
『ザ・ビューティフル・ゲーム』は、『オペラ座の怪人』や『キャッツ』、『エビータ』など数々の名作ミュージカルの作曲を手掛けたロンドン・ミュージカル界の巨匠、アンドリュー・ロイド ウェバーと、『We will Rock You』を手掛けた人気作家 ベン・エルトンによって誕生した大ヒットミュージカル。
サッカーに青春のすべてを懸け、逆らうことのできない運命に翻弄されながら戦っていく男と、そんな男を愛する女、その仲間たちの鮮烈な人生。ロイド=ウェバーの躍動感溢れるサウンドが“青春時代の光と影”を今鮮やかに浮き彫りにする。
今回演出を務めるのは、演劇ユニット「ミナモザ」主宰にして気鋭の劇作家・演出家の瀬戸山美咲。第27回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞するなど、社会派演劇に定評のある瀬戸山が初のミュージカル演出に挑む。
主人公、ジョン・ケリーを演じるのはジャニーズWESTの小瀧 望。第28回読売演劇大賞において杉村春子賞及び優秀男優賞を受賞し着実に俳優としての実績と経験を積み上げている小瀧が、ストレートプレイで培ってきた確かな演技力とアーティストとしての高い歌唱力を武器に瀬戸山と共に初ミュージカルに挑戦する。
さらに共演には、木下晴香、東 啓介、豊原江理佳、加藤梨里香、新里宏太、皇希、木暮真一郎、益岡 徹と、豪華かつ多彩なキャストが集結した。
フォトコール後に行われた取材会には、小瀧、木下、益岡、演出の瀬戸山が登壇。
初日を迎える意気込みについて小瀧は、「コロナ禍で迎える舞台が3作目なんですけども、毎回言っていますけど、この初日を迎えることを奇跡のように感じていますし、稽古期間を含め大阪終わるまで3ヶ月くらいあるんですけど、これまで皆で感染対策に気をつけて稽古を乗り切って初日を迎えられることが本当に嬉しく思います。やっとここからがスタートなので身が引き締まる思いですし、ここから皆と一緒に、キャストスタッフ一同頑張っていきたいなと思っています」と気合を見せる。
木下も「この状況下で初日を迎えられるっていうことが本当に幸せに感じてますし、3日前ぐらいにやっとマスクを外して初めてお芝居して、改めてお芝居が深まっていく感じがあったので、これから最後まで無事にやれるように皆で力を合わせて頑張っていきたいなと気合が入っているところです」とコメントした。
益岡は「ミュージカルは普通の舞台と違った要素があって、それを自分の身体の中に染み込ませて積み上げていくのが僕にとっては大変な作業だったんですけれども、それがやっと本番を迎えられるということで、これからより大きく膨らませていけたらいいなって実感しています」と、より自身の役の広がりに期待を寄せる。
瀬戸山は「とても素敵なキャストの皆さんが揃っていて、作品としては現実の問題を扱っているシリアスな場面もたくさんあるんですが、何よりもとにかくエネルギッシュな作品になったと思います。見ている方が元気になる部分もたくさんあると思いますので、皆さんに楽しんでいただけるように最後まで頑張りたいと思います」と意気込んだ。
今作がミュージカル初挑戦となる小瀧は、心境を聞かれ「本当に皆におんぶに抱っこで助けられてますし、僕が勝手にイメージしていたのは30手前ぐらいに(ミュージカルを)出来たらいいなと、予想より早くてびっくりしたんですけど、早いに越したことないですし、挑戦出来ることが嬉しく思います。今回は座長という立場ですけど、右見ても左見ても信頼出来る仲間ばっかりなので、本当に人に恵まれているなと思います。若いキャストと益岡さんの重みのあるエネルギーを感じながら僕は今日舞台に立てますし、とにかく皆に追いつこうと思って頑張っています」と、想定より早くミュージカルに挑戦することになったことを明かす。
なぜ30手前ぐらいと考えていたのかとさらに切り込まれると、「もうちょっと心の準備と歌のレベルを積み上げていって挑戦って感じかなと思ったんですけど。どんな感じか全く予想が出来なかったので、本当に飛び込んだ感じです」と話しながら「とにかくやってないことをやってみたいと言う想いが強いのでとにかく何でも挑戦してみたいですし、ミュージカルをやって歌うことでの表現だったり、それで自分がどう感じるのか、相手にどう感じさせるのかっていのにとにかく興味があったんですね。それでいつかは挑戦してみたいなと思っていました」と語る。
演出を務める瀬戸山もミュージカルは初めてということで「小瀧さんの初ミュージカルをちゃんとした作品にせねばという思いが。小瀧さんもそれを意識してくださっていて……」と話すと、小瀧も「お互い初めてで、瀬戸山さんの初ミュージカル演出っていうのに汚点になりたくなかったのでとにかく気をつけようと!頑張っています」と力強く語る。
