本作は、20世紀を代表するロックバンド・ビートルズの創成期、ハンブルクで巡業していた時代を描いた1994年公開の伝記映画「BACKBEAT」を、イアン・ソフトリー監督自ら舞台化した作品で、日本では2019年に初上演された。

結成当初のベーシストであり、ビートルズのメジャーデビューを待たずして袂を分かつことになるスチュアート・サトクリフと、学生時代からの親友であり、彼を敬愛していたジョン・レノンにスポットを当て、ジョージ・ハリスン、ポール・マッカートニー、ピート・ベストのメンバーが“ビートルズ”を結成し若者らしい爆発的なエネルギーでハンブルクへ巡業していた時代から伝説のバンドにいたるまでを、ほとばしる生演奏のサウンドに乗せて描いた日本初演版は好評のうちに閉幕。そしてこの度、満を持しての再演となる。

この、アートとロック、恋と友情の青春群像の翻訳・演出を務めるのは、日本初演に続き石丸さち子。
そして、音楽監督も日本初演時と同じく森 大輔が手掛け、相性抜群の2人がクリエイティブスタッフとして本作を支える。

スチュアート・サトクリフを演じるのはA.B.C-Zのメンバーでバラエティや映画、舞台など幅広いステージでマルチに活躍する戸塚祥太。ジョン・レノン役は、舞台・ドラマ・映画とジャンルを問わず俳優として存在感を示しながら歌手としても活躍、情感あふれるライブに評価の高い加藤和樹。
そしてジョージ・ハリスン役にふぉ~ゆ~の辰巳雄大、ポール・マッカートニー役にFUZZY CONTROLのJUON、ドラムのピート・ベスト役に上口耕平と初演時に見事なサウンドを日本中に響き渡らせた“令和のビートルズ”のメンバーが再集結。
また、スチュアートの恋人となるアストリッド・キルヒヘル役は新たに参加となる愛加あゆが務める。
さらに1966年のビートルズ初来日公演の際に前座を務め、彼らの生の演奏を体感している歌手で俳優の尾藤イサオも再び参加となる。

公開ゲネプロ前に行われた取材会には、戸塚祥太、加藤和樹、辰巳雄大、JUON、上口耕平、愛加あゆ、尾藤イサオが出席。

4年ぶりの再演となり、チームワークを問われた戸塚は「完璧です!再会した初日から、自分の中で『これを求めていたんだ』『もう一回人生の中でこれをやりたかったんだ』っていう想いが湧き出てきて、心さえ渇いてなければいつだって青春だなって思いました」と熱く語る。

加藤も、「本当に自分の中で止まっていた時間がまた動き出した感じで、稽古場で演出の石丸さんが『もうちょっと若く、若く』って。段々身も心も若返ってきた実感がありますし、またこの時代のビートルズを演じるにふさわしい体と心になったんじゃないかなと」と、心身の変化を振り返る。

辰巳は、「4年前のBACKBEATとはまた全然違ったこのドライブ感のある戻れない青春と言いますか、止まらない青春。自分の青春を振り返ってみたらあっという間に過ぎ去った中にすごい出来事がたくさん詰まっていた気もするんですけど、世界的なバンドになったビートルズの青春時代もあっという間に素晴らしい音楽と共に疾走していき、新しいBACKBEATになったと実感しています」とコメント。

バンドの音楽性の進化について聞かれたJUONは「相当いいんじゃないですかね。僕達のオリジナルのグルーヴ、僕達じゃないと出せないグルーヴだったり音だったり歌っていうのがありますので、本当にレベルアップの連続で今日を迎えられることをすごく嬉しく思います」と手応えを感じている様子。

再演に向けた稽古中で印象に残っている出来事に上口は、「久々に再会して、もちろんずっと仲が良かったので絆みたいなものは同じだったんですけど、最初に後ろのドラムから見てて、ちょっと大人になったなって感じだったんですよ。ちょっと落ち着いたかな、みたいな。でもあっという間に心が10代になっていく様が見えているのが、その段階がとても印象的で、さっきとっつーが言ったように、青春って心次第なんだって思いました。
何年経っても10代の心になるんだなと思いました」と語る。

そして尾藤も4年ぶりの出演となる。「原作にはない役をプロデューサーの方が作ってくださったんですけど、皆さんが話しているのを聞いてて、全くそうだと思うのは、皆さんは約半年ぐらい楽器の稽古から何からやって毎日ぶつかり合う稽古を見ていて、僕も絶対頑張らなきゃいけないと思っております」と5人の姿から刺激があったよう。
尾藤から見た、4年前と比べた5人の音楽の印象については「4年前もびっくりしました。もちろんJUONくんは音楽を仕事としていますが、どうしてこんな役者さんが音楽がすごいんだろうと思っていたら、また4年後。本当にどこでライブをやってもおかしくない、かっこいい演奏をやっていますので、よろしくお願いいたします」と太鼓判を押した。

今回初参加となる愛加は「皆さんがビートルズとして仕上がってるところから入ったので、もうそこに食らいついていくのに必死だったんですけれど、普段から皆さんに良くしていただいて、すっかりこのビートルズの虜になっています」と笑顔を見せる。さらに「個人的にはアストリッドとして近づきたいと思って、今回ウィッグの予定だったんですけど、地毛で行こうと思って人生で初めて金髪ショートに決めてきました!」と気合いを伺わせた。

