
フランスの劇作家アレクシス・ミシャリクの出世作となった本作は、17世紀に実在した大きな鼻の剣豪詩人『シラノ・ド・ベルジュラック』の物語の誕生秘話を幕内コメディ仕立てに描き、正統派のフランス喜劇の流れをくみながらもテンポの良い台詞運びや、実在の人物が登場するなど、約120年前の演劇人やクリエイターたちに向けた劇場愛にあふれた賛辞として大人気を博し、今回が日本初上演となる。
演出は、令和3年度第72回芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞、令和4年秋に紫綬褒章を受章するなど劇作家・演出家としての功績を高く認められるマキノノゾミ。
“書けない”劇作家エドモン・ロスタン役で主演を務めるのは、NEWSとしての活動に留まらず、作家としても数々の人気作を生み出すなど、多岐に渡って活躍する加藤シゲアキ。
共演には、大谷亮介、平祐奈、細田善彦、そして、安蘭けい、金田明夫ら、個性豊かな実力派キャスト達が揃い、総勢12人で約50もの役を演じ分け、今なお世界中で愛される名作誕生にまつわる紆余曲折と、苦悩、そして、なによりも熱い劇場愛を、爆笑の渦に巻き込みながら届ける。
公演初日に先駆けプレスコールが行われ、その後の取材会には、加藤シゲアキ、平祐奈、金田明夫、演出のマキノノゾミが出席。
プレスコールを終え、加藤は「本当にドタバタコメディなんですけど現場も実際にドタバタしてます。ひとまず誰一人もかけることなく初日を迎えられたことにホッとしてます」と安心した様子を見せる。
テレビで舞台稽古の模様が放送され、汗だくの姿が映っていたが、「サウナに入ってるかのような。文字通り汗をかかないと”抱腹絶倒のコメディ”ってチラシに書かれちゃったので、合言葉のように”抱腹絶倒”に叫びながらやってました」と語る。
かなりテンポが速い作品となっていて「(プレスコールは)30分くらいでしたけど、2時間これを続けるので、気をつけないと危ないです(笑)」と話す加藤に、続けて平も「”エドモントレーニング”って言ってるくらい、加藤さんの稽古の時に着てたジャケットの後ろの色が変わっちゃうぐらい汗がすごくて」と稽古の裏側を明かし、「(ジャケットが)絞れるんじゃないかと。エドモンダイエットです」と加藤はかなりのハードな舞台となっているようだった。
金田も「何十年も舞台やらせてもらってますけど、これだけワンチャカするのは初めての経験で、多分最初で最後ぐらいの場面転換の量でしょうね。台本いただいた時に映画の台本だと勘違いするぐらいだったんですけど」と驚きがあったと話す。
「実際にフランスで上演されている演目で、その上演時間に限りなく近づけたいというマキノさんの強い希望があって」とマキノの演出プランを明かす加藤に、マキノが「日本語でもフランスに近い感覚を持ってやりましょうっていうテーマにはしてます」と話し、「だから日本語でやったらものすごく時間が伸びちゃって、よくあるんですよ翻訳劇では。それは負けた気がするから、負けたくないのでなんとか気分だけでもフランス人になりきってやれないものかと」と説明した。
セリフについて「独特の言い回し」と話す加藤は、「なんでこんな言い回しするんだよって作家としては思います。まどろっこしいな!って添削したい気持ちになりますけど(笑)、これは原本があるのでそれに倣ってます」とコメント。
プレスコールで公開されたエドモン(加藤)とオノレ氏(金田)のカフェシーンではテンポのいい会話劇が繰り広げられていた。
このシーンについて金田は「これもマキノさんの演出を受けて、”役者が心地いいところって、見てる方ではまったりする””だから常に先行するんだ”っていうことをずっと言っていただいて、そワタワタしているうちにだんだんこっちも気持ちよく言えるようになってきました。これは非常に良い経験だったなと思います」と振り返った。
キャストが12人で50役以上を演じているという本作は、マキノ曰く「早着替えは(全員で)多分200回以上」だという。
5役を担当している金田は「てんやわんやですね。だから今怖いのは、緊張してるからいいですけど、ホッとしたときに何が起きるか……」と不安げ。加藤から「一回稽古場で『金田さん出番ですよ!』ってことありましたもんね」と暴露される一幕も。
