
1957年に初演され、トニー賞を独占しロングランを記録したブロードウェイの名作ミュージカル『ザ・ミュージック・マン』が、歴史ある日生劇場60周年イヤーの幕開きを飾る。
演出には、オン・ブロードウェイでの『GODSPELL』をはじめ、オンオフ問わず数々の作品を手掛け、ブロードウェイのみならず世界各国の演劇シーンで活躍してきたダニエル・ゴールドスタインを迎え、装いを新たに上演される。
主演は、約30年にわたって数多くの名作ミュージカルに出演を重ねる坂本昌行。共演は、元宝塚歌劇団花組トップ娘役で、退団後も活躍の場を広げている花乃まりあ、昨年末にムード歌謡コーラスグループ「純烈」を卒業し、ミュージカル初挑戦で、今後の活躍にも注目が集まる小田井涼平、グランドミュージカルに数多く出演しアーティスト活動も精力的に行う藤岡正明、『スリル・ミー』や『チェーザレ 破壊の創造者』など話題作の出演が続く山崎大輝、昨年上演のミュージカル『シンデレラストーリー』で初舞台にして初主演に抜擢された期待の新人水嶋 凜、独特の存在感を放ちどんな役も自在に演じ分ける六角精児、圧倒的な歌唱力と持ち前の明るいキャラクターで幅広い世代から高い支持を集める森 公美子、長年ミュージカル界を牽引し続け、実力と信頼を兼ね備えたベテラン女優の剣 幸らが務める。
公演初日に先駆け公開ゲネプロが行われ、その後の囲み取材には、坂本昌行、花乃まりあ、小田井涼平、六角精児、森 公美子、剣 幸が出席。
楽器セールスマンにして実は詐欺師の主人公ハロルド・ヒル教授を演じる坂本は「この作品はほぼ同時に出来た『ウェストサイド物語』を押さえてトニー賞を取られたということで、初めてこの作品に触れた時に『なるほどな』と感じましたし、見に来てくださったお客様にも『なるほど、こういう素晴らしい作品なんだな』っていうのを感じ取っていただきたいなと思います」と作品への想いを語る。
ハロルドが想いを寄せる図書館の司書マリアン・パルー役の花乃は「最初は堅物な女性として登場するんですけど、ハロルドとの出会いによって変化していく様子がこの作品の一つの見どころになれば嬉しいです。音楽と子どもたちの笑い声とが本当に楽しくて、この春にぴったりな素晴らしいミュージカルだと思います。私自身も楽しんで演じたいと思っております」と意気込んだ。
ハロルドの古い仲間マーセラスを演じる小田井は「久しぶりに演者の皆さんがたくさんいるステージだと思います。この作品をきっかけに、皆さんが色んな作品を観劇していただける足がかりになればいいなと」と期待を寄せる。
町を収めるシン町長役の六角は「こういうオールドタイムなお芝居って自分はやったことはなくて、特にミュージカルの日も浅いんですけども、素晴らしいなと思う曲が多くて、曲を聞きながら非常に楽しんでやらせてもらってます。そして田舎町にいる融通の利かない町長を楽しみながら演じております。厳めしい顔をして、やってることはとても楽しいなと思える毎日を送らせていただいておりますので、お客さんにもそれが伝わるようにやっていこうと思っております」と役柄に反して楽しんでいる様子が伺える。
町長の妻ユーレイニー役の森は「この作品に関しましては、1985年・1986年に野口五郎さんと戸田恵子さんと一緒にやらせていただいて、その時はお母さん役だったんですけど、(町長の妻を)その時に見ていて面白かったので、その役を演じられて本当に幸せでございます。ピーチクパーチク早口のように喋っている、ゴシップ好きな街のおばさんです」と、過去の出演を振り返りながら役柄を簡潔に説明。
マリアンの母ミセス・パルー役の剣は「何よりも子どもたちの幸せを考えている肝っ玉母さんに見えたらいいなと思っております。私は宝塚出身なんですけれども、こういう古き良き時代の往年のミュージカルは何回もやってきて、今回も音を聞いてるだけでワクワクする懐かしい感覚と、それからお客さんを巻き込む感覚のミュージカルがやっぱり好きだなと思いました」と笑顔を見せた。
稽古場の雰囲気について坂本は、「皆さんが音楽に乗せられて純粋に楽しんでますし、子役の子たちが稽古をめちゃくちゃ楽しそうにやってるんです。そんな楽しいかな?と思うぐらい楽しそうにやってるんで、それに引っ張られて僕らも楽しく稽古させてもらいました」と子役からパワーをもらっているとのこと。
そんな坂本の座長姿に「素晴らしいですよね」と絶賛する森。