座長としての小瀧の姿について瀬戸山は「役柄的にもエースでキャプテンみたいな役柄ですけど、とにかく明るく楽しい感じで皆を引っ張っていってくれてるので、歌もどんどん皆を引っ張る方向になっていると私は思います。ジョンがとにかく一生懸命生きているっていうのがすごい大事な作品なので、日々どんどん生き生きしていっている印象があります」と役と同様にキャストを引っ張る頼もしさを語った。
フォトコールでは一部のシーンが公開され、小瀧の歌唱シーンもあった。
歌唱については「歌稽古は9月から始まっていまして、音楽監督の指導の方と海外と中継してボイストレーナーさんと一緒にやらせていただいたり、歌に割く時間は多かったです。2022年は僕にとっても本当に歌うことが多かった一年になり、そして2023年の幕開けは歌からと、さらに自分のスキルアップを目指して頑張りたいと思います」と”歌”に濃密に接した時間を過ごしていた様子。
歌稽古では「とにかく顎をリラックスさせるとか、とにかく力を抜いてやるっていうのをもっと専門的な用語を使って伝えてくれました」とアドバイスをもらったことを明かし、実際変わった実感はあるかという問いかけには「普段皆さんご存知か分からないですけど、ジャニーズWESTってグループにいまして、そこでロックを歌うことが多いので喉を鳴らす歌い方が多いんですけど、気を抜いたら喉を鳴らす歌い方をしてしまうので、その癖を取るのが少し大変でした」とアイドルの時との歌い方の違いを語る。「お客様が見てどう判断していただくかですけど、今回はアイドルじゃなく、『ザ・ビューティフル・ゲーム』のジョンとしてここに立ちますから、その姿を見ていただければなと思います」と力強く話した。
小瀧の歌声について、様々なミュージカルに出演している木下は「歌声だけではなく、稽古場にいていつもハッとするというか『そうだ、小瀧さん初ミュージカルなのか』って思っちゃうぐらい初ミュージカル感がなくて、すごいなと思いながらいつも見てたんですけど」と話すと、「勿体無いお言葉です」と恐縮する小瀧の姿があった。
一方で小瀧から見た木下の歌声については「すっっごいです!!!」と大絶賛。「僕が一番近くで聞いてるんで、歌のパワーというかこんな細い身体からどんな声量が出てくるんやって毎回思います。歌はすごいです。今日(フォトコール)は一部しかお見せ出来ていないんですけど、最初から最後まで見ていただくと思ってる20倍ぐらいすごいです」と興奮気味に話す。
そんな木下とデュエットするシーンもあるが、小瀧は「勘弁してくださいって感じです。初ミュージカルで、ミュージカルの僕ら世代の大スターの方とデュエットさせていただくなんて恐れ多いですし、でもそれがモチベーションになりますね」と向上心を覗かせた。
本作は小瀧や木下と同世代のキャストが多く出演しているということだが、小瀧は「年下のキャストがいるっていうのが初めてでそれがとにかく新鮮だったのと、こんなにもメインキャストアンサンブル含めてですけど、同世代がこんなに集まるって多分この先あるのかも分からないし、でも同世代が多いからこそチームワークを築けたと思いますし、仲間感って言うのが大事な作品になっていると思うので、そこは助かりました」と話し、木下も「これまでの経験であまり同世代の方たちと同じ舞台に立つっていう経験がほぼなくて、稽古場でタメ口で話してる感覚は不思議だなと思いながら、青春してるなって感じながら、こんな素敵で楽しい皆さんと一つの作品を作れることが幸せだなって毎日思っています」と感じていた。
瀬戸山から見た舞台人としての小瀧はどう映っているかという問いかけには「小瀧さんの初舞台(2015年『MORSE-モールス-』)の時に上演台本をやらせていただいて、その時もとてもいい俳優さんだなって思いました。繊細で感受性豊かな俳優さんだなと思っていて、その後他の作品も観せていただた時にまたビシッと決めた芝居も出来る方で。今回は私もミュージカルが初めてなので、お客さんとの関係性の結び方みたいなところが、初日を明けてみないと本当のところは分からないですけど、役と役との関係性だけじゃなくてお客さんの存在がミュージカルはより大きいと思うので、そこは稽古場でも想像出来る範囲内で、ここは客席に意識を飛ばそうみたいなことを話したりとかして。それで今日初めて(劇場の)上の方で見たんですけど、ちゃんと届いているので、この調子で行けたら素晴らしいと思いますし、本当に貴重な俳優さんだと思ってますので、どんどんこれからまたやってほしいです」と期待を寄せた。