そして6役担当する平は、「稽古初日からバタバタで、でも皆さんずっと一緒にいたので、仲良くなるのがものすごく早くて。皆さん大先輩なんですけどすごく良くしていただいて、親戚みたいな感じで、私はすごく楽しいです」と笑顔。衣装係のジャンヌの役柄については「ジャンヌは言葉にどんどん酔っていってしまうので、日本人にはなかなか無い感情でちょっと難しいですけど、自分に酔いつつ楽しめていけたらと思います」と語った。
作家としている活動している加藤は、エドモンと同様に締め切りに追われているようで「(締め切りを)こぼしてるんです!先月に終わらせたかったけど、全然出来なかったです」と焦りを見せる。「今日が舞台初日だが……」と心配する記者に対して、「知らない!もう言わないで!今ここで追い込まないで!日々今を生きるのに精一杯なので!」と必死さを見せる加藤は、「休みなくエドモンやってます」と苦笑い。
エドモンのように書けないスランプも経験しているか聞かれると「僕は2年書けなかったことはないですけど、でもちょっとした気持ちは分かります」と共感した。
また、文豪のような髪型と付け髭を記者から絶賛された加藤だったが、実際に髭を生やすことを提案されると「僕ジャニーズなんですよ!増田(貴久)・小山(慶一郎)の明るい髪の中にこれがいると相当浮くと思います。これで『チャンカパーナ』歌えないです!」と断る姿があった。
そんな付け髭の感触は「良くはないです。喋りづらいですね」と苦笑いしながら、「でもエドモンは実際にいる方なので、なるべく寄せてます。汗をすごいかいて剥がれちゃうので、試行錯誤してます」と苦労している様子。「本当は通し稽古を昨日やるはずが出来なかったんです。だから(取材会後に行われる)ゲネがもういきなり本番なのでどうなるか分からないです。もうほら!追い込まれてるでしょ?もう間に合ってないんです!」と焦る加藤。
しかし「追い込まれるのが好きなのでは?」と記者から指摘されると、加藤は「そうなんですよ多分。追い込まれたいんです!そこをクリアした時の快感があるんです!」と素直に答えた。
公演初日である4月1日はエドモン本人の誕生日。生誕155周年の当日に初日を迎えることについては「どっかで見てるかなって思いながら、エドモンに怒られないように頑張りたいです」と気合を見せる加藤。「数奇な運命がバチッとハマった舞台だと思いたいので初日の成功を願って。大丈夫なのか?ってまだ思ってますけど、大丈夫でしょう!最後まで頑張っていきたいと思います」と力強く語り、取材会を締め括った。
パルコ・プロデュース2023「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」は、2023年4月1日(土)から4月16日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場、4月22日(土)から24日(月)まで大阪・東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて上演される。
<物語>
1897年12月、パリ。
2年も書けずに大スランプに陥っている詩人で劇作家のエドモン・ロスタン(加藤シゲアキ)。ある日突然、大女優サラ・ベルナール(津田真澄)からの大きな仕事が舞い込み、偉大な喜劇王コクラン(大谷亮介)に英雄的なコメディ詩劇の新作を書くことを約束してしまう。なんと初日は3週間後!
ムッシュ・オノレ(金田明夫)のカフェで、構想を練るが、まったく書けない……。衣裳係のジャンヌ(平祐奈)に恋する友人の俳優レオ(細田善彦)の恋愛相談に乗り、訳あり主演女優(安蘭けい)とプロデューサー兄弟(三上市朗・土屋佑壱)の気まぐれに振り回され、妻ローズ(佐藤みゆき)に怒られ、ありとあらゆるトラブルに見舞われながら、舞台監督のリュシアン(福田転球)やコクランの息子ジャン(章平)たちと稽古をはじめるが……。
エドモン・ロスタンの人生をかけた一世一代の創作、そのタイトルは……
そう……『シラノ・ド・ベルジュラック』!!!