六角も、「そんなに何かコミュニケーションを取る人ではないんですよ。ただ黙々とお芝居の稽古をなさってて、その稽古に我々が付いていくような、無言の統率力とでも言いましょうか、そういうのを感じました」と語り、続けて、坂本とのダンスシーンもある花乃も「背中で皆を引っ張って行ってくださる方で、本当に拝見してても技術的なことはもちろんなんですけど、例えばダンスでもちょっと回った後の余韻とか、ジャケットを羽織る仕草とか、ご本人にもお伝えしたんですけど本当にお衣装の着こなしとかそういったところが大人の男性の魅力が詰まっていて素敵だなと思っております」と褒め称え、「ありがとうございます!」と嬉しそうな様子の坂本。
初めてのミュージカル作品となった小田井も「初めてなので、とにかく目に飛び込んでくるもの、耳で聞こえるものを楽しもうという感じでやっているので、(花乃さんの)話の続きじゃないですけど、坂本さんが座長ですごく恵まれてるなと思ってます。この間までWBCがやっていたじゃないですか。大谷選手とかダルビッシュ選手を見てる感じで(坂本のことを)見てますから。黙ってついて行こうみたいな、そういう統率力なのでそれに助けられているところがものすごくあります」と坂本の頼もしさを語った。
キャスト陣からたくさんの称賛の言葉をもらった坂本は「僕はどの作品もそうなんですけど、座長って意識が無くてあまり。ただセリフの量が多いとか出番が多いとかってだけで、ステージの上に立つ人は皆が主役だと思ってますんで、たまたま僕がやることが多くて、その自主稽古をやってるのを皆さんが見ては『ストイックだな』とか思ってくださるんですけど、僕はただの心配性で……」と謙遜し、「正直僕的には座長という仕事は一切やってないんですけども、それをしっかり支えてくださる皆さんがいらっしゃるから、何となくそうなってるだけで、皆さんに感謝しています」と述べた。
しかし「嘘です。ちゃんとやってます。差し入れがいっぱい入ったりとか……」と坂本のさらなる座長としての一面を暴露する森は「食べ物が多いんですけれども、このご時世ですので個包装のものを」と続ける。
坂本以外のキャストも差し入れをしていたようだったが、坂本が「子どもたちがすごい喜んじゃってバクバク食べてたんですけど、ちょっと制限がかかって」と明かし、小田井も「保護者の方から家に帰ってご飯を食べなくなるんでって(笑)。そういうアットホームな稽古場です」と笑顔で語った。
坂本と小田井は同い年だが、これまで接点は無かったようで、小田井は「僕は稽古の最初の日に『歳同じなんですよ』って話をしたら『そうなんだよね』と気さくにおっしゃっていただいて」と振り返る。「ただ、僕は芸能界に入ったのが遅い人間で、坂本さんをテレビで見てたので、同い年って分かってて頑張ってため口きくんですけど、途中から敬語に変わるんですよ。『本当に敬語は無しにしよう』って言ってくれて、頑張って『坂本くん』って言うんですけど、その後の言葉が『どうでした?』とか結局敬語に戻っていくっていう。ちょっとずつため口きいていっても怒られない程度に頑張って行こうと思ってるんですけど」と様子を伺っているとのこと。「稽古場では役柄も交流のある関係ということもあったので、お会いした時にセリフとか役どころについて思ってることを色々相談させていただいて作り上げていったという感覚があるんで、そういう意味では本当に同級生ですね。ねぇ、坂本くん!」と気さくに呼びかける場面があった。
対して坂本も「小田井くんも緊張している感じはあるんですけどこの雰囲気だから話しやすいっていうのもあって、自然と僕の中でも距離が急に縮まってるので壁が無くて、芝居の話から全然違う話に発展したりしてたので、稽古は非常に楽しい時間でしたね」と振り返った。
最後に坂本から「この古き良き作品、『ザ・ミュージック・マン』は詐欺師というストーリー展開になっていますけど、非常に心温まる、そしてちょっとホッと胸が熱くなって目頭が熱くなる素晴らしい作品ですので、ぜひ皆さん劇場にいらしてください」とメッセージが送られ、会見を締めくくった。
『ザ・ミュージック・マン』は、4月11日(火)から5月1日(月)まで、東京・日生劇場にて、その後愛知・御園座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール、福岡・博多座にて上演される。