本作の見どころについて質問があり、小瀧は「とにかく登場人物全員の生命力とエネルギーです。あとは僕たちが描いているこの時代の人たちって明日命があるか分からないくらい死と隣り合わせで生きている人たちの作品なので、僕たちが一日一日をとにかく全力で120%出して生きているこの生命力を感じてもらいたいですし、僕ら世代の方にはあまり馴染みがないかもしれないと思うんですけど、今まさに海を挟んだ国では今もこういうことが行われていますし、紛争、分断みたいなのがいかに無意味だということが伝えられる作品じゃないかなと思います」とコメント。
木下は「今回はロイド=ウェバーさんの音楽で、すごくリプライズが多い作品だなというふうに感じていて、前半で歌った曲とメロディーとかは一緒だけど歌っている状況や立場が変わっていたり、そういうのがすごく多くて、それはこの作品の一つの特徴だなというふうに思っていて。だからお客さまにも、「前聞いた時はああいう状態だったのに」と、時代や登場人物たちの関係の変化とか、音楽と共に感じられる物語を楽しんでいただけたらなと思います。あとは決して過去の物語じゃないところをしっかり感じて帰っていただけたらいいなと思って、全力で頑張りたいです」と、音楽の観点からの見どころを明かした。
さらに劇中ではサッカーのシーンも登場するが、サッカー少年でもあったという小瀧は「サッカーのシーンがあるということでサッカーやっててよかったなって思いましたし、一幕の見せ場ではボールをエアーで見立ててサッカーをするシーンが結構長い時間あるんですけど、そこは全員で動いて入り乱れてそのシーンを作っていくので、サッカーも見せ場の一つかなと思います」と話す。
ちょうど稽古期間中がW杯のシーズンだったということで「男子が17、8人ぐらいいるんですけど、半分ぐらいはほぼ寝不足で来てました(笑)。それぐらいサッカーのミュージカルをやっている時に、日本代表の方々があれだけ希望や勇気、夢を与えてくれて、僕たち自身も盛り上がりました」と、活躍する日本代表からパワーをもらっていたとのこと。
さらに、今回サッカー監修に元サッカー選手の大久保嘉人さんが参加している。
「稽古が始まる顔合わせ前に男子だけ集まって大久保さんにサッカーを見てもらう機会がありまして。どれだけ男性キャストがサッカーが出来るのかっていうチェックと交流を兼ねて行いまして、それはもう本当に感動しました。大久保さんに自分がサッカーをしている姿を見てもらえるなんて!サッカーをやっていたあの頃の自分に「お前、いつか見てもらえるぞ」って言ってあげたいくらい、すごい感動しながら見てもらってました。ゲネの後にも素敵な言葉をいただいてすごく自信にもなりました」と貴重な機会だったと話した。
大久保からどんな言葉を貰ったのかという問いかけに「面白かった、感動したとおっしゃっていましたし、本当に温かい言葉をかけてくださって、今日から頑張ろうって。あとはサッカーのシーンがとにかく大事なので、そのシーンは大久保さんの顔を思い浮かべながら頑張る想いです」と語った。
また、ジャニーズWESTのメンバーは舞台を見に来るのかという質問については「見に来てくれるんじゃないですかね?メンバーは忙しくしているみたいで、僕自身神山(智洋)の舞台(『幽霊はここにいる』)も行けてないんですけど」と話しながら、「でもどこかしこでも劇中の歌を歌っているんですよ。メンバーの楽屋とかで。そしたらメンバーがついに歌を覚えちゃって、僕と一緒に歌って。一幕で“とにかく酒を飲むぞ”っていう歌があるんですよ。メンバーにお酒好きな人が多いもんで、特に中間(淳太)・桐山(照史)が一緒に歌って、「これ多分見にいく時一緒に歌ってまうわ!」って言ってました」とエピソードを明かした。
取材会の最後に代表して小瀧からメッセージが。
「2023年の年明けからこんなに素敵なキャスト、素敵な曲、素敵な演出家さんと幕開けが出来るということが本当に嬉しく思いますし、ありがたいです。僕自身初ミュージカルということですけども、そこにも注目していただきたいですけど、何より豪華なキャストが揃っていますし、若いエネルギーと登場人物たちの生命力を感じてもらえる作品になっているかなと思います。何処か他人事とは思えないような話ばっかりなので、楽しみ方は人それぞれですけど、何か感じてもらえることがあれば嬉しいと思います。最後まで走り切れるようにキャスト、スタッフ一同頑張ります。皆さん応援よろしくお願いします」と取材会を締め括った。
ミュージカル『ザ・ビューティフル・ゲーム』は、1月7日(土)から26日(木)まで東京・日生劇場、2月4日(土)から13日(月)まで 大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演される。