誰の優しさが一番印象的だったかと記者に問われ、「この後に関わってくるな!」とざわつく男性陣。
愛加も「本当にぞれぞれ皆さん、私が悩んでる時に温かい言葉をかけてくださって」と話しながら「でも特に絡みの多いスチュ(戸塚)は、出番の前とかに気合いをいれる一言とか癒してくださる一言を言ってくださるのですごくホッとして和む時間になります」と戸塚の心遣いを明かし、「私が全然アストリッドに近づけないってなった時に「大丈夫だよ」とか。いつも仏様のような笑みですごく支えてくださっています」と語る。
「褒められてますね」と記者に声をかけられた戸塚は「絶対使ってください!」と取材陣に力強くアピール。

この4年で一番変わった人は?という質問には全員一致で辰巳の名前が上がる。
理由として戸塚は「4年前は彼はギター弾けなかったんですよ!4年後にはギターソロ弾いてます!」と答える。
「『ギター弾けるふぉ〜ゆ〜のメンバーいるか』って言われて、『はい!』って、手を上げたのが僕で。F(のコード)がギリギリだったんですよ」と4年前のキャスティング時を振り返る辰巳だが、「今回完全なるリードギターに変貌しまして、ガッツリジョージ・ハリスンになれる日が来ました!20曲以上の生演奏の中で印象的なリフを弾かせていただくんですけど、その中でバンドの音楽が本当に変わったというのを感じていて、ザ・ビートルズ・クラブ(※ザ・ビートルズ公認のファンクラブ)の方々に見ていただいた時に、『日本でロックをやる方はたくさんいるけど、ロックンロールを聞けるのは数少ない。ただ、ここではロックンロールが聞ける』って言ってもらったのが、僕らバンドとして自信になって、すごく嬉しかったことでした」というエピソードを明かした。

この5人でのデビューへの自信にも繋がったという辰巳は「配信だって何でもありますし、ロックンロールをやるバンドとして。音楽番組とかも待ってます!」とアピール。
実際にギター演奏が進化するため、どのような努力をしていたのかという質問に辰巳は「これは自信を持って言えるんですけど、稽古期間もそうですし去年の9月あたりからギターはずっと触っていて。ジョージ・ハリスンというその人がギターを触ることを愛していて、だからこそ誰よりも現場で触っていようというのが目標だったんですけど、とにかくギターに触っているという時間をすごく大切にしています」とギターと真摯に向き合っていたことを振り返った。

また、インタビュー記事で加藤が”このメンバーで舞台に立つのはこれが最後かもしれない”という話をしていたことに触れ、その真意について問われると「現実問題と言いますか、やはりこの作品をやることって本当に大変なことなんですよ。それぞれ覚悟を持って再演に臨んだと思いますし、再演から参加の愛加さんもいて、本当に誰が欠けても同じピースにならないというか。その中で気持ち的にも我々ほとんど同世代なんですけど、年齢的な事だったりとか、本当に奇跡のメンバーが集まっているんですね。だからその一瞬一瞬、1公演1公演を命をかけて取り組みたいと思いますし、次があるって思うとどこかで甘えが出ちゃったりすると思うんですね。だからこれが最後という気持ちで臨む心持ちは無くしたくないなと」再演にかける想いを語る。「さっきジョージ(辰巳)も言いましたけど、(青春は)取り戻せない。でも我々は今取り戻してそれをさらに皆さんにお届けするということをやっているので、その駆け抜ける青春みたいなものが彼らの命の灯火じゃないですけど、そういうものを胸に刻んでいただければなと思います」とコメントした。

10代のビートルズを演じるということで、何か苦労があったのかと聞かれると、加藤は「それぞれ身体作りとかもありますし、歌うメンバーは声のケアとかもあるので本当に毎日気が抜けないですけど、皆楽しんでやっているので、稽古中も誰も辛いとは言わないんですよ。さっきも『早くやりたい』と言っていたので、とにかく1分1秒でも早くお客さんにお届けしたいです」と公園へ期待を膨らませていた。

しかし辰巳からは「ただ、楽屋はジムみたいです。色んな器具もあったりするんですよ!個人個人のプロテインとかがあったり」という暴露が。「ちょっと皆のナイスバディを見せるシーンがあったりするのかなっていうのもあるので…皆すごい鍛えてます!4年前と変わりました。綺麗に仕上がってて!」と、キャスト陣の肉体美を堪能できるかもしれない(?)シーンを匂わせた。

4年前の『BACKBEAT』とはまた違った、注目してほしいところを戸塚は「もちろん4年前も最善を尽くしましたし、最高のBACKBEATを届けましたけれども、そこからさらに時を経て、熟成された、しかし瑞々しいっていう、大人なのに若いというちょっと矛盾してるようなものが出せているので4年経たサウンドと、それに負けじとスピード感を持って進んでいくお芝居の二つを見届けてほしいです」と語る。「僕は稽古のことを稽古と言わずにBACKBEATセッションと個人的に呼んでいたので、その毎日のセッションを積み重ねた結果を全国に届けにいくので、皆さんもぜひ楽しみにしてください」と取材会を締め括った。

最後のステージから去り際には辰巳が「紅白目指そうね!」と声をかける一幕もあった。

舞台『BACKBEAT』は、4月23日(日)の江戸川区総合文化センター 大ホールでのプレビュー公演を皮切りに、4月28日(金)から5月3日(水・祝)まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、5月6日(土)・7日(日)に熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) 大ホール、5月20日(土)・21日(日)に大阪・枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール、5月24日(水)から5月31日(水)まで東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて上演される。