの印象を問われる一幕も。
まず、中村から見た吉岡の姿は、「新感線のメインに出る女性のキャラクター求められる要素って大変なんですよ。コミカルもそうだし、愛嬌もひたむきさも、お芝居にもめちゃくちゃ体力使うし。今回は特に殺陣の達人みたいな(早乙女)友貴とコンビで立ち回りも多くて、物理的な体力も使うので、相当大変なことを毎回新感線は客演の女優さんに求めているなっていうのは皆知ってることなんですけど」と新感線ならではの特徴を話しながら、「(吉岡が)多分最初はあんまり分かってなくて、もちろん不安はあったと思うんですけど、あんまり人に弱いところを見せない人なので『大丈夫です』って言って、大丈夫じゃない状態になっていくみたいな。でもこれだけ一生懸命やれる人がまず少ないだろうなと思ったし、本当に立派な女優さんだなって」と称賛すると、「ありがたきお言葉です」と恐縮する吉岡。

思い出に残っているシーンについて中村は、「やることが多いんで、ちょいちょい頭が追いついて行かない、身体が追いついて行かないみたいな状態の里帆ちゃんの姿が稽古中も本番中も何回かありましたね。その抜け殻みたいな状態が、僕は観てて楽しくて好きだったんですけど」と思い出しながら笑みを浮かべた。

吉岡自身は「井上さんの演出って人間離れしたことを人間はできると信じている演出というか。『君たち役者なんだからできるよ!頑張れ!』みたいな。だからやるしかないっていうか、『そうですよね。やります。頑張るぞ』っていう感じでした」と、振り返った。

そして、吉岡から見た向井の姿について、二人は映像作品で何度か共演しているが、舞台での共演は今作が初となった。
「初めてお会いした時が向井さんが悪役で、私はいじめられるみたいな役だったんですけど、脚本のかずきさんが『そのドラマのインスピレーションもちょっと受けてるんだよね』と冗談なのか本当なのか分からないんですけど、おっしゃっていて、そういうご縁とかもくみ取ってくださってるんだっていうのもすごく嬉しくて。何年かぶりにお会いした向井さんは変わらないというか……まず頭身がすごい!毎回感動しますもん!新鮮な気持ちで。」と向井のスタイルの良さを褒めちぎる吉岡。「向井さんが役の衣装を着られると本当に美しくて、白と銀が合わさったお着物がもう映えて神々しいというか、悪役だけれど本当に美しくて、憎めない。なんなら私はお二人が最後に戦ってるシーンを……」と続けるも、ネタバレに触れてしまいそうになり言葉を濁す。「見ていて、すごく男性同士のお着物を着てバトルのシーンって素晴らしいなって」と、言葉を選びながら話す吉岡に笑いがこぼれる中村と向井の姿があった。

さらに、向井の印象を「今回は結構強烈な役なんですけど、普段はリラックスがすごいですよね。存在がチルなんです!」と熱弁する吉岡に、「褒めてるのかな?それ」と困惑する向井。
「朝、劇場で殺陣の練習とかをするんですけど、向井さんだけ森みたいなのをまとって入って来られてるんです!『まあまあ、そんな気張らず頑張ろうよ』みたいな感じが、私は目血走ってやらなきゃ!って思ってた一人だったので、すごく救われるじゃないですけど、ありがたいマイナスイオンをいただいていました」と、向井の纏う雰囲気に救われていたとのこと。

そして、向井から中村の座長姿がどう映ったかという問いかけに、「演劇をずっとやってきて、新感線っていう一つのジャンルがあるぐらいはっきりと色付けされている劇団ですし、そこで頭でやるっていうのはプレッシャーももちろんあったと思いますけど、感慨深いものがあるんじゃないかなと。だからあまり肩ひじ張ってというよりは、とにかくいろいろ楽しんでやる姿勢を見てて感じましたし、そっちの方が里帆ちゃんもそうだけど、初めて入ってくる客演の人たちからしてもすごくやりやすかったんじゃないかなと思います」と中村の立ち振る舞いについて語った。

最後に一人ずつ、自分的な見どころとメッセージ。

向井は、「安倍晴明知名度もあるキャラクターですけど、こういう人生だったのかもしれないなと思いながら見てもらえれば、より深くハマれると思いますし、僕が演じた役は最初からちょっと不穏な感じで始まって、だんだん変化していく流れが僕の中ではそこが一番気を遣ったところで、声色だったりテンポだったりっていうのを色々稽古場で調整していって本番を迎えたので、そういう細かい微妙なところを声だけじゃなく表情とか、舞台で見るよりも映像の方がそういう細かいところが見れると思うので、こういう意味があったのかっていうのを改めて感じてもらえると思いますし、やっぱり映像ならではの楽しみ方が出来る作品になっていますので、最後まで楽しんでください」と、ゲキ×シネで見る魅力も合わせて語った。

吉岡は、「この作品は、やはり安倍晴明と利風の深い絆、そこに限ります、見どころは」と断言。
「その絆を最後に感じた時に、”尊い”という言葉がありますけど、普段あんまり使うことが無いんですけど、ここは使いどころだなと思いました。二人を見ていたタオフーリンという役から見てて、すごいな、尊いなと思ったので、そこはじんわりと感じていただきたいなと思います。私が出てるシーンに関しては、笑いのところの間をめちゃめちゃ頑張って稽古しているので、ほんのちょっとでも笑っていただけたらとても幸せです」と笑みを見せた。

そして中村は、「ゲキシネって演劇とシネマを合わせた造語になってると思うんですけど、それぐらい映画館で演劇を
見るっていうことに特化して作ったもので、なので舞台を見られなかった人も、このゲキシネを見れば、同じようにもしかしたらより細かいところまで楽しめるようになっていると思いますので、たくさんの方に楽しんでもらえればなと思っております。見て損はない作品になっているかなと思います」と力強く語った。

ゲキ×シネ『狐晴明九尾狩(きつねせいめいきゅうびがり)』は6月24日(金)より3週間の限定上映となる。

さらに、8月19日(金)からは「Dolby Cinema TM(ドルビーシネマ)」での上映も決定した。